祐一「おっしゃぁ!」 北川「いっちょっ!」 祐一&北川『やったるか!!』 香里「……変なところで息がぴったりね。」 舞 「はちみつくまさん……」 こうして祐一達は林の中から聞こえた雄叫びに向けて走っていった。 ![]() 林の奥には木々に囲まれた広場のようになっていた。 その中心には何か犬のような形をしたモノがいた。 北川「…“あれ”だよな。」 香里「えぇ、そうでしょうね。とても犬や狼には見えないもの…」 舞 「…実力が掴めない。」 祐一「………(なにか嫌な予感がする…)」 その場にいたのは大型犬よりももう二回りほど巨大な異形だった。 その足下に散らばっている肉片はこの公園にいた動物たちのなれの果てだろう… 無惨にも食いちぎられ、その場に無造作に散らばっていた。 北川「ちくしょう…罪のない動物たちを…」 舞 「……あいつは絶対に斬る」 香里「試しにあいつはあたし達だけでやるわ、相沢君は下がってて。」 突然何を思ったか香里がそんなことを言い出した。 祐一の方も、まだ何かの力を隠していそうな異形相手に黙って見ていろなどと、そんな要求を素直に聞けるはずはなかった。 祐一「それはダメだ。あいつを見たときから嫌な予感がしてるんだ。」 北川「は、それはそれは。面白そうじゃねぇか…」 香里「えぇ、腕が鳴るわ…」 うわ、めちゃくちゃ燃えてるし… 舞 「…祐一、できるだけ私がサポートするから…」 祐一「……ふぅ、言い出したら聞かないか… 舞、あいつ等は戦闘になるときっと周りが見えなくなる。だから舞が出来るだけのサポートしてやってくれ…」 舞 「……はちみつくまさん」 北川達を相手に戦える戦士が少ないせいもあるのだろう、極端にこの2人には異形に対する…いや、自分より強いかも知れない敵に対する恐怖心がわかっていないのだ。 討伐隊で対処する異形はせいぜい中の下、北川達が倒せる程度の相手でしかない。 一方舞は、上級の異形と大立ち回りを演じたことがあるという噂がある。そのために恐怖や、相手に実力との差を感じたときには真っ先に戦闘から離脱するという行動を考えることが出来る。 彼らの違いは絶対的な異形との戦闘経験の差であろう。 祐一「(今のままじゃ危険すぎる、でもこいつ等を説得する方法なんて浮かばない…)」 舞 「……祐一、任せる。」 祐一が考えている内に、北川と香里は異形めがけて走り出していた。 それを追うように舞も駆けだそうとしたが、すぐに向き直り祐一の考えを読んだかの如く話しかけ、再び駆けだした。 祐一「…舞に考えを読まれるとはな…」 幼い頃から戦闘に対する転生の才能を持っていた舞は、周囲から異端児としての接し方をされていた。 それは幼い子供の精神には耐え難いモノばかりだった。それは舞の心に深い傷跡を残した。 だが、その傷を優しく包み込む存在が現れた。それが幼い頃の祐一である。 彼もまた、異形との契約をする家系に生まれてしまったために周囲から畏怖の視線を受けていた。 舞の受けた傷を心からわかることができたのが祐一だった。 その時の祐一との出会いから舞は少しずつ変わっていく… 周囲の視線が尊敬に変わるくらいの働きや功績を次々挙げていった。 そして、今や王族直属の騎士を務めるまでに成長した舞に、祐一は優しい眼差しを向けていた。 しかしそれは過去に祐一との出会いがあるからこそ、この今の舞がいるのである。 北川「食らえ!古代の兵器、『ショットガン』」 ドン!! 祐一が考えこんでいる内に戦闘はすでに始まっていた。 北川が異形に向けた筒のような物から、祐一だからこそ追えるほどのスピードで黒い塊のような物が飛び出した。 それは1つだったのものが途中ではじけ、無数の塊になって異形に突き刺さった。 「グガアアアァァァァ!!」 異形は突然自分の体に走った痛みに声を上げた。 そしてすぐに北川達に気が付くと、攻撃を仕掛けようと向かってきた。 香里「あんたの相手は彼だけじゃないわ!美坂流無双剣、双牙!」 「ガアアァァァ!?」 しかし、すでに異形の横に走り込んでいた香里の攻撃をくらい、異形は勢いよく横に吹き飛ばされた。 