その迷いも、答えが出たことで折り合いがついた…… 彼女にとっては、最良とも言える形で。 だからこそ、神坂さんは行動に出た。 「……私は、小日向雄真君が……好きです」 そんな神坂さんの思いに……俺は、どう答えればいいんだろうか。 俺には、今の自分の気持ちがわからない。 二次創作 はぴねす! Magic Word of Happiness! 「……少しだけ、待って欲しい」 考えるよりも先に、口からそう出てきていた。 神坂さんは、美人で、本当に噂どおりで……いや、それ以上だと思う。 そして、誠実で、実直な人だと思う。 「別に神坂さんの事が嫌いって訳じゃない」 そう、嫌いじゃない。 だからこそ、俺は神坂さんの気持ちに対して、真面目に答えなきゃいけない。 「……雄真君は、気になる人がいるの?」 「……それも、わからないんだ」 気になる人っていうのなら、確実に神坂さんがそうだと言える。 だけど、それが恋愛要素が混ざるかと言われると、自分じゃよくわからない。 今までは、思い出の女の子と再会することしか考えていなかった。 そういった気持ちを持つ余裕もなかった。 「俺の、神坂さんに対する気持ちが、わからないんだ……」 自分を客観的に考えて、少しだけ想像力を働かせて見た。 俺じゃない、神坂さんが誰か違う人と歩いている光景。 その誰かと楽しそうにしている光景。 「…………」 胸が、ズキリと痛んだ。 ……いや、違うな。 「雄真君?」 会ってまだ数日しか経っていない。 そんな神坂さんが知らない誰かといる光景を考えるだけで、落ち着かない気分になった。 他の誰かに笑いかけるのを見たくないと思った。 嬉しそうな、はにかんだ笑顔を向ける相手が他にいるのが、イヤだと感じた。 「俺……は……」 果たして、この考えはどういう意味を持っているんだろうか。 そして俺は……神坂さんにどういう感情を持っている? 同じ思考がループする。 そんな状態の俺だったからこそ、近付いてくる存在に気づかなかった。 「―――っ!マスター!!」 「っ!ディ・ラティル・アムレスト!!」 「え?」 ティアの警告を耳にした瞬間、反射的に神坂さんを抱き寄せ、防御魔法を展開する。 「破っ!」 防御魔法の先にいたのは、伊吹達だった。 攻撃を仕掛けてきたのは信哉か…… 「……なんのつもりだ、伊吹」 「それは此方の台詞だ、雄真……貴様になんの権限があって那津音姉さまの病室を封鎖する」 伊吹の目は、まるで敵を見るかのように冷たかった。 那津音さんの病室を封鎖…… まさかとは思っていたが、伊吹もあの現象にはあってないのか。 「それに、その下らない三文芝居はなんだ?」 「……下らない……だと?」 神坂さんが、俺には想像も出来ないくらいの勇気を持って打ち明けてくれた事を。 その真剣な思いを、下らないというのか……? そこまで、変わってしまったのか、伊吹。 「……伊吹、今ならまだ許せる……撤回しろ」 「断る、そのような下らない三文芝居が終わるまで待っていてやったのだ、逆に感謝して欲しいものだ」 自分の中で、何かが外れた音がした。 ……何かを許せない気持ちになったのは、あの子供の時以来かもしれない。 いくら伊吹が知り合いだったとしても、こればかりは……神坂さんの思いを馬鹿にしたのは許せない。 「……ティア、 「 伊吹から目を外さないまま、ティアをマジックワンドに戻して、しっかりと握り締める。 「ほぉ……戦う気か、この私と?」 威圧感を放ったまま、伊吹がこちらを見る目を細めた。 ……俺じゃ、相手にならないって言いたそうな目だ。 こんな、目をするような子じゃなかったはずなんだけどな。 「ごめん、神坂さん……少しだけ待ってて……答えは、その時に」 信哉の木刀が神坂さんに迫るのを目にした一瞬、俺の頭は真っ白になった。 あのまま木刀を止められなかったら、俺は神坂さんを巻き込んでいただろう。 神坂さんが傷つくのはイヤだ……神坂さんを守りたい。 そう、真っ白な頭の中で考えた自分がいた。 「雄真君、私も!」 きっと、答えなんてすぐに出ていたんだ。 ただ、俺が難しく考えすぎていただけ。 出会ってからの期間が長いか短いかなんて、そんなの問題じゃない。 俺が……雄真という人間が、どうしたいか……それが全てだったんだ。 「いや、これは俺と……御薙と式守の問題だから。大丈夫、今の俺は誰にも負ける気がしない」 すでに心は……俺の神坂さんへの思いは決まっていた。 だからだろうか、いつもよりも俺自身の気持ちが、魔力が高まっているように感じるのは。 「すぐ終わらせる、だから、待ってて」 安心してもらえるように、精一杯の笑顔を神坂さんに向ける。 