「うっしゃぁ!そしたら久々に…解放してみるかっ!!」
 
彼の掛け声と共に、彼の足下から特殊な文字を並べた魔法陣が一瞬で出現し、強い光を発した。
そしてその夜、公園から狼の雄叫びのようなものが夜空に響き渡った。









































 ─ AM7:30 ─
 
チッチッチッチッ……カチッ
 
朝〜朝だよ〜朝ご飯食べて学園に行くよ〜
朝〜朝だよ〜朝ご飯食べ…カチッ
 
「…んぅ……眠った気がしない…」
「(そうは言ってもしっかり6時間は寝ているがな…)」
「精神的なモノからきてるんじゃねぇかなぁ…」
 
昨日は何故かわからないけど、いろいろなことがありすぎて本当に疲れた…
親父達に変な依頼を受けるわ。
勧誘のためにあっちこっち歩き回ることになるわ。
そうしたら何故か魔物が発生してて、久瀬まで戦闘してるわ。
 
「ふあぁぁ〜…うっし!今日も適当に頑張りますかっ!」
「(ふむ…今日は本家に行くのであろう?学園はどうする気なのだ?)」
「一応秋子さんに事情を通してから休むか遅れいくことにするさ。」
 
まぁ…学園も依頼の事は知ってるし、秋子さんに話を通せば問題ないだろう…
勧誘の方は放課後じゃないと無理だしな…
えーっと…舞に佐祐理さん、一弥に斉藤は聞いたし…後は他の連中に当たればいいのか。
 
「さてと…空絶、今日はちょっとここで休んでいてくれな。」
「(……何故だ?)」
「本家はなぁ…お前のような妖刀というか魔剣の類を勝手に管理しようとするんだよ。」
 
確か昔の事だけど、発見された魔剣だかを略奪の如く奪って封印してたのを見た気がする…
多分いくら俺の所有の妖刀だからって言っても本家の頭が固いのは聞かないと思う…
 
「(早い話が封印してこようとするのか…?)」
「そ、そういうこと。封印されるのは嫌だろ?」
「(あぁ…なら今日は我はここで待機していることにする。)」
「そうしててくれ。今日はデストロイ持ってくさ……重いけどな…」
 
装備品の重量がそのまま気分に重なったみたいだ…
デストロイ…破壊力はあるけどかなり重い…計ったことは無いけど70〜80キロ以上はあるんじゃないかな。
力を解放しなくても使えることは使えるからいいんだけどな。
 
「うしっと…それじゃ行ってくるわ。」
「(わかった、一応気を抜かないようにしておけ。本家でなにかしらあるだろうからな。)」
「そうだな…ただでさえ異端者呼ばわりされてるし…」
 
実際の所、俺は本家に行くことに対してはあまり乗り気じゃない。
掟だの仕来りだのでどうしても堅苦しいんだよなぁ…
 
「はぁ…んじゃ、まぁ留守番頼んだぞ〜…」
「(わかった。)」
 
旅をしていた頃のようにデストロイを背に担ぐ。
……やっぱり重いなぁ…
もしかして鍛錬不足か…?
そう頭の中で愚痴りながら俺は部屋からでて秋子さんのいるであろうリビングに向かった。
 
 
 
 
キシッキシッ…
 
うぅ…さすがにデストロイ重いから床がなるぞ…
 
カチャ
 
「おはようございます、祐一さん。」
「あ、おはようございます。」
 
……なんでいつもすでに待機してるんだ…?
今回はまだ音があったかもしれないけど…他の時もいつも待機してたな…
……気にするだけ無駄だな。
 
「そうだ、秋子さん。今日は学園休んでもいいですか?」
「……理由を聞かせてもらえますか?」
「えぇ、本家の方にちょっと用事ができまして…昨日のことについて問いつめてやろうかと。」
「そうですか…祐一さん、了承しても良いですが、一つ聞きたいことがあります。」
 
了承が出ることはある程度予測できていたけど…聞きたいこと…?
何かあったっけ…?
 
