なにこれ、一体どうなってるの!? 今日は天気が良くて暖かかったし、春になったわねって思って、久々に気分良く学校にこれたって言うのに。 「何よ……これ……」 ホント、わけわからないわ…… クラスのみんなも、何か変なものを見るような目でこっちの方を遠巻きに眺めているし…… 「お、おぃ、キョン……?」 「ん、どうした、谷口?」 バカが、なけなしの勇気を振り絞ってキョンへ声をかけたんだけど、他の人への反応自体は普通なのよね…… じゃぁ、なんで、あたしにだけこうなるのよ……? 「でだ、ハルハル、今日は何をするんだ?」 「だから、そういう風に呼ばないで!」 「なんでだ?ハルハルって似合ってて可愛いと思うんだけどな?」 あり得ない! キョンが、曲がり間違っても、私に対して、こういう台詞を言うなんてあり得ないわっ! これは何!どこかのSOS団に敵対する組織の攻撃!? 「どうしたんだ、黙って、熱でもあるのか?」 「おわっ!?キョ……キョンがそんな大胆なことを!?」 意識をキョンから外していたのがまずかったのか、それとも、あたしが油断しすぎていたのか。 気づいたときにはキョンの顔があたしの目の前にあって、小さな頃親がやってくれた、熱を調べる行動……要するに、おでことおでこをくっつけ合わせるアレをされていた。 「―――――っ!?」 「……熱は、ないみたいだな」 「お、おぃキョン、本当にお前どうしたんだよ?」 「なんだ、谷口、俺がどうかしたのか?」 さすがに耐え切れなくなったのか、谷口……だっけ?がキョンに問いかけていた。 でも、そのキョンの対応の仕方は、いつものキョンで、なぜかあたしに対する対応だけがぜんぜん違ったものになっているっぽい。 「いや、普段のお前ならそんなことどころか、涼宮との極端な接触はしてなかっただろう?」 「……そうだったか?」 そうだったか?じゃないわよ! 普段なら、絶対やらないでしょ、あんた!! 「そうだったかもな、でも俺はもう目覚めたんだ、ハルハルへの愛に!」 「……キョン、お前もとうとう変な病気にでもなっちまったのかよ」 「病気だなんて失礼だな、俺はいたって正常だぞ。な、ハルハル?」 あたしに振らないで! ただでさえ現状をどうしていいかわかんないのに、余計な事に思考を振り分ける余裕はあたしにはないの!! 「いや、現状でお前、すげぇ異常だぞ……?」 「だから、俺は普通だって」 「……ちょっと、来なさい」 限界だった。 この状態を受け入れるような余裕はあたしにはなくて、とりあえず人目に付かないところに移動することにした。 「あぁ、ハルハルが行きたいところなら、どこへでも行くぜ」 こんなのキョンじゃない、っていうかキョンであって欲しくない! キョンは普段なら、あたしのやることを苦笑しながら宥めたり、時にはちょっと強引に止めてくれたり、そんなキョンがキョンだったはずでしょ!? 「黙って、来なさい」 「……つれないな、ハルハル」 あぁ、もーやだぁ! 「と、言うわけで、集まってもらったのは他でもないわ、このバカキョンに関することよ」 「彼に関すること……ですか?」 「キョン君がどうかしたんですか?」 急遽招集を掛けたSOS団のみんな、みくるちゃんや有希、古泉君はあたしがなにを言っているのかわからないという雰囲気で、キョンの方を向いていた。 「なんだ、みんなして俺の方を向いて……?」 「……別段、変わったようには見受けられませんが……?」 「私もです、キョン君がどうかしたんですか……?」 どうやら、みくるちゃんや古泉君には、今だこのキョンが正常に映っているみたいね…… 「……雰囲気が違う」 「そうよ、有希!その通りなのよ!!」 「……ここでもか、だから何度も言っているだろう、俺は普通だって」 あんたは黙ってなさい、という強い意志を込めた目でキョンを睨みつける。 でも、2人には今、あたしが何を言ったとしても通じなさそうね…… 「そう、見つめるな、ハルヒ。俺はいつもと変わらん、ただ、ハルヒへの愛に目覚めただけだ」 「…………」 「はわわ……」 あたしが、どう説明したものかと悩んでいたら、どうやらキョンは自分から、症状を暴露してくれた。 これで、2人ともあたしが言ってる意味が分かったでしょ。 「ね、変でしょ……?」 「確かに、普段の彼ならば言わない言葉を言いましたね……」 「キョン君、大胆ですぅ……」 みくるちゃん……あなたいっつもどこかズレてるわね…… と、とりあえず、古泉君の言うとおり、今日のキョンはおかしいわ!おかしいのよ!! 「彼のこの状態はいつから……?」 「あたしが学校に来たときから、もうこんな状態だったわ」 他の人に対する対応は普段と変わらなくて、あたしに対するときだけぜんぜん反応が違うのよね。 