俺が笑いながらそう言って手を出すと、春姫は嬉しそうにその手を取ってくれた。 そして、2人で並んで母さんの研究室を出た。 「……いよいよだね」 「あぁ、明日は気合を入れてかからないとね」 いよいよ、那津音さんを救うために動く。 ……決戦は、明日だ。 二次創作 はぴねす! Magic Word of Happiness! 那津音さん救出作戦当日。 俺はいつもより少し早めに起きると、公園へと足を運んでいた。 「……フィールド展開」 「了解しました、フィールド展開します」 ティアに頼んで、魔法が特定範囲外に影響を及ぼさないようにフィールドを形成してもらう。 これで、中でどれだけ魔法が暴走しても、外への影響はなくなる。 「……俺の中の潜在魔力ってのを、出来るだけ全て使えるようにしておかないとな」 「そうですね、どれだけの魔力が持っていかれるかもわからないわけですし」 今日やる練習は、いつもの光の球を生み出すまでは同じだが、そこからが少しだけ変わる。 魔力を、出来る限り注ぎ込んで、どの程度までなら立っていられるかを調べるのだ。 「……ぶっ倒れたとしても、まぁ今なら風邪引くってことはないか」 「オススメはできませんが……どうせ私が言ってもやる気でしょう?」 ティアからしたら、倒れるまでやるのは愚の骨頂だとでも言いたいんだろうけどな。 でも、今回ばかりは自分の限界を知っておかないと本当にマズいと思う。 「はは、ご名答。それじゃ……はじめるぞ」 「了解です、マスター」 「……エル・アムダルト・リ・エルス」 すぐに魔法を発動させる事なく、魔力を出来る限り集中させる。 そして、普段の自分では限界だと思っていた領域に辿り着いた。 「……っ!」 発動しそうになるのを精神力で抑えながら、自分の中にあるであろう魔力を搾り出す。 魔力を水と例えるなら、俺は水道だ。 全開だと思っていた蛇口は、まだまだ回す余裕があるはずなんだ。 「……エル・アダファルス!!」 立ちくらみが発生する直前まで魔力を注ぎこんだ。 そして、出来上がった光の球は、俺と同じくらいの大きさだった。 「……でかいな」 「密度、精度共に安定してますね。今までより260%の増加といったところでしょうか?」 単純に考えて2倍以上か…… それだけの魔力が俺の中には眠っていたって事なのか。 ティアの確認が終わったと同時に、発動させていた魔法を解除する。 すると、少しだけ立ちくらみのようなものが起こった。 「恐らく、今まで認識していなかった領域を開拓した事で、マスターの体内の魔力バランスが崩れているんでしょう」 なるほど……でも、開拓は成功したと見ても問題ないだろう。 今まで感じていた魔力より、何倍も大きな力が、自分の中に感じられる。 「……ふぅ。ティア、フィールド解除していいぞ」 「はい、フィールド解除します」 フィールドも解除して、少しだけ草が生えているところに移動する。 そして、その地面に腰を下ろすと、俺は精神集中のために瞑想を始めた。 「……すぅ……はぁ……」 ゆっくりと深呼吸して、自分の中で活性化している魔力を落ち着かせる。 完全に眠らせるという訳じゃない、ただ休止状態に持っていくだけだ。 だが、いつまでもこんな活性化状態だったら勘のいい人に俺が魔法使いである事を気づかれる可能性がある。 「…………」 暫く深呼吸と、精神集中を続けていると、活性化していた魔力はいつも通りの状態に戻った。 ……よし、これで誰にもバレる事はないだろう。 「……お疲れ様、雄真君」 「――――っ!?」 最後に少しだけ息を吐いて、ゆっくりと目を開けると、横から声をかけられた。 その声のした方向に弾かれたように視線を向けると、タオルを俺に差し出してくれている春姫がいた。 「……はる、ひ?」 「うん」 いつの間に、ここに来ていたんだろうか。 「一体、いつの間に……?」 ……待てよ? 呆然と問いかけてしまったが、すぐに1個だけ心当たりが浮かんだ。 「……ティア、お前気づいてたな?」 そうだ、誰かが近づいてきていたとして、それにティアが気づかなかった事の方がおかしい。 魔法練習中も、日常生活の時も、俺の方に近づいてくる人がいたら、ティアには教えるように頼んである。 「あは♥」 と、なるとティアが故意に教えてこなかったという可能性しかないわけで。 何より、ティアの解答になっていないようで、しっかりと答えている返事を聞きながら、俺は全身の力が抜けるような感じがした。 「あは、じゃないだろう……」 「ごめんね、雄真君。私がティアに頼んだの」 どうやら、春姫は俺が今日もここにいる事を予想して、来てみたらしい。 そこで、予想通りというか俺を発見し、瞑想している俺の邪魔にならないように近づいてきたようだ。 「別に、声をかけてくれてもよかったのに」 「でも、雄真君真剣な顔をしてたから」 差し出されたタオルをありがとうと受け取り、いつの間にか流れていた汗を拭く。 洗い立ての、いい匂いがした。 「……でも、どうして春姫はここに?」 汗を拭き終わった後、魔法服の春姫を見て、思いついたことを問いかけてみた。 春姫は、タオルを俺に渡すだけのために来たのだろうか? それだと、魔法服を着てくる理由には当てはまらないが…… 「えっと……もしかして迷惑だった?」 どうやら、思いついたことは当たってしまったらしい。 春姫は、少しだけ悲しそうな顔をした。 「そんな事はない!……ありがとう、春姫」 迷惑だなんて、そんなはずがない。 俺なんかのためにわざわざタオルを届けてきてくれたんだ。 