「向こうの家で暮らす気はありますか?」
「ありませんよ、あの家は実家であっても今の俺が帰る場所じゃないですし、今の俺の家はここですから…」
 
一瞬秋子さんは驚いた顔をしたが、すぐにいつもの…いや、いつもより明るい笑顔になっていた。
これはご機嫌なのかな…?よくわからん…
 
「それで、今日は名雪起こさなくて良いですか…?」
「えぇ、それは構いませんが…何故です?」
「起こすと自分もついていく!とか言いそうですからね」
 
苦笑しながらそう答えると、秋子さんも納得したかのように微笑んでいた。
まぁ…名雪がついてくるとなると、他にもいろいろついてきそうだからなんだけどな…
あそこの…相沢家の暗い世界にみんなが近づく必要はない。
 
「それでは、朝ご飯の準備も出来てますから、食べましょうか。」
「あ、はい。いただきます。」
 
まぁ、食べてるシーンなんて特に問題もないから割愛しよう。
いつも通り秋子さんの手料理はおいしかったとだけ追記しておく。
 
 
 
 
ふぅ…腹も適度に膨れたし、時間は…7時50分か。
そろそろ向かうとしますかね…
食後のお茶を楽しんでいたが、そろそろ名雪が【もしかしたら 】起きてくるかもしれないし。
 
「それじゃ、秋子さん。そろそろ俺は行ってきます。」
「はい、気をつけていってらっしゃい。」
 
あー、やっぱなんかほのぼの見たいな感じでいいなぁ…
そう思いながら水瀬家を出て、俺は相沢本家に向けて歩き出した。
 
「すると前から北川が出現したっ!」
「誰に言ってるんだよ…相沢。」
 
何か言っているが気にしない。
さぁどうする!
 
1、戦う
2、逃げる
3、手懐ける
4、殺
 
むぅ…北川相手に2は嫌だし…3はなんか嫌だ…
やはりここは妥当の1か4だな。
いっその事4にしようか。
 
「ちょっと待て!殺すな!」
「む、何故お前にこの高尚な祐ちゃんの思考が読めた!」
「口に出てたんだっての!」
 
なにっ!?
近頃出てないと思ったのに…北川の前にくるとついつい言ってしまうのか。
 
「まぁ、冗談だ。そう気にするな北川、自慢の触覚が垂れるゾ。」
「あぁ、そうか……って、俺のこれは触覚じゃねぇ!」
「む、ならば……異形探知レーダーか!?」
「そうそう、これは世界初の……ってそれも違うわ!」
「そうか、ならば…」
「いや、そのネタはもういいから…」
 
む、そうか。
残念だ、1日1回は北川をからかわないと祐ちゃんパワーが貯まらないのに。
 
「どうせろくでもないことを考えてるだろうから単刀直入に言うが…」
 
さっきまでのギャグ満載の雰囲気から一転、北川が真面目な顔をしてきた。
まぁ、コイツの言いたいことは大体予想がつくんだけどな…
 
「相沢、俺と1対1で本気で戦え。」
「嫌だ。」
「…っ!? 何故だ!」
 
予想通りだな、さすがに理由まではわからないけど…
だけど、俺が本気を出すわけにはいかない。それにまだルシファーの力全てを使えるわけじゃない。
まぁ、全てを壊し尽くせるような全力なんて出せるわけないけどな。
 
「何故だも何も、俺が全力出したらこの街が一瞬で灰になっちまう。」
「……」
「それに、俺はまだ完全に能力を引き出せるわけじゃないからな。」
「くっ…それでも! 出せる限界の力で俺と戦ってくれ!」
 
街が灰になるという俺の言葉で一瞬怯んだが、すぐに同じ事を言ってきた。
自分の力試しってだけの為にしてはしつこいな…
他に理由でもあるのか…?
 
「……理由…」
「え?」
「理由を教えろ、内容によっては考えてやる。」
 
自分の為の力試しって言ったらその時点で殴り飛ばす。
そんなことのために俺は力を出すつもりはない。
 
「……理由は…護るためだ…」
「……」
「前の戦いじゃ俺は自分の力を…古代の技術を身につけたからって油断してた。」
 
確かにそれはわかる、舞だけが辛うじて危険性をおぼろげながら感じ取ってはいたが、他は気づいてもいなかった。
 
「そのせいで…護りたいと思ってた奴に怪我させた…だからこれからは死んでも護りたい。」
 
なるほどな…
だけど、一部だけ許せないことがある…
 
「北川…理由は大体わかった…だけどな…」
 
バキッ!
 