北川「まだまだ、『マシンガン』」 ショットガンと呼ばれたモノは北川の新しい言葉と同時に発生した魔法陣のようなモノを通り、再びその形状を変えた。 ドガガガガガガガガ!!!! 今度は塊が凄いスピードで休むことなく異形に黒い弾幕の雨を降らせた。 「グオオオォォォォ!!!」 あたりは異形の悲鳴と砂煙が覆われた。 その中には香里と北川、そして2人の攻撃をある程度の距離を置いて戦局を見ていた舞が立っていた。 祐一「…はぁ、北川も香里も結構やるもんだな。このままじゃ、舞は出番無しか?って…!北川!避けろ!!」 北川「は?相沢、何言ってん…」 ドスッ!バキッ! 突然北川が吹き飛ばされ、この世のモノとは思えぬような音が響いた。 北川のどこかの骨が折れたのだ。 香里「きた…がわ…くん?北川く……きゃあ!」 ドカッ! 北川に駆け寄ろうとした香里も一瞬のうちにはじき飛ばされ、樹に激突して気絶した。 お互いに何が起こったかわからないままだろう。 舞 「!?……許さない!!」 香里がいたところにいたのは、先程まで攻撃していた異形だった。 しかし、その姿は変化していた。更に巨大化していたのだ。 「くくく…まさか不意打ちとはいえ、この私に攻撃を当てられる人間がいたとはな。…面白い。」 舞 「…斬!」 「くははは!きさま、このフェンリル(※1)と戦うというのか?…愚かな人間め、その命をもって知るがいい!!」 祐一「フェンリルだと!舞!止めろーー!!」 ガキン! 舞の放った一撃は人間が受けるには強力すぎる、異形でもそれなりのダメージは受ける…はずだった。 しかし、フェンリルと名のった異形は上級の異形の中でも上の方に属するであろう実力があるのだ。 舞の一撃をいとも簡単に隻腕で防いでしまった。 このような強さの敵との戦闘は普段の舞なら戦わず、逃げる道を選んだろう。 だが、今は香里や北川、自分に親しい者がやられてしまったために逃げるという選択を失っていた。 「ふん…こんな脆弱な攻撃で我に刃向かうとは…くだらん!!」 舞 「!?…ぐっ!」 異形はもう片腕を軽く動かし舞の腹に撫でるように当てた。 すると舞はまるで思い切り殴られたかのような衝撃を受け、それに耐えきれず吹き飛んだ! 祐一「舞!大丈夫か!?」 舞 「…だ、大丈夫…まだやれる」 攻撃が当たる瞬間舞は後ろに飛んでダメージを軽減していた。 舞の言うとおりさほどダメージは受けてはいないだろう。 祐一「舞、あいつはお前達だけで相手をしていられる敵じゃない…2人で同時にかかるぞ…」 舞 「……はちみつくまさん」 祐一「と、いうわけだ…行くぞ…空絶!」 空絶「(あぁ、いつでもいけるぞ…)」 舞はツルギを構え直し、祐一は空絶を抜いて臨戦態勢に入った。 フェンリルは祐一達がどうでるのか見るつもりなのだろう、構えすら撮ってはいないかった。 祐一「……行くぞ!」 祐一の声を合図に2人は一気に加速し、一直線にフェンリルに向かっていった。 祐一「はあぁぁ、りゃぁ!!」 舞 「……せい!」 ガッ! 祐一「ちっ…」 「ふん、まだまだ遅いな…そこの女の方が早いようだな…では…貴様から血祭りに上げてくれる!!」 舞 「!?…くっ」 祐一達の攻撃は当たる直前に防がれた。 その一撃から判断したのだろう、フェンリルは舞に狙いを定めた。 「死ね!」 舞 「……!?」 狙いを定めたフェンリルのスピードは凄まじかった… 一瞬で舞の背後を取り、前方にはじき飛ばした。 攻撃が当たる直前に舞は防御の態勢を取ったが、耐えきれずはじき飛ばされ樹に激突した。 油断していた祐一は、舞が飛ばされたのだと言うことを理解すると、舞に向かって駆けだした。 祐一「すまん、舞!大丈夫か!?」 舞 「ハァハァ……気にしないでいい…ま、まだやれるから…」 そう言ってはいたが、明らかに辛そうなのが目に見えてわかった。 樹に強く身体を打ち付けた時に身体のどこかを痛めたのだろう。 このまま動けば怪我が悪化してしまうかも知れない… そう考えた祐一は舞をこれ以上戦わせないようにと、あまり使いたくなかった魔法を唱えた。 