「あぁ、もうくそ!なにがどうなってる!?」 いったい何がどうなっているのか、説明できるやつ、誰か来て説明してくれ! またどこか長門が言うところの急進派か?古泉が言うところの敵対組織とやらの攻撃か!?なんで、俺が毎回毎回こんな目にあわなきゃならないんだよ!? 今、俺はとてつもないくらい必死に逃げている! 「きょ〜ん〜……どこ行きやがった〜……出てきやがれ〜……」 「おーぃ、キョン。出てきた方が身のためだよー?」 「あっはっは!キョン君、観念して出てくるといいっさ!今なら優しくおいしく調理してあげるっさ!!」 谷口は一昔前の某ゾンビ討伐ゲームを連想させるような動きで俺を探しているし、国木田は大人しそうに見えるが、パターン的にあーいったタイプが一番怖い!そもそも鶴屋さん!美味しく調理って俺をどうするつもりですか!? 事の発端からしてわからないんだが、それは唐突に始まったと表現するべきなんじゃないだろうか。 本当になにが起きたのか、それを理解する前に行動に移さなかったら、今の俺はどうなっていたのやら…… 「あぁぁぁあぁぁぁ〜」 「谷口……すでに言語能力まで失ったのか……」 とりあえず、3人が襲撃を掛けてきたのは、恐れ多くも涼宮ハルヒが占拠したSOS団のアジト、そこに唐突に現れた。 「きょおおおおん!これはいったいどういうことだっ!!」 「ちょっとまずぃよ、キョン、これはさすがにフォローできなかった」 「あははは、キョン君やるねぇ、すでにここまで進んだのかい?」 そういって3人が見せてくれたのは、とある写真だった。 「……何のことだ?」 「ちょっと、なんなのよいったい?」 「わぁ、なんですか、その写真?」 「…………?」 「貴方の家の外観に似てますね?」 そう、写真に写っているのは、俺の家のように見えた。 だが、そこは問題じゃない。 問題だったのは、その写真に写っている人物に問題があった! 「――――っ!?」 「な、なんだコレは!?」 察しの言い方はすでに理解していただいているだろう。 たった今反応したのは、俺とハルヒ…… そう、写真にはハルヒの手を引いて家に招き入れているように見える俺の姿が写っていたのだ! 「そんなもん俺が聞きたいわ!お前らいつからそんな仲になってやがった!」 「良かったっさ、ハルにゃん!ようやく思いが成就したんだねっ!!」 「わぁ、ホントですか、涼宮さん」 「貴方もようやく素直になられたのですね、大変結構なことです」 落ち着け谷口、俺はこんなことをした覚えは……なくもないような気がするがないということにしておいて、鶴屋さん、その聞き捨てならない台詞はなんですか、朝比奈さん、そんなに嬉しそうになさって本当にいい人ですね、古泉、何を訳わからないことを言っていやがる。 「……キョン、問答無用容赦無用、秘匿は身を滅ぼすと覚悟してすっきりはっきり吐いてもらおうか?」 「ちょろんと私も気になるっさ、白状してもらうよ、キョン君」 「……と、とりあえず、三十六計逃げるにしかず!」 と、言うわけで、逃げることにしたのだ。 なんで本当に俺がこんな目に…… ちなみに、ハルヒは写真を見てから真っ赤になって、そのあと朝比奈さんと長門、古泉に捕まっていたので申し訳ない気持ちを少し持ちつつ見捨てさせてもらった。 すまん、ハルヒ。 「そこかぁ!!」 「っ!しまった!」 「あっはっは、観念するっさ、キョン君!」 油断大敵……昔の人は本当にうまいこと言葉を作ったと思う。 短い逃走の末、あえなく俺も捕まり、SOS団アジトの文芸部室に舞い戻ることになってしまった。 「さぁ、キリキリ吐いてもらおうじゃねぇか?」 「冤罪だ、俺は無実だ、それは真実なき偽りだ」 SOS団に再度連行された俺は、屈辱的なことに捕虜のように椅子に括り付けられて座らされている。 目の前には谷口、国木田、鶴屋さんという俺の追っ手が仁王立ちして立っていた。 「無罪と言い張るか……じゃぁこの写真はどう説明する気だ?」 「証拠がある以上無罪とは言い切れないっさ!」 「そもそも、なんでそんな物を持っているのか説明していただきたい」 そもそも、なんで俺とハルヒの写真があるんだよ。 わざわざ撮ったやつは誰だ。 「あ、撮ったのは俺だ」 「お前か!谷口!?」 なんでわざわざこんなことを!? 「最近お前と涼宮の仲がいいように見えてな、悪いとは思ったがつけさせてもらった」 「あれ、谷口そんなことしてたんだ、暇だね?」 「うるせぇ!とりあえず、だ。さぁ、これはどういうわけか説明してもらおうか?」 くそ、逃げ場ないってことか……そもそも、俺がハルヒを家に招いたのって…… 「あぁ、そうだ!?」 「おや、キョン君、言い訳でも思いついたのかい?」 「言い訳じゃありませんが、説明はできますよ、鶴屋さん」 そっからの説明は若干長いようで短いので割愛するが、大まかには教えよう。 