言葉が終わると同時に俺は北川の横っ面を殴り飛ばした。
 
「!? なにしやがる!相沢!」
「舐めたこと抜かしてんじゃねぇ!死んでも護るだ?そんなの自己満足でしかねぇんだよ!」
 
死んでも護る…確かに言葉としては格好いいかも知れない、だけどその後に残された人はどうなる…自分という名の枷を生涯背負わせる事になるんだ…
そして、自分が死んだ後は誰がその人を護る…?
自分の後を継いでくれるヤツが絶対現れるなんてことはないんだ…
 
「死んでも護るなんて認めねぇ…そうでしか護れないならいっそのこと護ることすら止めてしまえ!」
「……」
「本当に護りたいなら無様でもいい、格好悪くてもいい、生きて、生きて…それで護る力を、自信を持て!」
 
異形との戦いは酷いときには本当に命がけだ。
俺だって危ないことが無いとは言い切れない。
でも、生きてれば一度負けたとしても、力を付けてまた戦える。
 
「死んでもなんて考えを捨てるなら、今の俺の全開で相手してやる。」
「……そう…だよな、死んだらそれっきり護れないんだよな…」
 
北川はなにかを呟きながら考えているらしい。
少しでもこれで考えが変わってくれるといいんだけどな。
 
「わかった、全力で生き残る。そして出来る限りで護る…それで、いいんだよな。」
「あぁ、だけどこうは言ったがかなり辛いぞ。それでもやれるか?」
「やれる、やれないじゃないだろ? やるか、やらないか。だ!」
 
そう言った北川の顔は何か憑き物が落ちたような感じになっていた。
いい顔するようになったじゃないか…
 
「なら、外じゃまずいな…丁度良いからついてこいよ。」
「ん? どこに行く気なんだ?」
「気が乗らないけど、俺の本家。」
「相沢の本家って…もしかして相沢家か!?」
 
それ以外にこの街で相沢家なんてあったか…?
横でギャーギャー騒いでる北川を引きずりながら俺は本家に向けて歩きながら考えていた。
 
 
 
 
「おし、着いたぞ。」
「……でっけー…」
 
分かりやすい反応でありがとう。まぁ、確かに無駄でっかいよな。
ヘタしたら王城と同じくらいの面積はあるんじゃないだろうか?
 
「まぁ、いいや。とりあえずここの闘技場利用させて貰うか。」
「はぁ…なんかコメントするのも難しい家だな。」
「そうか?倉田家よりはマシだと思うが…」
 
佐祐理さん達の家は王族だしな。
 
「あー…どっちもどっちって感じだな。」
 
それで割り切るのか、この男は…
 
「ま、とりあえず行きますか。」
「おー、相沢家に足踏み入れるなんてそうそうないからな、見学させてもらうぜ。」
 
見ても面白いものなんてあったか…?
あぁ、じじぃ共のしおれ具合なら笑えるかもしれないな〜
 
「待て、ガキ共。ここから先は相沢家の私有地だ。関係者以外立ち入ることはゆるさん。」
 
歩いて門をそのままスルーしようとしたら門番っぽいおっちゃん達に通せんぼされた。
むぅ…この祐ちゃんを知らないとは、新入りだな。
 
「おぃ、相沢。どうすんだよ?」
 
後ろで北川がなんか言ってるがとりあえず流して。
 
「誰の道を封じている!我が名は相沢祐一!老院の奴等に伝えろ!異端児が戻ったとな!」
「異端児相沢祐一だと…寝言を言うな!あの化け物がこんな小僧なわけないだろうが!」
「ほぅ、ならば貴様程度の矮小な存在が俺に刃向かうか?偽物に負けるほど本家の人間は弱小であるまい?」
 
