さて、行動は迅速に、かつ慎重に行わなければなりませんね。 僕達が倒すべき相手は判明しました。 ただ、少々面倒なことは、皇という人物はそれなりの地位にいるということでしょうか。 「ですが、手がないというわけでもなさそうですね」 こんなことを言うと、彼からするのならば僕らしくないかもしれませんが…… ――――嫌いなやつがそれなりの地位にいるのならば、それよりさらに上に行ってしまえばいい。 ただ、それだけの話です。 幸いなことに、僕は最前線のところで様々なことを手助けさせていただいている身ですから、周りとの繋がりは、予想以上に強いのですよ? さぁ、覚悟していただきましょう。 The melancholy of Haruhi Suzumiya
超能力者は、活動する
Second Story from Sigure Minaduki 「こんにちは、鶴屋さん」 「おやぁ、珍しいお客だねっ」 彼女がそうおっしゃることも無理はないでしょう。 僕……古泉一樹が鶴屋さんへ訪問するなど、今まで類を見ないことですから。 「少々思うところがありまして、よろしければお時間を頂いてよろしいでしょうか」 「私だけかぃ?」 「できるのでしたら」 朝比奈さんに話しても構わないのでしょうが、恐らく不測の事態が発生したとき、朝比奈さんだけでは失礼ながら適切な対応がこなせるとは思えません。 だからこそ、彼女の少なからず親しい位置におり、さらに社会的にも擁護可能な存在である鶴屋さんには協力を要請しても問題ないでしょう。 心苦しいのは、彼女は仔細を知らない一般人であるのに、巻き込もうとしている……ということですが。 「ちょっち待って欲しいっさ。みくるー!ちょっち行って来るにょろ!!」 「あ、はぁい、行ってらっしゃい」 一瞬、朝比奈さんと目が合いましたが、こちらが目を伏せ軽く首を振ったことによって、介入すべきではないと判断していただけたようです。 「それじゃ、行くにょろ!」 「では、こちらへ」 鶴屋さんを連れて訪れたのは、学校内の食堂。 その一角を借り受け、席に座る。 「それで、私に話っていうのはなにかなっ」 「その前に、少々長くなりそうなのでお飲み物でもお持ちしましょう」 先をせかす鶴屋さんには申し訳ないが、少なからず時間を頂くことになる。 ならば、こちらとしては失礼のないようにしなければなりません。 「どうぞ、コーヒーでよろしかったですか?」 「うんうん、構わないよっ」 「それでは、申し訳ないが、聞いていただきましょう……僕達の、今の状態を」 直接的なことは伏せておき、代わりに当たり障りのない情報を鶴屋さんの方へ提供する。 例えば、彼と涼宮さんの仲がよろしくない、や、そのせいで朝比奈さんが混乱気味である、などのことを話し、最後になにやら不穏な動きがあることも伝えておく。 そして、面識がある彼の妹さんを影ながら守っていただけないか、と尋ねる。 「なるほどなるほど、君の様子だと、その不穏な動きには心当たりがありそうだけど、詳しくは話せないって所かなっ」 「…………」 「勝手に補足すると、恐らくだけど、みくるや妹ちゃんにも被害が及ぶ可能性があるってことさね?」 「……御明察恐れ入ります。お察しの通り、少々難しい事態が発生しており、詳しくは申し上げられません、下手に話してしまうと貴女も巻き込むことになってしまうかもしれないからです」 僕の回答に満足したのか、鶴屋さんはいつものように快活な笑顔を浮かべてくださった。 「うん、それじゃぁわたしはみくると妹ちゃんを守ればいいのかなっ」 「では……ご協力いただけるのですか?」 「みくるは大事な友達だし、妹ちゃんはキョン君の大事な妹ちゃんだからね!万事お任せにょろ!」 それじゃ、早速準備に入るっさ!と、言い残して鶴屋さんはどこかに走って行かれました。 少しだけ、身体に入っていた力を抜く。これで、一つ目はクリアしたと考えましょう。 最低でも彼の妹さんの安全を確保しておきたい。 だからこそ家柄もある鶴屋家の協力を求めたのだ。 「さて……次は、『機関』の方ですね」 携帯を開き、新川さんへプライベートコールをかける。 さて、今日もまた学校を早退することになりそうですね…… まぁいいでしょう、学業よりも、今は此方の方が大事ですから。 「もしもし、新川さんですか?えぇ、お願いします。はい、すぐに行動に移ります」 「……失礼します、古泉一樹です」 「どうぞ、入りなさい」 新川さん達一部の協力者によって連絡を取り付けてもらい、なんとか面会にまでたどり着く事ができた人物。 「本日は、貴重なお時間を頂き、ありがとうございます」 「そう堅苦しくなることはありません、気を楽にしておいてください」 そう言われ、下げていた頭を上げる。 そこにいるのは、機関の幹部陣の中でも、一際部下からの信頼度の高い人。 