「久瀬…」 「ん…あぁ、祐一ですか…」 「…なにがあったんだ?」 「貴方の大切な者の為に、敵を闇に還した。ただ、それだけですよ。」 「そうか…感謝する…」 感謝の言葉と共に、互いの拳を軽く握り、突き合わせる。 俺と久瀬には、それだけの言葉と行動で充分だった。 ![]() 久瀬との会話は一旦そこで切った後。 とりあえず、へたり込んで呆然としているあゆの様子を見に来ると。 「うぐぅ…怖かった…」 と、いう言葉を頂いた。 「あゆ、おーいあゆあゆ。もう大丈夫だぞ。」 「うぐぅ?……祐一君…ゆーいちくーん!!」 「っとぁ!」 顔を覗き込んでやると、突然瞳いっぱいに涙を溜めて俺に向かって飛び付いてきた。 さすがにこんな状態の時まで悪ふざけする程俺は悪人じゃない。 「怖かった!ホントに死んじゃうんじゃないかって!!」 「……大丈夫…大丈夫だ……」 少しでも気を落ち着かせてやろうと優しく頭を撫でてやる。 暫く撫でているうちにあゆからの嗚咽は小さくなって、代わりに小さな寝息が聞こえてきた。 あゆが落ち着いたのを確認するとオヤジがここぞとばかりにからかってきた。 「ッヒュー♪いいなぁ、ユーイチよぉ。可愛いお姫様に抱きつかれてよ♪」 「うっさい、黙れオヤジ。」 オヤジからの冷やかしの声を憮然として返してやった。 「っていうかあゆは寝てるぞ。」 「あら?おぉ、ホントだ。よっぽど怖かったんだな…」 あゆが落ち着いて眠ってからの少しの間、俺とオヤジはこんな無意味な攻防を続けていたりする。 「もう、心配の必要はなさそうですね…なら僕は帰るとしますよ。」 「あぁ、わかった。改めて礼を言うよ、あゆを助けてくれてありがとうな。」 「はは、祐一はそんな台詞は合わないですよ。やはりいつも通り軽口を叩いているのが一番いい。」 「うっせ、珍しいんだからありがたく受けとっとけ。」 「そうしますよ、それでは。」 そういって全身に闇を纏い始めた久瀬を突然と、横からの声が引き留めた。 「ちょっと待ってくれ。」 「……なにか?」 「あぁ、あんた学園でも悪名高い生徒会長だろ?」 ……失礼なこと抜かしてるなオヤジ… 一応初対面に対してそんなこと言うか…? 「ってな風に噂で聞いてたが、ありゃ嘘だな。」 「いえ、あながち間違っていないかも知れませんよ。」 「がはは、そうくるか。あゆちゃんを助けてくれてありがとよ。今度俺の店にタイヤキを奢ってやるぜ。」 豪快な笑顔でオヤジはそう言った。 すると久瀬の顔に、普段浮かぶことが少ない喜びからの笑顔が浮かんだ。 「えぇ、その時はありがたく頂きますよ。」 「おう、待ってるぜぇ!」 「はい…祐一、いい人達をですね…」 「あぁ……お前もその一人だ。」 一瞬、久瀬が驚いた表情を見せたが、また普段の落ち着いた表情に戻っていた。 多分、照れてるんだと思うけどな。 「では、僕は帰りますよ。暗き闇の抱擁、我に纏いて一つにならん「ダークミスト」(※1)」 先程から久瀬の回りに浮いていた闇色の影が詠唱完了と共に久瀬を包んだ。 そして、それが消えた後には久瀬の姿は無かった。 「……はぁ…なーんか疲れたなぁ…」 「だなぁ…まぁ、おもしれーにーちゃんに会えたからまだいいがな。」 「面白い…?」 暗いだの、冷徹だのあいつを表す言葉は罵詈雑言の方が多かった。 でも、オヤジは180度違う事を言っていた、ちょっと興味あるな。 「どうしてそう思ったんだ?」 「ん?あぁ、あの兄ちゃんのことか。」 「あぁ。」 「あれは自分から進んで悪役を買うタイプの人間だ、しかもそれを嫌だと思っても顔に出さねぇときた。」 どうやら俺は、オヤジの洞察力を甘く見ていたらしい… オヤジの言っていることはかなり当たっている。 久瀬が自らああいう憎まれ役を買っている事に気づけるような人はそうそういなかったからだ。 それを初対面で言い当てたんだ、このオヤジは。 「あんな事出来る奴はそうそういねぇ。だからおもしれぇってな。」 「………ふっ…はははは!!」 だから俺は、あいつのことを理解してくれる人が近くにいるのが嬉しかった。 ただ、それだけのことなのに俺は笑うことが止まらなかった。 俺と同じ『闇』を共有し、理解し合える大切な友人、それを理解してくれる人がいるのが嬉しかった。 「ははは、ありがとなオヤジ。やっぱあんた最高だわ。」 「……っけ、よせやぃ。それより声を抑えろよな、あゆちゃんが起きちまう。」 「あぁ…さて、秋子さんも心配してるだろうし帰るかな。」 