化け物と言われてちょっとムカッときた。
すこしいじめてやる。
 
「戯言を!怪我をしてもしらんぞ!」
 
俺の挑発に乗った門番から一族特有の『闇』属性の気配が強くなった。
だけど、この程度か。所詮門番か、せいぜい下級程度の力しか感じない。
 
「その程度で俺に勝てると思うのか…?」
 
相手の力の開放と同時に俺の方も本家のじじぃ共に届く程度の力を解放し始める。
まぁ、この程度じゃ羽根は出てこないけどな。
 
「ひっ…」
 
気配が同等になった瞬間、門番の顔色が変わった。
徐々に怯えの気配も含まれてきている。
 
「あ…あぁ…」
「はーい、そこまで〜。君程度の能力じゃ兄さんには勝てないよ〜」
「!? 千尋様!?」
 
ビビり続ける門番の後ろから現れたのはマイ妹の千歳だ。
っていうかいつ来た…?あんまり気配が分からなかったぞ…?
 
「兄さんも、いつまでも殺気出してないでそろそろ抑えてよ。」
「ん、悪い。」
 
千尋に指摘を受けたので通常状態まで戻す。
後ろを見ると北川が固まっていた。
 
「おーい、触覚。生きてるかー?」
「触覚言うな!って、そうじゃなくて凄まじい家なんだなぁ…」
「まーな、それに加えて俺は本家に嫌われてるし。」
「まー、お互い大変だなぁ。」
 
2人で肩を取り合ってうんうん頷いてみる。
やっぱコイツとは気が合うな〜
 
「おー、コレが男の友情ってヤツだね、兄さん。」
「微妙に違う気がしないでもないけどな。ま、とりあえず闘技場借りるぞ。」
「あぃよー、じーちゃん達には私から言っておくね。」
 
ん、話のわかる妹で助かる。
 
「あ、後で父さん達と行くかも知れないから。」
 
……マジですか…?
俺は平気だけど…北川…冥福を祈ろう。
 
「うし、んじゃ行くぞ、北川。」
「おぅ」
「…あ、そうだそうだ。千尋、じじぃ共に後で顔出すって伝えといてくれ。」
「はーい、他には?」
 
んー…あのじじぃ共なにしでかすかわかんないからなぁ…
 
「んじゃ、もう1つ。俺の友人に手を出したらじじぃでも殺す。」
「はいはい、確かに承ったよー」
 
それじゃ、行きますか。
当初の予定とは違うけど、これはこれで楽しそうだ。
 
 
 

 

ざだんかーい!!



   時雨   「相変わらずの更新スピードな紅眼の〜第18話お送りしました。」

   空絶   「……のろま」

   時雨   「ぐさっ!ひ、酷い…そんなこというゲストは空絶さんです。」

   空絶   「気にするな、ダメ作者。」

   時雨   「うぅ…酷いってば…」

   空絶   「ふん、出番がなくて暇なんだ。愚痴くらい付き合え。」

   時雨   「……まぁ、それは諦めて貰うしかないけどさ… 」

   空絶   「まぁ、雑魚が集まっても我を封印できるとは思わないが…」

   時雨   「もしもってことはありえないとは言い切れないからねー」

   空絶   「そういうことだ、転ばぬ先の杖とも言うしな。」

   時雨   「使い方はそれであってるのか不明だねぇ…」

   空絶   「間違ってはいない…ハズだ…」

   時雨   「まぁいいか、間違ってたら指摘貰うだろうし。」

   空絶   「人任せだのぅ…」

   時雨   「ほっといてくれ、批評とかないとどうしていいか分からないんだよー」

   空絶   「とりあえず、今後の事を大まかに教えろ。」

   時雨   「そだね、とりあえず闘技場行って北川戦やって、老院のじーさま達に絡まれて…」

   空絶   「ふむふむ。」

   時雨   「そんでまた異形山メンバー探しかなぁ…?」

   空絶   「まぁ、それしかないか。」

   時雨   「できれば、早い内に異様山に出発できるようにしたいなぁって考えてるけど。」

   空絶   「ま、お前の実力しだいだの。」

   時雨   「そだねー。出来る限りがんばるよー」

   空絶   「叱咤激励、臨むところだ。」

   時雨   「叱咤激励されるのは俺だろ…まぁ、これからもよろしくお願いします。







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