その日、俺は妹にハルヒを連れてきて欲しいと頼まれていたのだ。 どうやらあの野球の日以来、どういうわけか、妹はハルヒに懐いており、またハルヒも少なからず妹と言う存在に憧れていたのか、俺の招待に珍しく快く応じ、ウチに来たというわけだ。 手を引いていた理由は、家の目の前でハルヒがなぜかごね始めたために、やむなく手を引くことになったのだ。 「……なんでぇ、つまんねぇの」 「まぁ、キョンの事だからこんなことだろうとは思ってたけどね」 「おぉ、ハルにゃんこれで妹ちゃん公認の仲になったんだねっ!お姉さんは嬉しいっさ!」 ワイワイと、俺とハルヒを除いた全員が俺とハルヒを話のネタにして、異常ともいえるほどの盛り上がりを見せた。 曰く、 「涼宮さん、良かったですね」 「……良かった」 とか、 「これでようやく僕のアルバイトの回数も本格的に減りそうですね」 「今度は私も誘って欲しいっさ!妹ちゃんに会いたいからねっ!!」 なんてものあったし、 「ちくしょう、貴重なる俺の時間を返せっ!」 「それは自業自得だよ、谷口」 まぁ、これは別に気にする必要はないか。 そして、散々俺とハルヒ……主に俺をだが、からかったあとに自然と各自解散といった感じで、俺とハルヒを残して全員が全員去っていった。 「……台風、一過……だ」 「お疲れ様、キョン」 「いや、これで済んでまだよかったと思うぞ……」 実のところを言うのなら、妹の話題、半分は嘘だったりする。 ハルヒがウチに来た本当の理由は、ハルヒ自身が言い出したためだ。 なんでも、俺の部屋に興味があったらしい。 「お前も良く俺の考えてることが伝わったな?」 「まぁ、あたしが逆の立場だったとしても、そうするかなってね」 奇跡的とも言っていいくらいだが、ハルヒが赤くなり、SOS団のメンバーと話を始めるまでのほんの一瞬、俺とハルヒはアイコンタクトを成立させていた。 状況は俺が全て引き受けるから、お前は照れているフリをしていろってな。 「はぁ……とりあえず、あの写真とそのネガはどうにかして回収して燃やさないと……」 憂鬱だ、なんで本当に俺がこんな目に…… そもそも原因は谷口のバカだな、おかげでしなくてもいい苦労まで背負うことになった。 俺が背負う苦労はハルヒの分だけで精一杯だって言うのに…… 「そうね……あの写真とネガはあたしが回収しとくわ、その方が多分簡単にできるでしょ?」 「あぁ、そうしてくれると助かる」 「それにしても、コレはある意味ラッキーだったかしら?」 ……どういうことだ? こんな事態はとてもじゃないがラッキーだとは思えないんだが。 「だって、これからは妹ちゃんには悪いけど、キョンの家に行く理由付けが簡単にできるでしょ?」 「……また、来るつもりか?」 「あら、ダメな理由でもあるの?」 お前は、学校生活、土日の平穏な時間だけでなく、挙句の果てに俺の最高のプライベートスペースでもある家まで侵食してくるつもりか? これ以上侵食されたら、俺はいったいどこでくつろげばいいんだ。 「別にあんたの家に行ってまでSOS団の規律で縛るつもりなんてないわ、ただあたしがそうしたいだけよ」 「……そうかい、もう勝手にしてくれ」 「言ったわね?もう取り消しなんてさせてあげないんだからね!?」 ……俺、でかい地雷踏んだか? もしかしなくても俺は自分で自分の安息地帯を潰してしまったのかもしれない。 「じゃぁ、来週にまた行こうかしら」 「って、さっそくかよ!」 「あら、問題ある?」 ……やれやれ、今週もまた、俺はゆっくりできないらしい。 まぁ、この程度でこいつの笑顔が見れるならまぁいいかと考えているあたり、俺も大層SOS団という集団の中に染まってきているらしいな。 「……まぁ、それもいいか」 「さ、キョン帰るわよ!」 「はいはい、それじゃぁ帰りますか」 カバンを持って立ち上がり、ハルヒに向かって手を差し出す。 きょとんとしたハルヒの顔が、微妙に面白くてちょっと笑ってしまった。 「……?」 「ほら、行こうぜ?」 声をかけると、俺が好きな満面の笑顔になって腕に抱きついてきた。 「な、お、おい、ハルヒ?」 「ほら、さっさと行くわよ!」 「……やれやれ」 言っても離れなさそうなので、諦めてそのまま歩き出す。 片腕にかかるハルヒの重みが、別に苦痛でもなんでもなく、逆に心地よく感じているのはきっと気のせいだ。 そう、きっと気のせいだ。 後書き なんとなく、追われているキョンが見たくなって書いてみました。 いやまぁ、暴走してますね、谷口君。 あれですよね、世の谷口ファンの皆様すいませんorz とりあえず、基本的にキョンは流される確立の高いスタンスで行こうかと。 それでいてたまにイジワルになるならそれはそれでありかなーと。 それでわ、また、次回作にて。 From 時雨 2007/05/13 |