「と、いうことなので千尋君。君には別口で動いて貰いたい事があります。」
「ふぇ?」
「祐一が確か異形山に行くためのメンバー集めをしていたハズですね。」
「あ、はい、確か私が父さんにしごかれてる間に探すみたいな事言ってましたけど…?」
「ふふ、それでは、こう言うのはどうでしょう?」
「あら…♪」
「それは、面白そうですね。」
 
それは、今日見た中で、一番悪巧みしてますって久瀬さんの顔だった。
ついでに、ミリアム達も…









































「とりあえず、はい、これをよろしく。」
「ふぇ?」
「祐一が誘うであろう人たちのリスト、と言ったところですか。」
 
唐突に渡されたのは、人の名前、住所、電話番号が書かれた紙だった。
こんなの私に渡していいのかなぁ…?
一応個人情報の漏洩がどーのこーのって引っかかりそうだけど…
 
「ちなみに、これは学園の連絡網からの引用なので問題ありませんよ。」
「へー、今時の学園ってそんなのがあるの…」
「一応私のクラスにもあるにはあるよ?使うことは滅多にないんだけど…」
 
だって、連絡する事ないしねぇ?
っていうか、私の考えてる事読まれてる…?
 
「まぁ、細かいことはそちらで話しておいてください。祐一は普通に歩いていても何かと物事に巻き込まれる性質の持ち主ですからまともに誘えないでしょうし…」
 
あー…それは納得。
兄さんいっつも巻き込まれたりしてるもんなぁ…
困ってる人を放っておけないってのも理由なんだろうけどね。
 
「だから、そうなるくらいならいっそのこと先に集めてしまおうという訳です。」
「へぇ…さすが、付き合いが古いだけあって祐一の事判ってるみたいね…」
「まぁ…これでも家、個人の両方の付き合いですしね。」
 
あ、久瀬さんが苦笑してる、珍しいのみたなー
いっつも仏頂面でこむずかしー顔して学園にいるのに。
とか考えてるウチにリストが何故か零さんの手元にあるし!
 
「でわ、私は連絡してこようと思いますが、よろしいですか、千尋様?」
「あ、うん、お願いします。零さん。」
「はい、それでは、御用があればまたいつでもお呼びください。」
「またね、零、今度ゆっくりお茶でもしましょ。」
「えぇ、その時はよろしく。」
 
シュンッ
 
いやー…零さんって行動早いなー…
私、することないじゃない…
ミリアムはミリアムで…まだなんか思う所有り!って顔してるし…
 
「ちょっと、隆。」
「なんですか?」
「リストに書かれてた名前、一部消してあったとは言え、ほとんど女の名前だったわよね?」
「えぇ…まぁそうですね…相変わらず変なところは良く見ているようで。」
 
なにやら、久瀬さんに耳打ちしてたと思ったら、久瀬さんは徐々に呆れたような顔になっていた。
うーん、何話してるんだろう?
 
「ちょっと、ミリアムーなんの話?」
「相変わらず、祐一ってモテるのに鈍いわねーって話よ。」
「君に渡したリストなんだが、連なる名前の大半が女性なんだよ。それもその誰もが当然の如く祐一に対して少なからず好意を持っている。」
 
あらま…兄さんったら戻ってきてまだそんなに経ってないハズなのにもう墜としたのか…
昔っから無意識に周囲の女の子墜として気づいてなかったからなぁ…
 
「んー、それはおいといて、とりあえず話を戻してっと…私たちは何したらいいのかな?」
「連絡は零がするみたいだし…私たちはやることないわねぇ…」
「そうですね…それなら、僕の方の用事を手伝って貰いましょうか…」
 
久瀬さんはちょっと考える様子を見せると、ふと思いついたかのように提案してきた。
でも、久瀬さんの用事って…私出る幕あるのかな?
 
「出る幕があるのかな…なんて考えてるんでしたら心配無用ですよ、逆に君の方がこの役は適任だろう。」
「あ、ちょっと私には予想が付いたわ。」
「えー、なんで判るの?まだ久瀬さん何も言ってないよー?」
 
うん、ヒントが少なすぎて全然わかんない。
私が出る幕があって、しかもそれは私の方が適任…?
 
「そうね…現状と、今の貴女の実家の様子をみればおのずと理解できるんじゃないかしら?」
「現状と……ウチの様子?」
 
 
ドッカーン!
 
 
「あー…私にも判ったっぽぃなぁ…」
「まぁ、察しやすい事…健二ったら、狙ってたのかしら…?」
「とりあえず、僕だけであの人を止めるのはなかなか骨が折れる作業だからね…」
 
久瀬さんが動き出したので、一応ついていってみる事にする。
でもまぁ、確かに、今の父さんってなんかはじけてるっぽぃ…
なんていうか、抑圧されてた圧力が現在フルで開放されてるって感じ?
でも、どうやって止めればいいのかなぁ…?
 
