「さて、北川……とりあえずメンバーが決まったんだが……」 「……まぁ、相沢……お前の言いたい事は予想がつくんだが……」 「どうする?多分、異形山に入ったときにずっと隠し通せる保証はないぞ」 「そうだな……」 「ま、少なくとも俺はかわらねーから、安心してぶつかってこい」 トンッ そう言って背中を押してやると、少し北川はよろけたが、すぐに立ち直って前をしっかり見た。 覚悟は決めたみたいだな…… 「ここにいるみんなに話がある……聞いてくれるか?」 さて、どうなることやら…… ![]() 「どうしたのよ、北川君、改まって?」 香里にそう問いかけられると、目に見えて北川の体が硬くなった。 あぁ、やっぱり香里に見られ、拒絶されるのが怖いのか…… 俺もそうだったからな、その気持ちは少なくとも分かる…… 今回、俺は何もしてやれない、全て決めるのは北川だから。 でも、一言くらい声をかけるのは、構わないだろう。 「北川」 「……?」 そんな怯えた子供のような目でこっちを見るな、お前の友達なら大丈夫だ。 それにな…… 「お前、前に言ったよな?俺とお前は、ずっと親友だ。それは変わらないぜ」 そう笑って言ってやった。 一瞬呆けたような顔をしたが、すぐに北川も苦笑いしながら、さっきとは違った雰囲気でみんなの方をまた向いた。 「相沢、サンキュー」 「なんのなんの」 「前に、相沢が自分の正体をみんなに教えてくれたよな?」 みんな覚えていたのか、首を縦に振って肯定の意を表していた。 「まず、俺はみんなに謝らなきゃいけない……俺も相沢と同じく、自分の正体を今まで黙ってきていた」 「え……それ、どういうこと、北川君……?」 「怖かったんだよ、俺も……拒絶されるのが。でも、相沢はこの拒絶の恐怖を覚悟した上で、俺たちに正体を明かしてくれた。それ見て、俺も……少しだけ勇気、出してみようと思ったんだ」 そして、北川が右腕を挙げると、足元に魔方陣が唐突に出現した。 「これが、俺の正体……だ。『プロテクト・リリース』」 足元の魔方陣から、急激にまぶしいほどの光が溢れ出た。 なるほど……前の戦いの時は緊急開放の一種だったのか…… と、いうことは正しい開放プロセスはコレってことか。 「古き闇の種、人狼……これが、俺の本来の戦闘形態だ」 金色の体毛、そして縦に割れた猫科の肉食獣の瞳。 あの時見せた、人狼形態となった北川が、落ち着いていく光の中から姿を見せた。 「…………」 不気味な沈黙……だな。 俺のときも辛かったが、どうにも、北川のこととは言え、あんまり好きにはなれないな、この沈黙は…… 北川は、どんどん耐え切れなくなってきたのか、どんどん目線が下を向いていった。 「……きた」 それに見かねて、俺が北川に一声掛けようとすると、香里が黙って立ち上がって、北川の方に歩いていった。 俯いている北川は気づいていないらしい。 「……うわああぁぁぁぁ!?」 「……本物ね」 ……役どころが違うが、説明させてもらおう。 今の香里が取った行動だが……尻尾を握ったんだ。 それはもう力いっぱい、引っこ抜くんじゃないかっていう勢いで。 「な、な……なにするんだ!美坂!」 「なにって……尻尾握っただけよ?」 なんでもないかのように香里は言い放った。 いやぁ、予想外の反応が起こると、人間ってのは動けなくなるもんだよなぁ…… 「どっかのおバカさんが、今まで隠してたことを白状したみたいだけど、相沢君の時も言ったけど、北川君は北川君でしょ?」 ま、他の子はわからないけどね……?