未だ夜も明けきっていない、薄暗い時間帯。
周りが辛うじて見えるか、というような世界で、一部だけ、光が溢れているかのような場所があった。



「エル・アムダルト・リ・エルス……」



そこにいるのは、まだ若い青年だった。


















二次創作 はぴねす!
Magic Word of Happiness!
















一見してみるのならば、普通よりは格好いいとも感じられるだろう。
見苦しくなく整えられた黒髪、同じ年代の男の平均より少しばかり高いであろう身長。
だが、それより特筆するべきは、強く、まるで鋼のような意思の篭もった、その黒い瞳だろうか。



「……ディ・ルテ・カルティエ・エル・アダファルス」



万人が見れば、万人とも振り向くのではないかという、強い意志を秘めたその瞳が、鋭く細められ、青年の目の前に浮く杖と共に、目の前に繰り出されている空中に浮かぶ格子(シャフト)と、その中で輝く光の玉へと注がれていた。
その光の玉は強く輝いているが、なぜか、見る者の心を穏やかにさせるような、そんな雰囲気があった。
そして、その光はゆっくりと周りと混じり合うかのように消え、浮かんでいた格子は金属独特の音を立てて、地面に落ちた。



「…………ふぅ」
「お疲れ様です、マスター」



青年だけの空間に、一つ凛とした声が響いた。
いや、響いたというのは正しくないだろう、何故なら、そこには青年以外は存在していないはずなのだから。



「あぁ……でも、まだまだだな」



青年は、納得がいかなかったのか、眉間に少々のしわを寄せながら、手元にある、杖に声をかけていた。
そして、青年の独白のような台詞に、しっかりとした口調で、杖が答えた。



「そうですね、専門の方々から見れば、まだまだ制御事態は甘いと言っていいでしょう。ですが、最初を思えばマスターの制御能力の向上は飛躍的に上がっていると思います」
「でも、これじゃぁまだ足りないな、なんたって俺の目標は……」


『みんなを幸せにする魔法使いになる』


「……ですよね、マスター」
「お前にも、とうとう覚えられちまったな」



そう言って、青年は苦笑を浮かべながら、落ちた格子を拾い集めていた。
杖は、その彼が喋ったことがおかしかったのか、薄く発光して、笑っているかのようだった。



「何回も聞かされれば、覚えもしますよ、マスター」
「それもそうだな」



青年は、空気を胸一杯に吸い込むと、ゆっくりと吐き出して体をゆっくりと伸ばした。
そして、空が少しずつ明るくなって来ていることに気づいた。



「……しまった、もう夜が明ける時間か……よし、帰るか。ティア」
了解しました、ご主人様(イエス、マイロード)
「ディ・アムフェイ」



青年は、杖に乗ると、呪文を唱え、空にゆっくりと浮かび上がった。
ゆっくりと遠ざかっていく青年だが、その姿を、木の陰から覗いていた女性がいた。
彼が気づけなかったその存在が、物語の始まりとなるのは、今はまだ、誰も想像すらできなかった。



「…………あの人、なのかな?」



さぁ、物語を始めよう。


魔法を怯え、それでも受け入れた青年と。


過去の記憶の思い人を探す女性の。


幸せを紡ぐ、魔法の物語を。




















      〜 あとがき 〜


やっちまったZE☆
はい、すいません、前々からやりたいなーって考えてて、ついつい手が出ました。
こんなことやってる暇があるのかっ、俺ぇ!!!

いやでもまぁ、後悔はしてません、多分。
だってだって、やりたかったんだもんっ!
やりたいものに手を出すのは、字書きの本質です。
やっちゃうもんね、ふはほーぃ!



          それでは、このへんで。


                          From 時雨  2007/09/02