最近になってなんですが、気づいた事があります。
普段の学校生活では大きな変化はないんですけど……


「鶴屋さん……よく私や涼宮さんといますよね……?」


古泉君が何か鶴屋さんとお話した後から、私の気のせいじゃなければ鶴屋さんが私や涼宮さんと一緒にいることが増えた気がします。
これって、やっぱり偶然なんかじゃないんですよね……?



























The melancholy of Haruhi Suzumiya

未来人に、出来ること

Second Story from Sigure Minaduki




























「おっはよーぅ、みくる!!」
「あ、鶴屋さん、おはようございます」


朝、早くもなく、遅くもなくといった、普通とも言える時間帯に学校へと向かうのが私の日課なんですが、この日も、鶴屋さんが私を待っていたかのように合流しました。


「相変わらずみくるは朝早いねぇ、関心関心」
「そんな、鶴屋さんも早いじゃないですか」


記憶に間違いがなければ、鶴屋さんのご自宅は、私の家からはそう近い位置にはないはずです。
なのに、なぜか鶴屋さんは私の通学路で確実と言ってもいいほど待っていてくれます。


「鶴屋さんの家から私の家まで来るの、大変じゃないですか?」
「いやいや、全然問題ないっさ!こう見えても鶴にゃんは足腰が丈夫なんだにょろ」


そう言いながら、片足を上げて膝を叩いてニコニコと笑いながら叩いています。
あ、でも鶴屋さん……


「だ、ダメですよ、スカートでそんなことしちゃあ」
「大丈夫大丈夫!こんな時間で見てる人なんていないし、第一この程度じゃ見えないっさ!」
「そういうもんだいじゃないですよぉ……」


ここまで快活に言われると、私が何か間違ってるんじゃないかって気になっちゃいます。
でも、めげません。


「それじゃ、ぱぱっと行くっさ!」
「そうですね、行きましょうか」


談笑しながら、一緒にゆっくりと学校への道を歩いていくのは、ちょっと前まで一人で学校に行っていたときを考えるととても楽しいと感じます。
ですが、唐突に鶴屋さんが笑顔から一転して、真面目と感じられる表情になりました。


「みくる、ちょっと走れるかぃ?」
「え?」
「そのまま、合図したら一気に走るっさ」
「あ、はい」


どういうことかわかりませんが、普段見せることのない鶴屋さんの表情で、何かただ事ではないと感じ取り、運動が苦手な私でも、走るための準備をこっそりと進めました。


「……ダッシュ!」
「へぅっ!」


ちょっとだけ、かっこ悪い言葉が出ちゃいましたけど、気にしないようにしちゃいます。
だって、恥ずかしいじゃないですか。


「……ち、感づかれたか」


走りだした瞬間、誰か男性の呟きが聞こえたような気がしたのは、気のせいなんかじゃないと思います。
その声は、聞いただけでどこか嫌な気持ちにさせる声でした。


「つ、鶴屋さん、どこまで走ればいいんですかぁ」
「……うん、まぁここまで来れば大丈夫っさ!!」


少しだけ走って、周りに同じ制服を着た方がいっぱい見えるところまで来て、鶴屋さんはようやく走るスピードを落としてくれました。
はふぅ……運動が苦手なのも考えモノです……
運動、した方がいいんでしょうか。


「あれから全然経ってないけど、なりふり構ってられなくなったってことかな……」
「え?」
「うんにゃ、こっちのことっさ!」


確実に、鶴屋さんは私に対して何かを隠しているのはわかりました。
でも、今私が聞いても答えてくれないでしょうね……


「さて、それじゃぁ張り切って今日も学校頑張るにょろ!」
「そうですね」


とりあえずは、今日の学校生活を頑張りましょう。
遅かれ早かれ聞くことにはなると思っていますから。
きっと、鶴屋さんもその時に話してくれるでしょう。
























「さ、て、と、みくるーちょーっといいかな?」
「はい、なんですか?」


ちょっとだけ大変な授業も無事に終わり、放課後になった瞬間、そう声をかけられました。
声のした方を見ると、鶴屋さんと古泉君がそこに立っていました。
珍しいですね、古泉君が鶴屋さんと一緒にいるなんて。


「お待たせしました」
「いえいえ、お呼びしてすいません」
「はいはい、積もる話は後にして、とりあえず移動するにょろ」


古泉君と挨拶していると、鶴屋さんがちょっとだけ強引に笑顔で私たちの背中を押して移動を促されました。


「どこに行くんですか?」
「そうですね……女性がお二方がいることですし、喫茶店などいかがでしょう?」


古泉君は、少しだけ考えるしぐさをすると、思いついたのかそう提案してくれました。
喫茶店ということは、私たちが普段利用しているところでしょうか?