祐一「身体を強く打ち付けたんだろ…下手したらこれからの生活に支障がでるかも知れない…今は…今だけは回復に専念してくれな………平穏なる眠りを、『スリーピング』(※2)」 舞 「!?ゆ…祐一?なに…を…」 祐一「これ以上俺の友達を傷つけさせるわけには…傷つけたくないんだ……」 強制睡眠の魔法… 人の意識に関係なく眠らせることが出来る魔法だが、使用させる人物を選ぶ必要がある… 悪用されれば大事件も起こりうるからだ… 「くくく…仲間を眠らせたか、自分から小さな戦力を削ぐとは…お前はたいした愚か者だな!まぁ、あんな雑魚が何匹来ようと我には勝てんわ!!」 祐一「!?……てめぇ…今、なんて…言いやがった…」 「クハハハ!!なんどでも言ってやる!あいつ等は雑魚だ!もはやチリにしか見えん!!」 祐一「その言葉…お前の死をもって後悔させてやる…」 異形の挑発は、祐一に対する侮辱、そして闇の力を持つ祐一を優しく受け入れてくれた親友達に対する侮辱だった。 その言葉は祐一の力を引き出すには十分すぎた。 祐一の背中から鈍く光り輝く銀の翼が現れた… 「ん?なんだ貴様…我らと同じ『闇』の匂いがする…この匂いは、たしか…ルシ…!?」 祐一「ほぉ…さすがに犬に似てるだけあるじゃねーか。わかったみたいだな…」 「な、なぜ!あなたのようなお方がそんな脆弱な人げ……!?」 ザシュッ!! 全てはその一瞬で決着がついた… 祐一が空絶を構え1歩動いた瞬間、異形の体には無数の線がはいっていた。 祐一「空海流剣術 『 瞬絶斬 』」 「ウギャアアア!!な、なぜ我が…我の身体が斬れているんのだ〜!!」 空戒から習った剣術、その一つが今の瞬絶斬である。 並の使い手が見れば一歩進んだだけに見えるが、実際は目に見えぬ早さで敵を切り刻む技である。 技が洗練されると敵は斬られたことに気づくことがない。 祐一「…てめぇは言ってはいけないことを言い過ぎた…もう二度とこの世に存在できると思うな!!我の内に秘めし闇、いま此処にとき放つ。永遠に消え去るがいい!!『ディスパランス!』(※3)」 「グア…グギャアア!!こ…このま…魔法はま……まさか禁術!?」 祐一「ふん、随分と無駄に知識があるようだな…まぁ、もういらなくなる知識だろうがな…」 「ウギャアア!!我、我の存在が…消え…る…た、助けてくれ!!」 祐一「……消えろ」 祐一の言葉が決め手だった。 フェンリルと名のった異形は跡形もなく消え去った。 あとに残されたのは刀を持ってたたずんでいる祐一、気絶し倒れている舞達だけだった。 祐一「!…そうだ!舞達が!」 祐一が駆けつけてみると、重傷だったのは北川だけだった。 舞と香里は打撲と軽傷。北川の場合は肋骨が2本折れていた。 祐一「北川のこれはちょっとまずいな…聖の魔法はかなり苦手なんだが…癒しの光よ、我が手に集い、彼の者達の傷を癒せ。『ヒール』(※4)」 北川達の周りを柔らかな光が包んだ。 すると切り傷や擦り傷が徐々にふさがっていった。 祐一「ふぅ…これだけ出来れば上出来だな。多分北川の骨もくっついてはいるだろうし…まだもろいけど…」 祐一の属性は『闇』である、そのために対局に位置する『聖』の魔法は極端に苦手だったのだ。 祐一「しっかし…空絶。あれだけ強い奴がいたんならそう言ってくれ…」 空絶「(…すまぬ、気配は感じたのだが実力までは感知できなかった。)」 祐一「ま、みんな生きてるからまだマシだよな…」 上級の魔物の中にはルシファーのような平和主義者は多くはない、しかし大抵の異形は破壊と殺戮の権化として、本能のままに活動している。 生きとし生けるものを全て消そうとする奴、ただ殺戮を楽しむ奴… 今回のフェンリルが丁度良い例となっただろう。 祐一「はぁ、これからどーすっかな…どうやって運ぼう…」 そんなことはわかっているのかいないのか、祐一は気絶している3人をどうやって家まで運ぼうか、と言うことで頭の中が一杯であった。 しかし、そんな祐一の体調にも多少の変化が現れた。 