「あぁ、ならここで解散だな。また、タイヤキ食いに来いよ。あの兄ちゃんも連れてな。」 さっきと同じくらいの豪快な笑顔で、見てる奴が明るくなりそうな陽気な声で、オヤジは自分の店の方へ戻っていった。 さりげなく手のひらを俺達にひらひらとさせながら向けていたりする。 ……カッコ付けか…似合わないぞ…? 「まぁ、いいか。……うし、俺も帰るか。」 気合いを入れ直してから、あゆを背に背負う。 むぅ、さすが小学生。軽いし何もないな。 これが舞あたりだと背中に当たるモノの感触がなんともいえないんだろうな〜 そんな失礼なことを考えながら俺は家への帰路に就いた。 商店街からちょっと離れた路地裏から歩くこと数10分、俺は水瀬家に戻ってきた。 方向音痴だと思ってたから無事に帰れるか正直不安だったけど… うん、まぁ、帰省本能やらメシにつられたんだろう。そう言うことにしておこう。 「ただいま帰りました。」 「お帰りなさい、祐一さん。あら…あゆちゃんは寝ているんですね。」 「えぇ、ちょっと商店街の方でゴタゴタがありまして…」 「そうですか…では、晩ご飯の後にお話してもらえますか?」 「はい、わかりました。」 そして、あゆを部屋に寝かせてから晩飯にありついたわけだけど…まぁ、これはいいか。 とりあえずいつも通り美味かったとだけ言っておこう。 あと、名雪もいつも通り寝ながら食べてたな。 食べ終わった後すぐに「寝るんだおー」とか言って上に上がっていったけど… 何時間寝る気だ…? そんなこんなで、程良い満腹感を感じながら秋子さんが煎れてくれたお茶を飲んでくつろいでいる。 「それでは、商店街で起こったという出来事を聞かせて貰えますか?」 「はい。」 そして俺は商店街で発生した出来事を説明した。 その際、ダークネスが召喚されたことと、久瀬が戦ったことはある程度かいつまんで説明した。 秋子さんや名雪が相沢家と久瀬家の闇に関わる必要はないからな。 「そうですか…」 「召喚者は召喚した異形に殺されました…だからもう暫くは召喚に関する騒ぎは無いかと思います。」 「そうですかわかりました。…祐一さん、商店街を守ってくれて、ありがとうございます。」 「いえ…じゃあ、今日はもう休みます。明日は朝から出掛けますね。」 「はい、わかりました。お休みなさい、祐一さん。」 「お休みなさい、秋子さん。」 部屋に戻った俺は空絶を壁に立てかけ、ベットに倒れ込んだ。 「(とりあえず明日は少し本家に顔を出すか…俺は異端者であっても一応相沢家の嫡男だからな…)」 最悪攻撃されるかもしれないが、まぁ…親父や母さんのクラスの攻撃力じゃなければ俺は問題ないだろう。 この街に異形が出現したって言うのに処理部隊が来なかった… これがどういうことのなのか問いつめる必要がありそうだ… 「(あとは…異形山に着いてくるメンバー探しだよな…)」 どっちかというとコレが一番難題だったりする。 今日だけで舞と佐祐理さんにしか確認が取れなかった… まぁ、まだ4日あるからいいか… 「ふぁ…とりあえず…寝よ…」 そうして、俺は意識を手放した。 ─ 公園にて ─ 現在時刻、草木も眠る丑の刻。 月明かりも雲に遮られ、暗闇に包まれた中。 祐一達が異形、フェンリルと戦った公園に音が響いていた。 ドンッ! ドンッドンッ!! その音は一定のリズムで続いていた。 ドンッ! ドンッドンッ!! カチッ!カチッ! そして、その音は一つの黒い影から響いていた。 「くそ…この使い方じゃいけない…それは分かってる…」 影が声を発した。 その声につられるように雲に遮られていた月明かりが顔を出し、公園の中を照らした。 「だけど…俺は【あの力】に頼ってもいいのか…」 月明かりを受け現れたのは、薄く輝く金髪に、一房の髪が上に立っている特徴的な髪型をした少年だった。 そう、その影は北川だった。 「錬金術も【あの力】を使ったときのため覚えた物に過ぎない…」 「だから…このままの使い方じゃ本来の戦い方と同じ威力は期待できない…」 「それでも、この力はそれなりに強力だった、低級異形を倒すことも無理じゃなかった…」 彼は、何か思い詰めたような表情をして自分の手の中にある物を見つめていた。 その手にあるのは鉄でできた筒状の物。 リボルバーといい、回転する筒の中に弾を入れ、それを撃つ武器である。 「でも、フェンリルと言っていた異形の前じゃ無力だった…」 そう、彼は無惨にも1撃でフェンリルに倒された。 