機関の実質的なNo,2と言えるような妙齢の女性だった。 「真に勝手ながら上申に参りました」 「話は新川から聞いております……我々からそういった者が出るとは本当に、悲しいですね……」 「それについては、同感です……」 ですが、今回に関してはそれを上回るほどの怒りを感じています。 だからこそ、無理を通してでもこのお方との連絡を取っていただいたわけですが。 「身勝手なお願いとは存じております、ですが、今回に限ってでもよろしいのです、どうかご協力をください」 そう言い、再び頭を下げる。 「結果によっては、僕に責任を総て負わせ、追放してくださっても構いません、僕は……彼と涼宮さんを守りたいのです」 頭をあげ、女性の瞳を真っ直ぐに見つめる。 この思いに偽りはない。 だからこそ、その思いを少しでも相手に伝えられるように。 「……良い目です。本当に、お友達を大事に思っているのですね」 「はい……かけがえのないものだと、思っています」 僕の台詞を聞き終えた女性は、目を閉じ、深く何かを考えているように見えた。 いや、実際はどうなのかわかりません。 もしかすると、すでに皇の手が伸び、この場で僕が取り押さえられる事態もありえるのだから。 「いいでしょう、今回の件はあまりにも度が過ぎていると判断できます」 「……と、いうことは」 「私の、神代の名において、古泉一樹の提案を正当と認めます」 「……ありがとう……ございます」 今まで張り詰めていた緊張の糸が、少しだけ軽くなったような気がしました。 女性……神代さんに協力をいただけるのならば、とてつもない安心感を覚えられる。 「少し、気を張り詰めすぎていたようですね、今日はゆっくりお休みなさい」 「いえ……まだ僕にはやることが残っておりますので」 僕側の最大の協力者はできた、しかしそれをまだ彼や、長門さんには伝えていない。 彼は……恐らくもう僕以外の機関の者が尋ねたとしても、聞き入れてはくれないでしょう。 友人としての僕は、なんとか信用していただけたようですが。 「大丈夫ですよ、彼の者に関しては、こちらで影ながら行動制限をかけます。暫く表立って行動することは不可能になるでしょう」 「ですが……」 「急いては事を仕損じます。今は、休息を取りなさい……」 「……はい、失礼します」 そうですね…… 急いて事を仕損じた時のリスクを考えると、今は休みましょう。 そして、少し休んだら、すぐに行動に移るとしましょう。 「少しずつ、こちらの体制は整ってきました……準備としては……あと、もう少しでしょうか」 こちらの態勢さえ整えば、すぐにでも行動に移したい。 ですが、そうも行きません…… 最終判断をするのは、僕でも長門さんでもなく、涼宮さんと彼です。 「彼らの為にも、僕のできることを、頑張りましょう」 とりあえず、待っていてくれた新川さんの運転する車に乗って、僕は自分の家に戻った。 神代さんに言われたとおり、今はひと時の休息を得るために。 「こんにちは」 「…………」 翌日、登校してから早々に部室の方へ顔を見せると、やはりといいますか、そこには長門さんがいました。 「涼宮さんの様子は……?」 「朝比奈みくる達と共に行動している、現状で襲撃の可能性はない」 どうやら、さっそく鶴屋さんが行動に移ってくれたようですね。 「そうですか……こちらの方では最大の協力者を得る事ができました」 「……そう」 「こちらは、いつでも行動可能です。彼の方はどうですか……?」 そう問いかけると、長門さんは呼んでいた本からこちらに目を移し、すでに予定されていたかのように話してきました。 「彼は現在何事もないように活動中、いつでも動ける状態にはなっている模様。涼宮ハルヒの内情は不安定、恐怖感が先立ち誰かと共にいることを求めている。現在は実家に帰宅せず、私の家に泊まっている」 「なる、ほど……」 確かに、長門さんの家に泊まるのならば、下手な護衛がつくよりも頼もしいでしょう。 「そうですね……何か動きがあったら教えてください、それまでにこちらの方でも準備を終わらせるようにしておきます」 「わかった」 さぁ、何かが起こる前に総ての準備を終えてしまいましょう。 彼と、涼宮さんが気兼ねなく過ごせる時間を作るために。 相変わらずさくさくと進めてます。 勢いこそ総てです、他は多少は踏み倒していきます。 とりあえず、少しずつやられ役を追い詰める算段を周りが立てています。 最後に古泉とどうしようかなぁー さてさて、次はどうしたものか。 相変わらず時間軸を無視というか、それぞれのキャラにそれぞれの時間軸です。 結構混乱をさせてしまうかもしれませんけど、大丈夫だっただろうか。 ま、とりあえずは頑張っていきますかぃのー と、いうわけで、次回につづきます。 From 時雨 2007/12/09 |