 
チュドーン!
 
 
「多分、これは僕の予測の範囲に過ぎないが、君が行けば自ずと止まるんじゃないだろうか。」
「そんなもんかなー…?」
「健二なら、あり得るわよ?だって家族が大好きで仕方ないって男でしょ?」
「だからこそ、千尋君の方が適任だと思うんだよ。」
 
ドガッ!
 
「ははは!どうした貴様等!老院の護衛の力はそんなものかああああ!」
「うああぁぁぁ!!」
「わーはっはっは!」
 
 
あー…なんか近づく程に離れたくなるって感じ…
今の父さん随分壊れてるなー…
……いや、あれが素なのかな?
 
「さて、と。とりあえず健二を肉眼で確認、って所かしら?」
「……拙いな…予想より暴走してるかもしれない…」
 
久瀬さん…あの有様をある程度予想してたんですか…
やっぱり洞察力とかすごいなぁ…
でも…私にホントにあれを止めれるかなぁ…?
 
「ふむ…仕方ない。こうなったらアレを使って貰うとしますか…千尋君。」
「はい?」
「このメモに書いてある言葉を読んで見てくれるかぃ?できるだけ健二さんに聞こえるくらいの声で。」
「ホント…嫌になるくらい用意が良いわね…貴方ってどの程度まで予測してるのかしら?」
「はは、この程度なら誰だって予測できるだろう?」
 
いや、多分私には無理だと思う…
そもそも、普段の父さんの考えてる事すら完璧に予測できないんだし…
まぁ、書いてあるメモの内容はっと…
 
「えーっと、何々。『止めてくれないと、父さんの事嫌いになるよ』?」
 
 
ピタッ…
 
 
あ、止まった。
 
「ち、千尋ー!俺のことを嫌わんでくれええぇぇ!」
「おー、やるじゃない、隆。予想通りよ。」
「まぁ、普段の健二さんが健二さんだからね。」
 
2人が苦笑してるけど…やっぱり父さんって親ばかなのかなー?
……うん、やっぱり親ばかなんだろうね。
まったく、世話の焼ける父親だなぁ…
 
「ほら、父さん、嫌わないからちゃんと最後までしっかりやる!」
「あ、あぁ…判った。ん、ゴホン。…判ったな、お前等。これ以後、相沢では俺がルールだ。理解できぬ者、せぬ者は二度と相沢の敷居、及びこの街に立ち入ることを許さぬ。
 
うーん…あの情けない格好見せてから今更って感じもするような…
でもまぁ、暴れてるのを見せられた人たちに取ってはそれでも効果があるみたいね。
全員顔色が見て取れるくらい悪くなってる。
今まで老院という権力の傘を着てた人たちだからね…一気に力がなくなったようなもんか。
逆らう程勇気のある人なんていないだろうしね。
 
それを守り、俺に従う者はチャンスを与えよう。さぁ、決断しろ!
 
そう言うと共に、ズタボロになってた人たちが、一斉に臣下の姿勢を取った。
老院より、今の父さんに着いていく方がいいって判断なんだろうね。
でも…うーん、きっと真面目にしてれば父さんは格好いいんだろうけどなぁ…
普段が普段だから全然私から見たら似合わないのなんの。
後で兄さんにも教えてみよう、どんな反応するかなー?
 
「さて、これで僕の仕事は完了、かな。」
「あ、お疲れ様です、久瀬さん。」
「あーあ、結局私の役目は相談役だけだったわね。」
「でも、きっとミリアムには現地で役に立って貰うと思うよ。」
「ま、その時を期待してましょうか。それじゃぁ、戻るわ。またね、隆。」
 
話が一段落したからか、ミリアムは私の中に戻っていった。
うーん、やっぱりミリアムが中にいると力の制御はしやすいなぁ…
あ、そうだ、1つ気になった事があったんだ。
 
「久瀬さん、久瀬さん。」
「ん?なんですか?」
「久瀬さんも行くんですか?」
「さぁ…誘われたら良い機会ですし行ってみようかとは思いますが…」
 
そう言って唐突に考える顔をしだした。
んー、なんか悩むようなことあったっけ?
 
