「……やるわ。春姫にも、雄真にも負けないんだから!」


ならば、後必要なものは決意だけ。
そして、柊は参加する意思をしっかりと告げてきた。


「あぁ、その意気込みがあれば、大丈夫だ」


さて、これからまた忙しくなりそうだ。


















二次創作 はぴねす!
Magic Word of Happiness!


















さて、さすがに他の人の魔法式に手を出すなんてやった事があるわけじゃなく。
そもそも構築がまったく違う物を発展させるっていうのは苦労するだろうとは思っていた。


「……でも、まさか基礎から教えなきゃいけないとは思わなかったよ」
「う、うるさいわね!!」


だが、柊の魔法式を改良するのは、苦労どころの話じゃないらしい。
柊は込められる魔力量は多いが、それに見合った公式が作れないタイプだったらしい。
……上手くいくのかな、これ?


「なぁ、柊。なんでここの魔法式がこうなるんだよ?」


母さんに許可を貰って、Oasisの一角を借り受ける。
その条件としてウエイターの手伝いをやらされることになりそうだが、まぁそれくらいは受け入れよう。


「え、だってその方が発動が楽じゃない?」


柊の魔法式は発動させる魔力がいくら高くても、結局は発動に1しか掛けていない。


「あ、あのね杏璃ちゃん。それだと無駄に魔力を消耗しちゃってるの」


あまりに雑な柊の魔法式構築を見かねてか、今までは傍観する立場にいた春姫が参戦してきた。
春姫の言うとおり、柊の魔法式には無駄が発生している。
……いや、無駄というよりは淀みと言った方がいいか。


「そうだなぁ……その無駄になってる分の魔力を発動に使えれば、単純に何倍かにはなるだろうな」


つぎ込める魔力量を単純な魔法式で組み上げるから、処理し切れなかった部分が発生する。
それが淀みとなって、恐らく柊の魔法制御の不安定さが生まれるんだろう。
そして、魔法式が簡単だからこそ、解除されやすいという隙を作っていた。


「……とりあえず、今のままじゃ改良どころの話じゃないな」


せめて複数の式を混ぜて組み上げるくらいできるようにならないと、改良なんて夢のまた夢だ。
そう考えて、春姫に魔法式の基礎から叩き込んでもらう事にする。
無理を頼む事になるから、今度頼みごとをなんでも1つ聞くっていう条件を出しておいた。


「……ほんとになんでもいいの?」
「まぁ……俺が出来る範囲でなら」


その時に、なにやら不穏な空気を感じた気がするのはなんだったんだろうか?
……考えてもわからないからいいか。


「……あぁ、マスターがまた自ら墓穴を」


ティアが何か言った様な気がしたが、はっきりとは聞き取れなかった。
……この時気づいてれば、また少し違ったのかなぁ。


「で、信哉の方はどうだ?」
「ふむ……改良と言ってもな、俺にはいまいち解りかねる」
「兄様の魔法式は私とも違いますし、原理が完璧に異なるので私にはどうする事も……」


どうやら、こっちも難航の色を見せ始めているみたいだ。
上条さんと信哉が紙に書き出した魔法式を見せて貰う。
……確かに、信哉と上条さんだと完全に構築方法が違うのか。


「そうだな……これを見せてもらう限り柊よりはよっぽど簡単だと思うよ」


信哉たちの魔法式は、しっかりと複数の式を併用した形になっている。
これだけ基礎がちゃんと組み上がっているのなら、まだ手の出しようがあるかもしれない。


「……まずは、信哉の魔法を改良からだな」


現実逃避と言われるとそうなのかもしれない。
あまりにも柊の魔法式が拙すぎて、考えるだけで頭が痛いんだから。


「まずは……そうだな、もう一度あの魔法を使ってみてくれないか?」
「む……まだ式守本家の一方通行しか出来ぬが」
「あぁ、別に入るわけじゃないよ、俺とティアでその魔法式を完全に解析してみようと思う」


