平穏の朝はやはりこれから始まる…
 
“あさ〜、あさだよ〜、朝ご飯食べて学園に行くよ〜”
 
「こんなんでよく起きれるよな…俺…」









































「で、またこうなるわけか…」
「ふぁいと!だよ、祐一。」
「うるさい!この眠り姫が!!もっと早く起きて飯が食えんのか!?」
「努力はしてるんだよ〜」
 
そう、俺はまた学園へと続く道を眠り姫こと名雪と一緒に全速力で駆けている。
どうやっても名雪が起きようとしなかったからだ。
今度から時間通りに起きないと置いていこうかな…」
 
「そんなことを考えるなんて、祐一極悪だよ〜」
「自分で起きようとしない奴に極悪呼ばわりされる言われはない!」
「努力はし「してるようにはみえないんだよ!」う〜…」
 
なにか言い訳しようとしていたが無視だ。
しかし、俺はまた口に出していたのか?
そんなことより!さっさと行かないと遅くれてしまうじゃないか!
 
「名雪!あと何分だ!?」
「え〜っとねぇ…100メートル5秒以内に走れば間に合うかな…?」
「なんで疑問系なんだよ…」
 
やばい…今回はさすがに当てになりそうもないな…
俺だけなら走って間に合わせれるんだけど…そのあと、名雪に何を言われるか…
ふぅ、しかたない…あんまり使いたいとは思わないんだけど…
 
「名雪!俺に掴まれ!!」
「え?…あ、うん。」
 
隣を併走していた名雪が俺の手に掴まると同時に、俺は圧縮言語である魔法を使った。
 
「転移!」
「えっ?」
 
ヴォン
 
「…あら?名雪と相沢君じゃない?いまどこから出てきたの?」
「え?あっ!おはようございます!祐一さん。」
「よう、おはよう、香里と栞。」
「う〜…栞ちゃん、私に挨拶は〜…」
「あ、すみません名雪さん。おはようございます。」
「うん、おはよ〜香里、栞ちゃん。」
 
なにやらほのぼのした会話が成立している内に俺が使った魔法について簡単に話そう。
いまさっき俺が使った魔法は「転移」という。単純に言うと瞬時に場所を移動するための魔法だ。
ただし、これは力の調節がかなりめんどくさい。
力が強すぎれば目的地じゃなくわけのわからんところに出るし、力が弱すぎれば亜空間に捕まるかも知れない。
大抵の人には調節が困難で不可能とされているが、秋子さんや母さん達は簡単に出来るだろうなぁ…
(ふふふ、初歩中の初歩ですよ♪)
(これって結構面白いのよねw)
(約束の時間に遅刻しないで済むからな…何回命が助かったことか…)
…俺は、何も聞こえていません……
 
「それで?どうやって出てきたのか聞かせてもらえるかしら?」
「私は一瞬だったから分からなかったよ〜」
「祐一さん、何かの魔法でも使ったんですか?」
「あぁ、転送系の魔法を使っただけだ。」
「えぅ〜?なんですかそれ?」
 
あ、香里が止まった…
栞は分かってなかったようだけど…
 
「もしかして「転移」っていうのかしら?」
「おう、そうだぞ!」
「……さすがね」
「そうでもないぞ、ただ…どっかの誰かさんのせいで遅れそうになったからな…」
 
そう言って芝居じみた動作で遠い目をしてみる。
 
「心中お察しするわ…相沢君…」
「もしかして酷い事言ってる?」
「「気のせいだ(よ)」」
 
実際は気のせいでも何でもないがな…
思いっきり嫌味を込めて言ってみたし…
 
「そろそろ行かないと遅刻してしまいます〜」
「あ、やばっ!行くぞ!!」
 
いくら便利な魔法を使っても結局は走らないといけないのか…
玄関先で栞と別れ、俺等は全速力で教室へと駆けた。
 
「せ、セーフだ…」
「ギリギリだったわね…」
「くー…」
「よう、あいかわずの登校だな…って、美坂もか?」
「えぇ、そうみたいね…」
「名雪が立ったまま寝てる…」
「いつもの事よ相沢君。」
「そういうことだ。」
 