グラァ… 祐一「やばい…力を解放しすぎたのか…身体が…解放量に…耐え…切れ…かった……」 いくら異形との契約で身体能力が増したとしても、所詮は人間の身体である。 ルシファーのような強大な者の力を制御するのにはまだ耐えられなかったのだろう。 極度の疲労感と、睡魔が祐一を襲ったのだ。 ガチャガチャッ 空絶「(…主よ、人間が近づいてきているが。)」 祐一「…くそ、まだ眠るわけには…いかないのに……ダメっぽいな……」 祐一「(力の制御はちゃんと出来るようにならねぇとな…)」 どさっ! ついに祐一は睡魔に耐えきれずその場に倒れた。 その後にすぐ、武装した討伐隊の兵士が現れた。 「さっきの悲鳴はここら辺からのはずだ!!」 「おい、あそこに倒れているのは隊長と副隊長、それに王宮直属の騎士様じゃねぇか!?」 「あ!本当だ!もう一人銀髪の奴も倒れているぞ!?」 「全員意識がない!急げ!医療班に連絡を取るんだ!!」 『了解!』 意識を失っていた祐一達は討伐隊の面々により、医療班のある討伐隊本部へと運ばれた。 翌日、祐一はやわらかな日の光によって目が覚めた。 そして、祐一の目に飛び込んできたモノは…… 舞 「ぐしゅぐしゅ…祐一…生きてた…」 北川「……悪いな…足ひぱっちまって…」 香里「ごめんなさい…私たちが自分の力を過信したばかりに…」 泣き顔の舞、沈み気味の顔をした北川と香里、そして… 秋子「祐一さん、無理をしないでください…」 少し怒った顔をした秋子だった。 用語解説 1・フェンリル 動物(犬系)の身体を持つ異形。 身体能力、知性がそれなりに高く。ゴールデンレトリーバーを二回り大きくしたと言っても良いだろう。 普段は弱い異形の振りをして他の者を騙し、不意打ちを仕掛けるのが戦闘パターンである。 祐一の逆鱗に触れ、瞬殺された悲しい運命の奴…(哀れ… 2・スリーピング どの属性でも、誰でも使える基本魔法の1つ。 だが、悪用される危険があるので、この魔法を教えている人は人を選ぶ。 相手を眠らせることで防御力は0になるが治癒力や抵抗力を一時的に強くすることが出来る。 ただし眠っている間は無防備になるので、強力な仲間がいるときにのみ使われる。 もしかすると名雪の得意な魔法かも知れない…(汗)いつも寝てるしね… 3・ディスパランス 禁術の1つ。 この魔法はよほどの魔力と実力、経験が必要。 ターゲット1体の肉体だけでなく、魂までも消滅(消失?)させるので転生は不可能。 あまりに強力なので封印されていた。 4・ヒール 『聖』属性の得意技。治癒の魔法である。 治癒と言っても2種類有り、1つは自然治癒力を高める。 もう一つは強制的に無くなった部分を作り出す結構えぐい種類である。 祐一達、『闇』属性の者は壊すのが得意でも、治すのが苦手らしい…(w 時雨 「雑談会形式にしてます♪改訂版最初のゲストはなぜか祐一です。」 祐一 「なぜかってなんだよ…腑に落ちないけどまたゲストで来た、主役の祐一さんだ。」 時雨 「第8話の改訂が終了!!!……かなり疲れたけど…」 祐一 「なに疲れてるんだか…歳か?」 時雨 「仮にも同年代に酷い事言うね…この場に香里と美汐を連れてきてやろうか?」 祐一 「ごめんなさい…私がわるぅございました…」 時雨 「わかればいいのだ!(エバリ)しかも俺はバイトだ。 」 祐一 「ほう、バイトねぇ…ご苦労なこった。」 時雨 「(何故か無視)とりあえず今回のお話には戦闘を取り込んでみたんですけど…」 祐一 「またしても無視かよ…ま、いいけど……とりあえず戦闘描写は相変わらずだな…」 時雨 「ぐはっ!再び痛いところを…これでも結構増やしたんだぞ…」 祐一 「じゃあ、やっぱりまだまだだな。いまいち甘いと思うし。」 時雨 「…ですね。俺もそう思う…日々精進だ…」 祐一 「ま、とりあえずここで締めるか。」 時雨 「ですね。そうしましょう。」 祐一 「では、こんなちゃちなSSですが、」 時雨 「これからも管理人こと時雨は精進いたしますので。」 2人 『どうかよろしく!』 |