ティアのサポートが入れば、かなりの精密さで魔法式が解析できると思う。
それで信哉の魔法式の原理を一度把握置く方が紙で見るよりも改良法が見えるかもしれない。


「解った、雄真殿の準備が終わったら言ってくれ」


そう言った後隅の方へ移動する上条兄妹。
付いて行く前に、ひとつ思いついて、信哉達が書いた紙を持って春姫たちの方へ行く。


「あれ、雄真君。そっちは終わったの?」


俺が近づいてきたことにすぐ気づいた春姫が声をかけてくれる。
その前では、いつの間に用意したのか、中等部の教科書を前に唸っている柊がいた。


「一応これから始めるんだけどね」


まさかそこから始めるとは思っていなかったから苦笑しながら答える。
っていうか、そこから組み直さなきゃならないくらいなのか……
春姫の頼み事、多少は辛いものでも引き受けよう。


「柊」
「なによ、今忙しいの!」


中等部の教科書を解くのに忙しいと言われても、説得力の欠片も無いんだが。
そんな言葉は無理矢理飲み込んで、俺は持ってきた紙を柊に渡した。


「せめて、このぐらいの魔法式が組める様になること。いいな?」
「……わかったわよ」


てっきり噛み付いてくるかと思えば、予想よりすんなりと紙を受け取った。
それだけ柊も自分の魔法を向上させたいって事なんだろう。


「難しく見えるかもしれないが、基礎さえ出来ていれば組める物だから、お前ならすぐ追いつくさ」


皮肉でもなく、純粋にそう思う。
魔法に対してここまで貪欲に向上心を見せる柊だ。
きっと基礎を物にすればそれこそ春姫に追いつくのだって夢じゃないかもしれない。


「えっと、雄真君」
「ん、なに?」


とりあえず信哉たちの所に戻ろうとした時、春姫に声をかけられて踏みとどまる。
顔を向けた先の春姫は、なにやら顔を赤くして、少し言うのを戸惑っているように見えた。


「えっとね……今度時間がある時でいいから、雄真君の魔法式が見てみたいなって」


どうやら、信哉たちの魔法式を見て、他の人の魔法式にも興味が出たらしい。
特に詠唱が似ている俺の魔法式なら、春姫にも簡単に応用が効くと考えたんだろう。


「うん、いいよ。それじゃあ明日くらいまでに簡単なのを書いてくるよ」


何を言い戸惑っていたのかはわからないけど、この程度の頼みごとなら断る理由がない。
春姫にだって魔法に対する向上心はある。
それを妨害するつもりなんて、俺には一切ない。


「あ、ありがとう、雄真君」
「どういたしまして。それじゃ、ちょっと信哉たちの方を見てくるよ」


―――――もうちょっと柊のこと頼むな。
そう言った後、ティアをマジックワンドに戻しながら信哉たちの方へ行く。


「……ティア、魔法式起動準備(スタンバイ)
「了解しました。久々ですね、そう言われるのも」
「それもそうだな」


ゆっくりとティアを構え、精神を集中させる。
表面だけを見るならそんなに苦労はしない。
だけど、今回は信哉の魔法式の深いところまで見るつもりだ。
それ相応の準備をしておかないといけないだろう。


「エル・アムダルト・リ・エルス―――――」
「ディ・ナグラ・フォルティス」


俺が詠唱を始めると同時に、ティアがすかさず相乗効果の魔法をかけてくれる。


「―――――アス・ルーエント・ディ・シルフィス」


最後の詠唱が完成すると同時に、その出来上がった魔法を目に集中させる。
徐々に視界がモノクロの世界になっていく。
……さすがにここまでしっかりと使ったのは初めてだから、この光景は違和感を感じるな。