感謝こそすれど、それを迷惑に思う理由なんてどこにもない。 「後は、ちょっとだけ雄真君の魔法の練習が見てみたくて」 「……俺の?」 付け足すように春姫が言った言葉に、俺は首を傾げてしまった。 見ていて、楽しい事なんて特にないと思うんだけど……? 「雄真君って独学で今まで魔法を練習してきたんでしょ?」 「うん、一応母さんに見てもらったりはしてたけどね」 それ以外は、魔法書を読んで独学していたと言っても過言じゃないだろう。 小さい頃に魔法式の基本は教わっていたから、後は自分なりに直していくだけで十分だった。 「だから、雄真君がどういう練習の仕方をしてるのか気になっちゃって」 春姫の話を聞いてはじめて知ったんだが。 どうやら魔法科の生徒はそれぞれ授業のカリキュラムに練習が組み込まれているらしい。 さらに、その練習は1人で行うのではなく、友人などとペアを組んで行っているようだ。 「……なるほど、人に見せる事で自分の足りない所を補ってもらうのか」 少しだけ、魔法科がうらやましく感じられた。 「私はたいてい杏璃ちゃんと組んでやってるんだよ」 魔法を隠すと決めたのは自分自身だ。 だからこそ、独学で学ぶ事にはなんの問題もなかった。 分からないところがあれば、母さんに聞けば答えてもらえたというのもある。 「柊か……なんか春姫に対抗心燃やして自爆してるのしか思いつかないな」 「あ、あはは……」 それでも、第三者の意見というのは貴重だったりする。 相手の魔法式の組み立てを深く知らないからこそ疑問が浮かび、それを吸収する事でさらに効率のいい魔法式が組み立てられるからだ。 「……魔法服着ているみたいだし……少しだけ練習してみようか?」 魔法服を着ていたって事は、春姫も自分で魔法の練習をしていたのかもしれない。 それに、俺も出来るなら母さん以外の人と魔法の練習をしてみたかった。 「え、いいの?」 そんな事を言われるとは考えていなかったのか、春姫がそう聞き返してきた。 春姫が迷惑でなければ、と前置きして、俺は肯定の返事を返す。 「……それじゃ、少しだけ」 「うん、わかった」 少し悩んだ末に、春姫との魔法の練習が確定した。 ……でも、俺って魔法科の練習方法なんてもの知らないんだよな。 「……ゴメン春姫、魔法科でやってる練習方法ってのを教えてもらっていい?」 「あ、うん。魔法科だとね――――」 その後、少しだけやり方を教わって俺は再びティアにフィールドの形成を頼んだ。 春姫は自分がフィールドを形成すると言ってくれたが、付き合ってもらうのは俺だ。 そのくらいはやらないとな。 「それじゃ、お願いします」 「こちらこそ、お願いします」 少しだけ大き目にフィールドを形成すると俺と春姫はマジックワンドを構えて向き合った。 魔法科のやり方は、意外に単純な物だったらしい。 「エル・アムダルト・リ・エルス」 「エル・アムダルト・リ・エルス」 お互い、魔力球を作り出し、それをぶつけ合うというもの。 ……なんとも、柊が好みそうな練習方法だと思ったのは内緒だ。 「エルリシア・カルティエ・フォン・クレイシア」 「リアラ・カルティエ・エル・アダファルス」 それぞれ自分の目の前に、それなりの魔力を注いで魔力球を生み出す。 そして、それを相手の魔力球に向かって解き放った。 魔力球は、途中までせめぎあっていたが、徐々に春姫の魔力球が押され始めた。 「くぅっ!」 支えるのが辛くなってきたのか、春姫から苦悶の声が聞こえた。 それを聞いてすぐ、俺はティアに命令を出した。 「ティア、 「了解しました!ルティア・ロル・ラディス!」 ティアの3節詠唱が完了すると同時に、魔力球は跡形もなく消えた。 同時に、春姫がその場に座りこんでしまった。 「春姫、大丈夫か!?」 ティアをカフスに戻して、慌てて春姫に向けて駆け出す。 突然魔力球が消えたのに驚いたのか、春姫は少しだけ呆然としていたが、すぐに表情を崩した。 「すごいね、雄真君。これでも私結構な魔力を込めたんだよ?」 「もう少し、魔力を減らした方が良かったかな」 人を乗せての飛行といい、今回の事といい。 俺は人と何か練習すると言う事に慣れてなさ過ぎる気がする。 相手が母さんだと、俺が全力を出しても負けるからなぁ。 「ううん、たぶん注いだ魔力量はそんなに変わらないと思う」 「え?」 俺の魔力球が競り勝った理由。 それは魔力球の密度の問題という事だ。 春姫のに比べて、俺の魔力球の密度が高かったために、春姫は押されたと言う事らしい。 「……大丈夫?」 「うん、ありがとう」 春姫に手を貸して、立ち上がらせる。 春姫はついた土を払った後、もう一度マジックワンドを構えた。 「雄真君、もう一回!」 「あ、あぁ……わかった」 どうやら、春姫も柊に負けず劣らずの負けず嫌いなのかもしれない。 意気揚々と魔力球に魔力を注いでいる春姫を見て、俺はそんな事を考えてしまった。 ……確かに、この練習方法は意欲向上にいいのかもしれないな。 〜 あとがき 〜 さて、いよいよ那津音救出作戦が本腰入れて発動します。 まぁ、そう簡単に那津音さんを救わせるつもりもないんですが(ぁ それは今後の俺の書き方次第って感じですかねー やっぱり盛り上がりは大事にしないとね! 相変わらず俺の頭の中で春姫との合同詠唱がリストアップされ続けてます。 それのためにどうやろうかなーみたいな感じですね。 まぁ、とりあえず、今回はこの辺で。 From 時雨
初書き 2008/02/17
公 開 2008/02/23 |