やっぱり名雪は眠り姫だ…
1日の4分の3は寝てるんじゃないのか?」
 
「くー…そんなことないお〜」
「寝ながら返答しないでくれ…」
「お〜し、HR始めるぞ〜、みんな席に着け〜!」
 
名雪とのやりとりで疲れた俺は席に座ると机に突っ伏した。
さすがに転移の魔法は魔力の調節が難しい…
だが、それよりなにより名雪のせいで疲れた…
 
「あ〜……だ、以上。HRは終わるぞ。あ、あと相沢。放課後に職員室まで来いよ。」
「はっ!?なんで俺が?」
「知るか、俺は指示されたことを伝えてるだけだからな。ギルドの仕事じゃないのか?」
 
ギルドって仕事が入るのか?聞いてないぞそんなこと…
表だった行動は好きじゃないんだけどな…
 
「わかりました…」
 
はぁ、何が起こるのかねぇ…?
気がのらねぇな…
 
 
−○−○−○−○−○−○−

 
 
座学の授業中。
それぞれの魔法の基礎的なことをいろいろ喋っている教師がいる…
しかし…
 
「すっげー暇だ…」
 
こんなの独学とルシファーの知識でもうだいぶ前に覚えたことだ。
よって俺にとってはやることがない…
 
「寝るか…」
「あ〜、じゃあここを…相沢。お前がやって見ろ。」
「はい?」
「ここに書いてあるのを実戦して見ろ。属性は何でも良いぞ。」
 
教師に指摘されたであろう問題を見てみる。それはこう書かれていた。
 
  例:「我の力を、いまここに放つ。あたれ!フレイムブリット!!」
 
どんな属性でも撃つことのできる魔法の弾丸の放ち方の呪文のようなものが書かれていた。
それを実戦するのは良いんだが…その呪文が間違っていると無意味だと思うぞ…
しかも、最後の「あたれ!」って…当てるんじゃなくて当たるのを望むのかよ…戦闘に向かないぞ…
 
「先生…呪文、間違ってるんですけど…」
「お?これで良いはずなんだが…」
「正確には…「我が力、ここに解き放つ。喰らえ!コルドブリット!!」ですよ。」
 
外の木に向けて呪文を放つ。
 
「それは教科書通りにやっていればいいんだ。ところで、魔法が発動していない……
 
ブォン!
 
ドガッ!
 
一同「………」
「あら?強すぎたか?って、なんか言いました?先生」
「あ、あぁ…なんでもない…」
 
とりあえず限りなく手加減して打ち込んだつもりだったんだけど…
外にある木がすっかり氷に包まれてしまった…
なんか、みんな静かになってるし…先生はなんか呆然としてるし。
 
男子「う……」
女子「き……」
 
なんか聞こえたような…?
たしか…
 
「…う?き?」
男子「うおおぉぉ!!??すげーーー!!!!???」
女子「きゃああぁぁぁぁ!!??かっこいーー!!??」
 
うわ!?突然の大声にびっくりしてしまった。
 
「さすがに魔力が高いわね…初級呪文で木を1本丸々凍らせるなんて…」
「祐一すごいんだぉ〜!」
「ん?木1本?……なぁ、香里。あれが木1本に見えるか?」
 
そういって外を指さしてみる。
確かに「木」は氷付けになったよ…だけど誰も1本だけなんて言ってない。
指さした先では、魔法を放った周囲の木々が完全に凍り付いていたりする。
 
「…相沢…もうちょっと手加減くらいしろよ…」
「あれでも結構したんだけどなぁ…」
「これでか…」
「所で、北川。女子が叫んだあたりから男共の目が厳しくなったのはなんでだ?」
 
これは気のせいではないだろう。
魔法を放つ前は感じなかった殺気が異様に膨らんだ。
ハッキリ言って居心地が悪い。
 
「そりゃぁな…水瀬に美坂。この2人と仲がいい上に、女子からの好意も獲得すればな…」
「そんな事言ったてな…名雪は従姉妹だし、香里は名雪の友達だ。仲が良くて当たり前だろ?」
「それでもだ。ちなみに美坂を下の名前で呼んでいるのは、男の中では相沢一人だ。」
 