その笑顔を見た神坂さんは、少しだけ惚けたような感じになったが、素直に引いてくれた。 「……うん、怪我しないでね?」 「ありがとう……ティア、行くぞ」 「こちらはいつでも」 さぁ、始めようか。 間違った道に進み始めている伊吹を止めるために。 ようやくになって気づいたバカなこの俺の思いを……春姫に伝えるために。 「覚悟は良いな、伊吹」 「それは此方の台詞だ、雄真」 「伊吹様、危険です!お下がり下さい!」 俺に対して何かを感じ取ったのか、信哉が伊吹の前に出てきた。 その後ろには油断なく上条さんも控えている。 「下がれ信哉、雄真如き私一人で構わん」 「し、しかし……」 伊吹に言われ、渋々ながらも引き下がる信哉。 ……でも、伊吹が危なくなったら出てくる気満々って所か。 信哉や上条さんがどの程度戦えるのかわからないけど…… 多分、伊吹が怪我をする前に止めてくれるだろう。 「全力で行くぞっ!ティア!!」 「はい!」 「エル・アムダルト・リ・エルス……」 未だ成功したことのない天蓋魔法。 魔力式が悪かったのか、制御方法が問題だったのかはわからない。 「アムスティア・レティ……」 でも、今の俺にならできる! そんな、根拠のない自信が、俺を動かしていた。 「……アルティマ・エル・クォーナ!!」 魔力が、空に魔方陣を描く。 ……できた、初めての……天蓋魔法だ! 「ア・ディバ・ダ・ギム・バイド・ル・サージュ!!」 天蓋魔法が発動すると同時に、伊吹も攻撃魔法を放ってきた。 俺が魔法発動時の でも! 「マスターの邪魔はさせません!ルティア・ロル・ラディス!!」 「っ!貴様のマジックワンドも魔法を使うのか!?」 俺には頼りになる相棒がついているんだ。 いつだってティアが俺を守る盾になってくれる。 そんなティアがいるからこそ、俺は 「伊吹、頼む……俺の話を聞いてくれ」 まだ、間に合う。 今、話を聞いてもらえるなら、どちらも傷つくことはない。 だからこその停戦勧告。 「ふん、その程度の魔法で!ア・グナ・ギザ・ラ・デライド・レ・オルラウム!!」 だけど、そんな俺の思いも、伊吹には届かない。 伊吹から大量に放たれる魔法。 「聞く耳は持たないか……」 それを目の前にしても、俺は心は焦りなどで揺らぐ事無かった。 やはり魔法を使わなきゃいけない、そんなやり切れない思いと共に、俺は次の手を放った。 「……アダファルス!」 天蓋魔法から降り注ぐ俺の魔法と伊吹の魔法。 その両方が激しくぶつかり合い、激しい閃光を生み出した。 ―Side Haruhi Kamisaka― 雄真君はああ言っていたけど、私は雄真君が危なくなったらすぐに出て行くつもりだった。 でも、それは戦いが始まるまでの考えだった…… 戦いが始まってすぐ、私は目の前で繰り広げられるその光景に魅、入られてしまった。 「……すごい」 あの時、私を救ってくれた男の子。 私の初恋の男の子が、魔法使いとして戦っている。 私が魅入られるなんて、思ってもいなかった。 でも、今の私は目の前で繰り広げられている……雄真君の魔法に魅入っている。 「これは、春姫では……手も足も出ませんね」 「……やっぱりそう思うのね?」 ソプラノが冷静にそう言った。 それは私も感じていた。 目の前で繰り広げられているのは、私が出て行っても足手まといにしかならないほどのものなのだ。 学園で教えられる魔法じゃない、いかに効率よく魔法を使うかを主眼にした……魔法戦。 「雄真君……こんなにすごい魔法使いだったんだ」 先生の研究室で見せてもらった時も、雄真君の魔法式には目を見張るものがあった。 その時はいろいろなことを考えてしまって集中して見ていたとは言えないけど…… でも、今見ているこの光景は、雄真君の実力が確かなものだと証明していた。 「……私も、雄真君みたいな魔法使いになれるかな?」 自分でも気づかないうちに、ソプラノを強く握り締めていた。 いつか、見ているだけじゃなく私も雄真君と肩を並べられる魔法使いになりたい。 その思いが、私の中で強く芽吹いていた。 「ルーエント!!」 「ア・ダルス・ディ・ラム・ディネイド!!」 俺の放った魔法が、伊吹の防御魔法に阻まれる。 確かに伊吹は強い、本当にすごい魔法使いになったと思う。 だけど、魔法の練習を続けてきたのはなにも伊吹だけじゃない。 俺も、「みんなを幸せにする魔法使いになる」と誓った日から、ずっと切磋琢磨してきたんだ! 「ラ・ディーエ!」 「アムレスト!!」 培ってきた努力は、決して裏切ることはない。 だからこそ、今こうして俺は伊吹と戦える! そして、今の伊吹と俺の決定的な違い。 「これで、決着をつけるぞ、ティア!」 