当のフェンリルには大したダメージを与えることも出来ずに… 「これからは…あいつを守るために…そして相沢のようにみんなを守るため…」 「【あの力】を使うべきなのかもしれない…相沢の様に人に在らざる力で…」 「そうすれば…この錬金術の本当の使い方で戦いに参加できる…」 彼には、仲間の誰にも教えていない秘密があった。 それは北川家だけに秘められた秘密。 秘密の正体、【あの力】を解放するべきかどうか…それを彼は悩んでいた… 「ふぅ…相沢もこんな風に悩んで…俺達に力のコトを教えてくれたのかな…」 そう呟いて、空を見上げた。 そして、転校して数日というのにすでにクラスにとけ込んでいる親友の事を考えていた。 『闇』を力とし、煉獄でも五指に入る実力を持つ異形と契約し、その力を人を護る為に使う人物。 自分が拒絶されることを危惧しながらも、自分たちに力のことを打ち明けてくれた親友を… 果たして自分に親友と同じような行動ができるのか… 「俺は…相沢みたいにみんなを守れるだけの力はない…」 「【あの力】のことを打ち明けるような勇気もない…」 「でも…あいつを護るために【あの力】を解放するのもいいかもしれない…」 相沢祐一は確かにみんなを守りきるだけの力と覚悟があると感じていた。 しかし、自分の力はそこまで強くはない、そうも感じていた。 だが、自分には護りたい存在がある。 ならば、自分が取るべき道は… 「美坂…俺は……お前をあらゆる物から守る盾に、そして全てを倒す矛になろう…」 ついに、彼は決心した。 相沢祐一の様にはできない、でも自分が出来ることを精一杯することを。 そして、少しでも仲間を守るために、そして…なにより彼にとって大切な存在を守るために。 「うっしゃぁ!そしたら久々に…解放してみるかっ!!」 彼の掛け声と共に、彼の足下から特殊な文字を並べた魔法陣が一瞬で出現し、強い光を発した。 そしてその夜、公園から狼の雄叫びのようなものが夜空に響き渡った。 ちなみに、響き渡るほどの雄叫びを聞いて、祐一が一時的に目を覚ましたということをここに追記しておく。 用語解説 1・ダークミスト 闇色の霧や影を発生させ、敵を撹乱させるために用いる魔法。 今回の久瀬の場合は、自分専用の魔法に昇華させ、『闇』属性の移動魔法に仕上げた。 移動可能範囲は大体スノウシティー全体まで、それだけでも充分広いため相当の実力が伺える。 現在、隠蔽などを得意とする久瀬にはうってつけの魔法となっている。 時雨 「さて、更新スピードがなかなか上がってきているような紅眼の魔剣士17話ですです。」 香里 「……明日は嵐かしら…?」 時雨 「さりげにきついこと言ってません?ゲストの美坂香里嬢。」 香里 「気のせいじゃないかしら?」 時雨 「そ、そうなのか…?」 香里 「言葉通りよ。」 時雨 「……まぁ、そういうことにしておきましょうか? 」 香里 「それは賢明ね。でも、本当に更新のペース上がってきたわね。」 時雨 「まぁ、大学決まってやることも在るような無いようなんで結構執筆時間はあるんですよ。」 香里 「へぇ…それで、とりあえず北川君は何を隠してたのかしら…?」 時雨 「それはまだ秘密ですよ〜♪次回あたりで多分出てくるような〜こないような〜…」 香里 「すごい曖昧じゃない?」 時雨 「んー…誰だそうかなぁって思いまして。祐一は本家の方にも顔出させないといけないし…」 時雨 「あ、後そろそろカップリングが確定しそうな予感です。」 香里 「ふーん…じゃぁ、あたしは誰との予定なのかしら?」 時雨 「ふふふ、それは企業秘密ですよ。どうしても知りたければ…」 香里 「……知りたければ?」 時雨 「あのオレンジの悪夢を食べてきていただきます♪」 香里 「絶対嫌!」 時雨 「はっはっは、俺もそれは嫌だねぇ♪」 香里 「なら言うんじゃないわよ…」 時雨 「ま、お茶目ですよ。とりあえず祐一は俺の趣味で真琴とのカップリングを考えてます。」 香里 「へぇ、ま、ネタはらしはこの程度で止めてそろそろ締めましょ。」 時雨 「そだねー。では、これからも紅眼の魔剣士と、不肖の時雨を〜♪」 香里 「適当によろしくね、励ましてあげるとそれなりに働くわよ。」 時雨 「て、適当って…否定できない…」 時雨 「ところでかおりん、北川君をどう思うかね…(邪笑」 香里 「…………」 時雨 「言ってみ、言ってみ♪」 香里 「………嫌いじゃないわ…」 時雨 「そ、それって舞とかぶるぞ(汗」 |