そういえばそうかもな…まぁ、いいか。
香里が良いって言ったんだしな。
 
 
−○−○−○−○−○−○−

 
 
実技の授業。
適当に2人一組になって乱戦をしろと言われた…
それはいいんだけど…
 
「なんか凄い殺気だぞ…」
 
なぜか周りにいる男共全員の殺気を一身に浴びている。
なぜ俺に?と思っているととりあえず組んでいる北川が教えてくれた。
 
「な?さっき言ったとおりだろ?」
「なんのことだ?」
「現にお前は、女子の人気を取りすぎたのが気にくわない男達の、嫉妬と羨望の視線をうけているんじゃないか。」
「この視線にはそう言う意味があったのか…」
 
別にそこらにいるような奴の殺気程度では効果無いが、さすがにクラスの男共全員となるとついつい斬りつけそうになるぞ…
 
「なぁ、北川…やりすぎたらまずいと思うか…?」
「まぁ…それはそうだろうな…栞ちゃんがいれば多少の無茶は平気だろうが…」
「そうか…」
 
いま空絶に手をかけそうになっているのを抑えている状態だ。
下手したら周囲の奴等を斬ってるぞ…
 
「ま、いざとなったら香里に呼んできて貰うか。」
「もしかして本気か…?」
「バカ言え、俺が本気を出したらお前等生きて学園からでられないぞ…」
 
あ、北川が青ざめた…
まぁ、ルシファーの実力を全て解放した時点でこの街なんか消えて無くなるからな…
 
「ま、とりあえず始めますか?」
 
さて、適当に人数を減らしていくか…
 
「よし、我らの敵を先に倒すぞ!?いいか!?野郎共!?」
『応!?』

「美坂さん達を相沢の毒牙から守るぞ!」
『ガッテンだ!?』
「うわぉ…」
 
ムサい…ハッキリ言ってかなりむさ苦しいぞ…
とりあえずその団結力は認めるが…
違う方で使う気にはなれないのかね…?
 
「いくぜ!」
『おっしゃぁー!!』
 
あ、何かスゲー嫌な感じ…殺気と嫉妬と何かが混ざったような気配って読み取りにくいんだよな…
こいつ等全員とやらないとダメなのか…?
 
「なぁ、北川。これ全部任せても良いか?」
「はっ!?何言ってんだよ!こいつ等全員を俺に倒せってか!?」
「おう、そのつもりだ。良い修行になるだろ。1対多数のな。」
 
あ、北川が固まってる。
そんなところで固まると危ないと思うが…
……あ、1人俺の後ろに回ったな…これでも気配を消してるつもりなのか?
 
「くらえ!相沢!!」
 
ブンッ!
スカッ!
 
「なっ!?」
「俺に1発を当てようなんて百年は早いぞ。」
 
パコッ!
 
「うわっ!」
「まだまだだな…気配の消し方が悪いぞ。」
 
う〜ん…めちゃくちゃ手加減したのに1発で気絶されてしまった…
それはおいておいて、とりあえず全員の相手はめんどくさすぎるぞ…
北川がそれなりに頑張っているようだけど…あのままじゃあと5分が保って限界か…
仕方ないか…授業だし使うなんてもったいなかなって思ったが…ま、いいか。
 
「北川〜、上手く避けろよ〜。 炎の精霊達よ、我が声を聞き答えよ。我に抵抗せし者共を炎の檻に閉じこめろ!『フレイム・プリズン!』
「何言ってんだ、あいざ…!?うおぉ!?」
 
ゴウッ!
 
あ、北川って素早い…発動まで数秒かかるが、その間に安全地域まで逃げ切ったよ。
北川ってもしかして陽動作戦に適してるんじゃないのか?
 