それは……守りたい存在を、見つける事ができた俺のこの気持ち!! この気持ちは、何者にも負けるはずがない!! 「了解です、ディ・ナグラ・フォルティス!」 「エル・アムダルト・リ・エルス・ディ……」 鈴莉母さんに使って、結局破られた魔法。 今回は、ティアに相乗魔法を使ってもらう。 今は天蓋魔法も発動して、威力は前の桁違いだっ! だけど、俺の手を知らない伊吹に、これが防ぎきれるかな! 「……ルテ・エルリシア・カルティエ・フォン・クレイシア」 「っ!伊吹様!!」 信哉は何かを感じ取ったんだろう。 木刀を構えて伊吹の前で壁になるように立ちはだかった。 持っている木刀に魔力が満ちている……あれが信哉のマジックワンドってことか。 前に出るのはいいけど、この魔法に対してその判断は間違いだ!! 「アス・ルーエント・ディ・アダファルス!!」 「なっ!」 「くっ、信哉!下がれ!!」 鈴莉母さんの時と同じように、俺の放った魔法は分散し、無数の火球になって伊吹達を包囲した。 傷つけるつもりはない、だけど、戦いはこれで終わらせる!! 「いっけええええ!!!」 伊吹達に向かって降り注ぐ俺の魔法。 その直前、伊吹達の前に、上条さんが立ったのが見えた。 「幻想詩・第一楽章・混迷の森」 まるで音楽を奏でるように、上条さんの魔法が発動し、俺の魔法を消し去った。 違う次元に魔法を受け流して、威力そのものを消滅させる魔法か…… 「勝手な行動をお許しください、伊吹様……小日向さん、こちらはもう戦う気はありません」 そして、上条さんからこれ以上戦う意思がない、という言葉がかけられた。 その言葉と同時に、信哉も構えていた木刀を下ろした。 「な、信哉、沙耶!?」 「伊吹様……」 「――――っ!わかった……」 伊吹がまだ何かを言いたそうにしているが、どうやら上条さんの言うことを聞いてくれるようだ。 よかった、まだ余力はあるにしても、3人を相手に戦うのは少し辛かった。 「そっちがこれ以上やらないなら、俺もこれ以上魔法を使う気はない」 そう言って、上空に待機させてある天蓋魔法を解除する。 少し離れた場所でそれを確認した春姫が、俺の方に駆け寄って来た。 「雄真君、大丈夫!?」 「うん、怪我とかもしてない。……ちょっとだけ疲れたけどね」 伊吹が放った魔法は、ティアの防御魔法と、俺自身の魔法で防げた。 魔力は結構消費したけど、怪我とかは一切していない。 それでも心配をかけたのか、春姫は俺の全身を見て、本当に怪我がないか確かめていた。 「……ごめん、もう少しだけ待ってて」 そんな姿に苦笑しつつも、春姫には悪いけどもう少しだけ待ってもらわなきゃいけない。 俺の思いを今、この場で伝えても良い。 でも、こういうのはしっかりやらなきゃいけないような気がする。 だから、第三者である伊吹達には、一時的に退場してもらわなきゃな。 「伊吹、那津音さんのことは後で説明する。だから今は退いてくれ」 「……それで、私が言うとおりに行動すると思うのか?」 「それでも、素直に聞いてくれるんだろう?」 伊吹から目を逸らさずに、しっかりと見据える。 昔は素直に話を聞いてくれた伊吹だ。 物言いが変わったとしても、本質的なものは変わっていないと思う。 「……よかろう、後ほどまたここに来る、その時にしかと理由を聞かせてもらうぞ」 「わかった、その時には必ず」 「……行くぞ、信哉、沙耶」 「はっ」 不満はまだまだありそうだけど、伊吹はとりあえず二人を連れて屋上から消えた。 ……やれやれだ。 伊吹達が来たことで、神坂さんへの気持ちがわかって。 そっからなし崩し的に戦いが始まって…… 自分の思いを自覚するだけで随分とまぁめんどくさいことをしたもんだ。 「さて、と」 意識を切り替えて、春姫の方を向く。 「……ごめん、さっきは変に悩んで」 「あ、いいの!雄真君にとって唐突だったのはわかってるから」 「……でも、答えはしっかりと見つけたから」 そう、答えはしっかりと見つけた。 なんとも情けない自覚の仕方だったのは、この際遠くに捨てておく。 ……でも、この気持ちは、本物だと思っている。 「……神坂春姫さん」 「……はい」 だから、胸を張って伝えよう。 「俺も、君が好きです」 この想いを、君に。 〜 あとがき 〜 元からそのつもりだったけど、雄真つええな、おい! 伊吹と互角って……式守次期当主とタイマンできる学園生(Classなし Class取ったら雄真はどこまで駆け上がれるんだろうか……? 天蓋魔法使えてるから……上級魔法使えるってことだしなぁ……? ま、いいや。 とりあえず……春姫、ゲットだね! 次の山場は秘宝編でしょうかねぇ? とりあえず今回は、このへんで。 From 時雨 2008/01/03 |