おかげで、あたしまでクラスに着いた途端変な目で見られたわ。 中にはあたしが何かキョンに変なことをしたんだっていう予測まで立てたやつもいたらしいし…… 「…………」 「……了解しました、涼宮さん、少々失礼します」 唐突に、有希と古泉君がアイコンタクトをしたかと思うと、古泉君があたしの視界を塞いできた。 一体何をする気? 「ん、どうした、長門……ぐっ!」 「な、ちょっとキョン!?どうしたの!?」 「……心配ない、少し、眠らせただけ」 眠らせただけって……どうやったのよ、有希…… 一瞬、すごい音がしたように思えたんだけど……? 「……気のせい」 「……そ、そう?」 気絶したキョンは、みくるちゃんが椅子を並べて、古泉君がその上に寝かしていた。 随分、行動が手早いっていうか、手馴れてるわね……? 「そんなことより、聞きたいことがある」 「……なによ?」 有希が、感情をほとんど表さない目であたしを見ていた。 その目に見つめられると、同性であってもドキっとするわね…… 「今のこの彼をどう思う?」 「へ?」 「涼宮さんは、今の彼のこの状態をどう感じていらっしゃいますか?」 今のキョンを……? そんなの、そんなの決まってるわ!! 「こんなキョンは嫌よ!確かに、いつものキョンはあたしのやることなすことに文句言うわ、止めてくるわで、正直ムカっと来るときもあるけど、やっぱりキョンはあれでなくっちゃ嫌よ!」 「……そう」 あたしの回答が満足いくものだったのかなんなのかはわからないけど、有希はその一言だけで、またいつもの定位置に戻って本を読み出した。 あれ……それだけ? どうしたらこのキョンが治るとかそういうのは教えてくれないの? 「……心配ない、目覚めれば全て元通り」 「そう、なの?」 「……そう」 有希が言うと、本当にそうなんだろうって納得しちゃうんだから、不思議な子よね。 ふと、視線を感じてそっちの方へと振り向いてみると、なぜかみくるちゃんと古泉君が、ニヤニヤといった雰囲気であたしを見ていた。 「いやぁ、お熱いですね、朝比奈さん?」 「そうですね、古泉君」 「な、何よ……」 本当に2人とも、ものすごく楽しそうにあたしの事を見ているわ…… や、やめてよね、すごいなんか、嫌な予感がするんだけど。 「普段の彼が良いですか……思われているものですね、彼も」 「いいことじゃないですかぁ、ねぇ、涼宮さん?」 「う……」 そういえば、考えてみると結構恥ずかしいこと言ったような気がするわ…… 「み〜く〜る〜ちゃ〜〜ん……」 「ふぇっ!?な、なんですかぁ……」 怯えてるわね……でも、今回だけは見逃してあげないんだからっ! 「忘れなさい!今すぐ!古泉君も!!」 「ふふ、了解しました」 あー、もうまったく、こんなことになるなんて、このあたし、一生の不覚だわ。 どれもこれも、変になったあのキョンのせいよ! 「……んっ」 「おや、彼が目を覚ますようですよ?」 「え!?」 「あれ……俺、なんでここにいるんだ?」 古泉君が言ったとおり、キョンが頭を押さえながら起き上がっていた。 ま、マズいわ、さっきの事思い出して、まともに顔が見られないじゃない! 「あれ、みんな勢ぞろいで、なにしてんだ?」 「おはようございます、お加減はいかがですか?」 「頭が軽く痛いが……って、なんでそんなことを聞く」 「別に理由はありませんよ。ですよね、涼宮さん?」 なんでそこであたしに振るのよ! あー、うー…… 落ち着きなさい、いつも通り行けばいいのよ! 「……キョン、よね?」 って、ぜんぜん違うじゃない! なにおどおどした良いかたしてるのよ、あたしはっ! 「何言ってんだ、お前は……悪いもんでも食ったか?変だぞ?」 「変だったのはあんたでしょーがぁ!!」 まったく、こっちが心配してあげてたっていうのに能天気なんだからっ! 「……なんなんだ?」 「なんでもないわよ!」 戻ったんなら別にもうどうでもいいわよ。 本当に……もう、心配させないでよね。 「ほら、まだ授業があるんだから、さっさと教室戻るわよ」 「うぁ、こら、ハルヒ!ネクタイを掴むな、引っ張るな!!」 「みんな、放課後はまたここに集合だからね!」 でも、あれもちょっと良かったなんて……絶対言えないわよね。 間違っても、キョンだけには聞かれるわけには行かないわ。 「なぁ、何があったんだよ、一体?」 「なんでもない!」 そう、絶対にね! 後書き はい、やっちゃいました、ごめんなさい。 書いてる途中でこっちが限界を迎えるという愉快なことが起きました。 うぁー、書いてて嫌な汗書いたの久々だよー。 次からは、通常?なハルキョンに戻しますよ! 俺の遊び心が暴走しない限りはねっ!! それでわ、また、次回作にて。 From 時雨 2007/05/21 |