「何するんだ、相沢!危うく巻き込まれるところだったじゃないか!!」
「まぁ、そう怒るな、北川。お前のおかげで1発で済んだんだ、お手柄だぞ。」
「そ、そうか?」
 
ふ、単純な奴…
 
『和んでないで助けてくれー!熱くて死ぬー!!」』
「あ、忘れてた…」
「どうするんだ?俺は水属性なんて使えないぞ。」
「安心しろー、いずれ消えるぞー」
 
さて、実技のじかんも終了っと。
後は…寝るか。
 
 
 
−○−○−○−○−○−○−

 
 
 
「と、言うわけで俺はいま職員室前にいる。」
「……誰におっしゃっているのですか?」
「気にするな、諸事情があるんだ。」
「…そうなんですか?」
 
ん?待てよ…俺の周りに返答してくれる奴はいなかったはずだ。
香里は俺に付いてこようとした名雪を抑えているはずだしな…
しかも、この特徴のあるおばさん臭いしゃべり方は…」
 
「相変わらず失礼ですね、物腰が上品とおっしゃってください。」
「またこの癖なのか……んで、天野。なんでここにいるんだ?」
「それはこちらの台詞です、相沢さん。なぜここにいるのですか?」
 
職員室の前にいるってことはここに用があるって事だとすぐわかると思うが…?
もしかすると用の内容でも聞いているのか?
まぁ、ここでボケるのも良いが天野の絶対零度の視線は喰らいたくないからな、素直に教えよう。
 
「とりあえず、ここには担任の石橋センセに呼ばれて来たんだ。」
「だから職員室の前にいらしたんですね。」
「そういうことだ。まぁ、肉まんあぅー少女によろしくいっといてくれ。今度遊びにこいってな。」
「はい、わかりました。では、失礼します。」
「おう、またな。」
 
こうして俺は天野と別れた。
さて、とりあえず用件を聞きに行きますか…
そして、扉を開けようと前を向いたら。
 
「相沢…遅いぞ…」
「あ゛…石橋センセ……遅れました、すいません…」
 
すでにしびれを切らした石橋が職員室から顔を出していた。
あ、いつのまにか結構時間がたってる…話してただけなんだがな…
 
「先方がお待ちだぞ、さっさと行ってこい。」
「は〜い。」
「奥の応接間にいるからな。」
「へいへい。」
 
石橋の台詞の大半を聞き流し、言われたとおりに奥の応接間に入った俺は、その瞬間石化した。
 
「…な、なんで、あんた等がここにいるんだ!?」
「遅いぞ、祐一。」
「あんまり待たせるなよな。」
「やっほー、兄さん。元気してた?」
「良いから答えろよ!母さん、父さん、千尋!(※1)
 
そう、俺の家族がいた…


 

 


 
   用語解説
 
 
1・相沢 千尋(あいざわちひろ)
   祐一の妹。性格はかなり明るい。
   祐一とは違い、学園やギルドのことも知っている。学園ではヒロイン達に並んだ人気者である。
   外見は名雪だが、髪をポニーテールにしており、その色は薄い紫のような色をしている。
   千尋もまた異形と契約をしている。その異形と、能力は次回公開予定。
 
 
 




それとなく雑談会



  時雨  「改訂完了!ゲストは前と同じく一弥君!」

  一弥  「どうも、一弥です。…取り敢えずお疲れさまです、時雨さん。」

  時雨  「ありがと。もうすぐ君の出番だよ。」

  一弥  「わぁ、ほんとですか?。」

  時雨  「その予定です。」

  一弥  「いつになるんです?」

  時雨  「ん〜…あと2,3話以内には出せるようには頑張るよ。」

  一弥  「お願いしますよ。」

  時雨  「魔法の特訓として佐祐理、舞と一緒にいるときに祐一に遭遇、そのまま特訓へ…みたいな感じかね?」

  一弥  「え〜っと、それは嬉しいんですけど、僕は魔法が苦手なんですけど…」

  時雨  「だから特訓するんでしょ?」

  一弥  「それはそうなんですけど…ただちょっと問題が…」

  時雨  「おっと、それは言うてはならん。ネタがばれるじゃないか!」

  一弥  「あ、それもそうですね。じゃあ、止めときます。」

  時雨  「あ〜、そろそろまとめないと…」

  一弥  「これで改訂作業は終了ですよね?」

  時雨  「うい、そうだよ。これからは本編製作に戻るよ〜♪」

  一弥  「頑張ってくださいね。 」

  時雨  「うい〜、了解です。 」

  一弥  「じゃあ、今回はここまでということで。次回をお楽しみに♪」

  時雨  「Σ( ̄□ ̄ι またしても俺の台詞をっ!!」







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