「どうなるでしょうかね、僕は一応学園では最低の生徒会長と呼ばれてる身ですし。他の方が来る場合、僕は行かない方がいいと思いますし。」
「でも、それって演技なんだし、兄さんの回りの人くらいには打ち明けちゃってもいいんじゃないですか?」
「そう…ですね。一応考えておきましょうか…」
 
そう言って微笑んでくれた。
うっわ、もの凄い貴重なの見ちゃった気分。
 
「千尋ー!父さんの勇姿見てくれたかー!!」
「あー、はいはい。真面目にしてれば格好いいのにどうしてこうウチの父親は…」
 
やることをやり終えたのか、父さんがこっちにやってきた。
暴れるだけ暴れたのか、気分爽快って感じの顔をしてる。
 
「お、久瀬んとこの倅じゃないか。」
「お久しぶりです、相沢の当主。」
 
父さんは久瀬さんに対して、いつも通りあっけらかんとした態度で話しかけた。
でも、久瀬さんは、キッチリと目上の人に対する挨拶で応えていた。
うーん、やる人がやると様になるんだなぁ。
 
「はっ、そんな堅苦しいのはいらん。いつも通りでいいぞ。」
「助かります、健二さん。ご機嫌ですね。」
「あぁ、老院関係じゃ鬱憤が溜まってたからなぁ。解決できてスッキリしたぞ。」
「はは、とりあえず僕の方は全て滞り無く進行中ですね。」
「そうか…お前等には苦労かけたな。」
 
父さんが労いの言葉をかけると、久瀬さんは首を横に振った。
そして、真面目な顔をして口を開いた。
 
「気にしないでください、結果的に事を起こしたのは貴方だ。僕はそれを手伝っただけですし。」
「それでも、サンキューな。」
「健二さんからそう言われると、なんだか妙な感覚ですね。」
「うぉい、そりゃどーいう意味だコラ。」
「さぁ、どういう意味でしょう?僕はこれで失礼しますよ。」
「あ、まてこら!」
「待ちませんよ。暗き闇の抱擁、我に纏いて一つにならん「ダークミスト」
 
おー、言い逃げしたよ。
なんていうか、久瀬さんって兄さんや父さんの相手すると年相応に見えるなぁ。
こっちの面をもっと出せば学園でも人気出ると思うんだけどなぁ…?
 
「ちぃ…性格が大分祐一に似てきやがったな…」
 
あ、父さん悔しそう〜
これもまた珍しい光景だなぁ。
 
「お、そうだ!それなら…けけけ、見てろよ、久瀬の倅め…♪」
「……父さん、何悪巧み考えたの?」
「ん、いやなぁに。そろそろあいつの周りを掻き回してやろうかってな。」
 
周りって言ったら…多分、久瀬さんの一般のイメージの事だよねぇ…?
久瀬さんのイメージ改革でもする気なのかな?
 
「千尋、異形山に行くときは、久瀬の倅も連れてってやれ。」
「え、いいの?本人の了解を取らないで。」
「大丈夫だろ、あいつの事だ。この程度のことは予測してるだろう。それに、あいつの知識は良い勉強になる。周りに取ってな。」
 
あー、確かに。
久瀬さんってそういう知識とか豊富そうだもんねぇ…
なんせ兄さんの友人だし…
 
「まぁ、とりあえず。当日まで、お前は修行続行な?」
「な!そんな〜…」
 
あぁもう!
早く当日にならないかなぁ…
父さんに引きずられながら、そう思う私でした。
   


 

座談会会場



   時雨    「ちょっとした、間の話って感じで書き上がりました、魔剣士シリーズです。」

   佐祐理   「やっぱりまだ佐祐理達の出番はないんですね〜」

   時雨    「まぁ、これで話が進むようになるとは思いますけどね?」

   佐祐理   「ふぇ〜、そうなんですか?」

   時雨    「うぃ、多分ね。」

   佐祐理   「じゃぁ、佐祐理と舞ももうすぐ出てこれるんでしょうか?」

   時雨    「いやまぁ、さすがにもう何話かかかるかもなー、他に登場してないの引っ張りださないと。」

   佐祐理   「そうですかぁ…残念です。」

   時雨    「ま、もうちょいまっとってくださいな。」

   佐祐理   「仕方ありませんね〜」

   時雨    「いやぁ、談笑って和やかでいいなぁ…」

   佐祐理   「色々言われてましたからねぇ、時雨さん。」

   時雨    「まぁ、言われるコトしてるんだからしょうがないんだが…」

   佐祐理   「とりあえず!続き、頑張ってくださいね?。」

   時雨    「はいはい、なんとかやってみますかぃのー」

   佐祐理   「この哀れな作者、時雨さんをどうぞ宜しくお願いしますね〜。」

   時雨    「続き頑張るでよ〜」



   時雨    「で、当然の如くッスか…」

   佐祐理   「あははー、佐祐理はちょっといじわるな女の子ですからー。」

   時雨    「みんなして…勝手にルールを確立していらっしゃる…」

   佐祐理   「駆け巡る風の奔流よ、我が意志を顕現せよ!「ウィングバード!!」

   時雨    「あぁ…慣れてる自分が嫌… ぎにゃあー!!







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