「……よし、安定してきた」


最初はカラーとモノクロの世界が交互に発生してきていたが、徐々にそれも折り合いがついて来た。
2種類の世界が半々に見えるようになった後、信哉の方へと移動する。


「上条さん、一度実験したいから、何か回りに被害の出ない魔法、使ってみてくれないかな?」


さすがにこの状態で俺がフィールドを張るほど余裕がない。
魔法を目の部分に集中させるのが、予想より難しいせいだ。
……今後、俺の課題のひとつになるかな。


「解りました……それでは……幻想詩・第二楽章・明鏡の宮殿」


上条さんの魔力がサンバッハに伝わり、それが形を成すプロセスがしっかりと見えた。
うん、魔法式もしっかり見えるし、成功しているみたいだな。


「信哉、それじゃあやってくれ」
「了解した……風神の太刀 一式 風斬り!」


信哉が風神雷神を振り下げると同時に、魔法式が伝わり、空間に干渉する。
それを一瞬たりとも見逃さないようにしながら、細部を記憶していく。


「……これでいいか、雄真殿」
「あぁ、ありがとう。もう魔法解除(マジックアウト)してくれていいよ」


発動した後の空間の方にも視線を走らせて、空間を安定させている魔法式を読み解く。
……予想より、複雑な方式を使っているな。


「……ティア、魔法解除(マジックアウト)
「了解」


しっかりと記憶した後、ティアに魔法を解除してもらう。
同時に視界に移る光景が全てカラーに戻っていく。


「……っ」


俺のこれももう少し改良した方が良さそうだな……
解除した時のギャップで、多少視界に影響が出るみたいだし。
少し霞む視界を瞬きする事で調整しながら、今まで記憶した事を反芻しておく。


「ごめん、上条さん。紙とペンもらえるかな?」
「あ、はい。どうぞ、小日向さん」


多少視界がぼやけていても、文字を書くくらいは出来る。
その間に気づいた事を忘れないうちに紙に書き出しておかなきゃいけない。


「うし、こんなもんかな」


書きあがる頃には視界も元通りに戻っていた。
殴り書きになったから多少見づらいけど、一応まだ読める範囲だと思う……


「信哉、これが一応俺とティアで見たお前の魔法式な」
「ふむ……俺が理解しているもの以外にも魔法式があるようだが……?」


そう言って信哉が指差したのは、発動のために使っていた魔法式とは別の部分だった。


「あぁ、これは信哉の魔法が発動した後の空間を維持している魔法式の方だな」
「ふむ……そんなところまで見れるのか」


目に魔法を維持するので結構一杯一杯だったけどな。
それでも、信哉の知らない領域まで見れたって事は、十分な成果になってると思う。


「これで大体の魔法式は把握したから、ここからは応用を探す感じになるな」
「うむ、俺の方でも考えられるだけ考えておこう」
「私もお手伝いさせて頂きます」


すぐに改良方法が見つかるはずないからな。
後は俺の方でもこれをベースにして考えてみればなんとかなるだろう。


「ただ、何回か試験的に魔法を使う事になるかもしれないから、それだけは頭に入れておいてくれ」
「心得た。雄真殿、苦労を掛ける」
「いや、俺が言い出した事だし、かまわないさ」


信哉の魔法の改良が上手くいけば、式守家へ行くのもだいぶ楽になるだろう。
それに、これで俺も新しい何かが見つけられるかもしれない。
まぁ、やってみなきゃわからないんだけどな。





















      〜 あとがき 〜


自分でやっといてなんですけど、やっぱり雄真最強になってますね(ぁ
いやまぁ、主人公最強なのは好きなんで字書きペースも上がるんですがw
なんだかんだで便利な能力持っちゃってますよ!

実は今回の雄真の能力、2個ほど漫画を参考に生み出しました。
それがわかった人いるかなぁ……?
わかった人はこっそり教えてください(ぁ

          From 時雨


初書き 2008/03/14
公 開 2008/03/17