「やぁ、どうも、古泉一樹です。」 今日は、僕から見た視点でのSOS団をご紹介させていただこうかと思います。 え、普通、こういうのは彼が出てくるんじゃないかって……? 嫌ですね、大体予想なんてついているんでしょう。 もちろん、普段なら彼がやってくれますが、今はここにいませんので。 「では、始めましょうか」 授業が終わり放課後になると、僕はまずSOS団の部室の方に足を運びます。 もちろん、涼宮さんの動向を一番確認しやすいのが部室なのですが、つい最近、自分でもそれだけじゃない、別の目的とでも申しましょうか。 特に深い意味はありません、ただ僕自身がSOS団として、惹いては一個人、古泉一樹としての意思で向かっているのです。 「どうも」 「相変わらずお前は最後の方に来るんだな」 大抵僕が部室に顔を出すときには、皆さんおそろいです。 窓辺に座り、読書にふける長門さん。 最初は涼宮さんの指示で、今ではいつの間にか定着したメイド服での給仕をなさっている朝比奈さん。 そして、いつもどおり眠そうにして、少々の疲れを滲ませ部室備え付けのパイプ椅子に座っている彼。 別に出遅れているつもりもないのですが、大抵僕が最後になってしまいます。 「そうですね、教室が遠いのでしょうか?」 そして、大抵最初に声をかけてくれるのは彼です。 最初こそ彼はこの集まりに対して文句を言っていたのですが、今ではまじめにここに通われているようです、結構なことですね。 そして、僕が席につくと、朝比奈さんがお茶を淹れてくださいました。 ふむ、また腕を上げられましたね。 「ゆっくり来れるお前が羨ましいよ」 一言、呟いて彼は机に突っ伏してしまいました。 若干、ネクタイを含む首元のシャツがくたびれていたように見えたところから察するに、どうやらまた涼宮さんに強制的に引っ張ってこられたようですね。 「心中お察しします」 「察するくらいなら、変わってくれ」 それはそれで魅力的な相談ではありますが、遠慮しておきましょう。 それに、彼女に選ばれたのは僕ではなく、貴方なのですから。 「ところで、涼宮さんはどちらへ?」 普段ならば、団長席の方に座り、ネットサーフィンに興じていらっしゃるであろうはずの涼宮さんの姿が見かけられませんでした。 おかしいですね、彼の様子を見る限り、涼宮さんもご一緒に登場なさったかと思われるのですが。 「ハルヒなら何かよくわからんが、モノを取って来るといって俺をここに捨ててどこかに行ったぞ?」 「ふむ、また何か思いつかれたんでしょうか?」 涼宮さんには願望を現実に変える能力がある。これは、すでに皆さんご存知でしょう。 最近の彼女の精神はとても落ち着いていて、彼といることでその安定性が高まっているように見えます。 その彼女が、彼を置いてどこかにいった。 と、いうことはまた何か退屈を潰す方法を思いついた、と、いうことでしょう。 「……なんでもいいが、俺を巻き込むのはどうにかしてもらいたいもんだ」 「ご苦労様です」 と、言いつつも若干楽しんでいるという顔が隠しきれていませんよ? 貴方も、今の現状を程ほどに楽しんでらっしゃるんですね。 「おっまたせー!あ、古泉君おはよう!」 「おはようございます」 「……ハルヒ、なんだそれは」 とても生き生きとした表情で涼宮さんが現れました。 両手に持っていらっしゃるのは……バトミントンのラケットとシャトルですか。 「見てわかんない?バトミントンよ!さ、やりに行くわよー!!」 おおよそ、取って来るというのはバトミントン部の備品を貰ってくるということだったんでしょうね。 顔も見たことのないバト部の方、ご冥福をお祈りしておきます。 涼宮さんは、片手に道具一式を持ったまま、彼に近づき、ネクタイを掴み、行動を開始しました。 「待て、せめて準備をさせろ!ネクタイを引っ張るな!人の話を聞けえぇぇぇ!」 「いってらっしゃい、ご武運を」 「古泉、見てないで止めろ!なんだその笑顔は!!」 いえいえ、別にほほえましいとなんて思っていませんよ? それに、僕に涼宮さんを止めることが出来るとでも思いますか? 彼女を止めることができる可能性があるのは、良くも悪くも貴方だけなのですよ? 「涼宮さん、どこか嬉しそうでしたね……」 二人が消え、静けさが戻った部室で朝比奈さんがポツリと呟くような独り言をもらされました。 「きっと、嬉しそうではなく、嬉しいんでしょう」 「あは、今の聞こえちゃってましたか?」 「えぇ、失礼ながら聞いてしまいました」 朝比奈さんが照れたような笑いを浮かべてこちらを見られました。 そうですね、彼が言うところで表すのならば、天使の微笑み、とでもつけましょうか。 僕も健全な男ですから、実際彼女の微笑みには見惚れるものがあると思います。 「さて、団長もいなくなられてしまいましたし、これからどうしましょうか」 おそらく、涼宮さんのことですから彼がくたくたになるまでは離さないでしょうし。 彼は彼で、文句も言いつつも勝負事に熱中して本気で相手をしていらっしゃるんじゃないでしょうか。 「そうですねぇ……私たちも、混ぜてもらいましょうか」 「それはいいかもしれませんね、彼だけでは、涼宮さんの無尽蔵とも思われる体力についていけないかもしれませんし」 いえ、これは疑問ではなく確信ですね。 それに、どうせ遊ぶなら大勢のほうが楽しいでしょう? 「それでは、そうと決まったところで向かうとしましょうか。長門さん、今、彼らがどこにいるかわかりますか?」 「……中庭」 少し考える動作をしたあと、簡潔に答えて、また本を読むのに戻られました。 嫌ですね、長門さん。 貴女も行くんですよ? 「はぁい、えっと、長門さんも行きましょう?」 「……そう」 「ふふ」 朝比奈さんは誤魔化せても、僕の目は誤魔化せませんよ? 朝比奈さんに誘われた時、少しだけですが、本をめくる手が止まりましたね? 最初に比べて、貴女も十分と感情というものを出されるようになりました、これも彼の影響でしょうか? 「さて、早く行かないと彼がバテてしまいそうですし、急ぎましょうか」 もうすでに涼宮さんのいいように振り回されてバテはじめているかもしれませんね。 でもまぁいいでしょう、それが、選ばれた貴方に与えられている特権なのですから。 他の誰が望んでも立てない場所に、貴方はいらっしゃるのです。 光栄なことだと、思いますよ? 「……今日も、世界が平和で、なによりです」 これが、僕が過ごすSOS団としての日常です。 お楽しみいただけたでしょうか? その後、彼はどうなったかって? ふふ、彼に悪いのでそれは禁則事項ということにさせていただきます。 それにしても涼宮さん、顔に墨を塗るのは、普通は正月の羽根突きですよ? 後書き はい、『涼宮ハルヒの憂鬱』の二次創作でした。 アニメ版古泉ほど説明役に特化しているキャラもそういないんでわないかと思っております。 とりあえず、次のネタは頭の中にあるくせに、こっちを仕上げるということやらかしてます。 いや、次のもちゃんと書きますよ? ただ、ちょっとシリアス雰囲気を目指してみようかなーとか思ったりもしてますけどね? それでわ、また、次回作にて。 From 時雨 2007/03/26 |