「お、ってことは美味しい店を知ってるってことかぃ?」
「えぇ、味は保障しますよ」
「それは楽しみだねっ!」


行きとは違って、一人増えての移動でしたけど、それはそれで楽しい時間を過ごせたと思います。
鶴屋さんが冗談交じりで言うことに、古泉君が冷静ながらも面白く返してくれるのを聞いているだけで、ゆっくりとした時間が流れているように感じられましたから。


「さて、朝比奈さんはそろそろ感付かれていらっしゃるかと思いますが……」


喫茶店について、飲み物を注文した後、古泉君はそう切り出してきました。
感付いている……ということは、恐らく私の感じたここ数日のことで間違いないと思います。


「鶴屋さんが、よく私と涼宮さんと一緒に行動していることですね……?」
「その通りです、僕から鶴屋さんにお願いしまして、そういった行動を取っていただいています」


私の疑問は、確信として考えてよかったようです。
古泉君が鶴屋さんにそう頼んだ理由、それはやっぱりアノ事でしょうか……


「ごめんねぇ、みくる、言っても良かったんだけど、鶴にゃんじゃ良い言い方が思いつかなかったさ」
「いえ、大丈夫ですよ、鶴屋さん」
「朝比奈さんも原因に心当たりがついているかと思いますが、今回僕がこういう行動を取ったのは、例の事です」


……やっぱりですか。


「……なんとなく、そんな気はしてました」
「今後、朝比奈さんの方にも魔手が伸びる可能性があります……現に今朝も鶴屋さんが不審な男を目撃したようなので……」


だから、朝唐突に走りだそうなんて言ったんですね。
私には全然気づけませんでした、やっぱり鶴屋さんはすごいです。


「多分、今日だけっぽぃね、他の日もみくると一緒に登校したけど、行動に出たのは今日が始めてだったからね」
「……悪い意味で予想通りと言ってしまえば、それまでですね」
「あの……私はいいんですが、涼宮さんは大丈夫なんですか?」


今日始めて強行的な行動に移ったということは、涼宮さんの方にも危険が及ぶんじゃ……?


「その点については問題ありません、涼宮さんには長門さんが付いてくれてます、よほどの事がない限りは安全は保障されてると言っても問題ないでしょう」


長門さんが付いてくれてるんですね……なら大丈夫ですね、ちょっとだけ長門さんは苦手ですけど、心強いのには間違いありませんから。


「それで、今日ここに朝比奈さんを招いたのにはもう一つ理由があります」
「……なんですか?」
「失礼ながら“上”から連絡は何かありましたか?」


隠喩として表現されましたけど、古泉君が言う『上』は恐らく未来からの情報のことでしょう。
残念ですけど、私のほうに一切の連絡は来ていません。
今回のことは、未来からは問題として取るまでもないということになるんでしょうか?


「特に、何も聞いてません」
「そうですか……鶴屋さん、申し訳ないのですが、もう暫くはお願いします」
「もちろんっさ、みくるは鶴にゃんの大事な友達だからねっ!」


また、私はお役に立てなくて、守ってもらってしまっています。
……私も、涼宮さんたちの力になりたいのに、できることは何もないんでしょうか。


「あ、あの……古泉君」
「なんでしょう?」
「わ、私に出来ること、なにかありませんか!」


このまま、関係者であるはずなのに、何も出来ないのは嫌なんです。
私だって、涼宮さんやキョン君、長門さんや古泉君たちと同じ、SOS団の一人なんですから。


「……ふふ、そうですね。それじゃぁ僕にはできないことを、お願いしてもいいですか?」


また、少しだけ古泉君は考えるしぐさをして、何かを思いついたのか、私に向かって笑顔でできることの提案をしてくれました。
それは、私にとっても本当に簡単で、でもやりがいを感じさせることで。


「はい、是非やらせてください!」


私は、笑顔でそう返しました。
だって、涼宮さんや長門さんとできるだけ一緒にいて欲しいなんて、そう言ってくれるのは嬉しいじゃないですか。
何も出来ない私ですけど、涼宮さんと一緒にいてもいいのなら、そんくらいいくらでもお手伝いしちゃいます。


「それじゃぁ、鶴にゃんもその集まりに混ざっちゃうさ!女の子同士で仲良くお泊り会だねっ!」
「そうですね、きっと面白くなります」
「それでは、僕はこの辺で失礼します、ここの支払いは済ませて起きますので、お二人でゆっくりしていってください」


伝票を持って、会計を済ませると古泉君は喫茶店から出て行きました。
あぅ……結局ケーキと飲み物を奢ってもらっちゃいました……
私の方が一応年上なのに……


「あはは、紳士だねぇ。それじゃみくる、私たちもそろそろはるにゃんと長門っちの所に向かおうか」


古泉君が帰ったあと、少しだけ鶴屋さんと談笑して、私たちは移動を開始することにしました。


「はるにゃんたちの所に行く前に、何か買っていこうか!」
「それなら、紅茶とかがいいんじゃないですか?」


喫茶店を出てすぐ、何かを買ってから行こうっていう話になって、私たちは極力人通りの多い道を通って商店街に向かいました。
涼宮さんたち、何がいいのかな?


「つ、鶴屋さーん、それは買いすぎですよぉ」
「あっはっは、もうちょっとあってもいいんじゃないかな?」

でも、鶴屋さんみたいに、目に付くものを買い込もうとするのだけは、絶対止めて見せようと思います。
……できる限り。



















管理人が動かしやすい人物、それは古泉(ぁ
とりあえず、書きやすいので古泉に説明とか陰のストーリー進行やらせてます。
そろそろ次は長門とキョンにスポット当てて、最後のほうでハルヒをちょこちょこかなぁ?
結局勧善懲悪な思考を持つ時雨なので、敵役はいろいろと悲惨な目に存分にあってもらいます。
そのための下準備を、ごそごそと進めましょーぃ。

と、いうわけで次のスポットは長門です。
でも、長門の台詞って難しいから苦手なんですよ!
ま、頑張りますけどね!

と、いうわけで、次回につづきます。

            From 時雨  2007/12/17