なんて言ってたが、香里はすごいなぁ…… 大抵なら拒絶する場合の方が多いはずなんだが…… 「……美坂」 「それにしても、さすがにそのままだと何か違和感があるわね……」 「あぁ……これは、一応半形態にもなれるんだけど……」 北川は呆けてすでに香里の言いなり状態になっているらしい。 「そ、じゃぁそれになって?」 ……らしいじゃないな、すでに言いなり状態だ。 言われるままに、腕や足はまだ獣のような様相だが、他の部分はほとんど人間と変わらない状態にまで戻した。 ちなみに、なぜかわからんが耳と目、尻尾は人狼状態だったんだが。 「あら、それの方が似合うわよ?金色っていうのは珍しいけど、それはそれでいいんじゃないかしら?」 「そ、そうか……」 「ふわふわだぉ〜」 あ、いかん。 どうやら呆けていた名雪が覚醒したらしい。 目が線のまま、ゆらゆらと北川に近づくとそのままさっきの香里の如く尻尾に抱きついた。 「み、水瀬まで!?」 「あ、ずるいですよ名雪さん!私も触りたいです!」 「え、え?栞ちゃん!?」 わらわらと名雪を皮切りに、女性陣がどんどんと北川の尻尾に群がっていっていた。 あぁ、よかったなぁ……北川。 どうやらお前は受け入れられたらしいぞ? 「う、嬉しいような、そうでないような……頼むから尻尾は握らないでくれ!?」 「それが、普段の俺の状態だ、存分に味わうがいい」 「くそぉ、相沢!見てないで水瀬をどうにかしてくれ!?」 残念ながら、睡眠魔人だぉーは俺にはどうにもできないな。 諦めてもみくちゃにされてろ。 「で、真琴。お前はいかないのか?」 「別に私は尻尾に魅力は感じないわよぅ、だって真琴は元妖狐よ?」 「あぁ……そういえばそうだったな、お前も半形態とやらになれるのか?」 北川とはちょっとケースが違うからな、案外出来ることが違うのかもしれないな。 でも、真琴の妖孤姿は見れるものなら見たい気もするような……」 「できなくわないけど、祐一、見たいの?」 「……もしかしなくても、またか?」 「口に出てたわよ?」 「……はぁ、しばらくシリアスだったからでないかなぁと思っていたんだが」 最近なりを潜めたからこのまま治るかなぁと期待していたんだが、そう簡単にはこの呪縛からは開放してもらえないらしい。 「まぁ、この癖はいいとして、とりあえず見れるもんなら見てみたいな」 「じゃ、今度やってあげるわよぅ」 「期待してる」 真琴とちょっと平和な会話を繰り広げている間に、どうやら北川は完全に馴染むことができたらしい。 普通にみんなと座って談笑しているように見える。 「うし、真琴、みんな連れてちょっと壁際に寄っておいてくれ」 「いいけど、何かするの?」 「北川と、ウォームアップだよ」 真琴の頭を撫でて笑いながら言ってやると、少し気持ちよさそうにした後、みんなの方に走っていき、頼んだとおりみんなを壁際に移動してくれたらしい。 サンキュー真琴、あとでまた撫でてやろう。 「……とりあえず、よかったな、北川」 「……あぁ、安心したよ」 「で、始めるか?」 「あぁ、今ならお前に一撃以上食らわせられそうだぜ!」 いい気迫だ……胸のつっかえが取れたからか。 それじゃぁ……始めるか? 「さて、ここで北川に選択肢をやろうか」 「なんだよ?」 「どの程度の力、出して欲しい?幸いなことにこの本家でなら多少壊れてもすぐ直るからな」 「なら、最初は……4割くらいからで頼む」 4割……ね。 それなら俺は準備は必要ないな。 「それで、相沢、合図は?」 「呼吸で大体できるだろう、俺達なら?」 「……そう、だな」 歩いてある程度の間合いをあけてから北川に思いついたように北川に一声かけてやる。 「武器使ってもいいぞー?」 「そうか?なら遠慮なく」 俺の実力を覚えているからか、北川は遠慮なくソウルブレイカーを発動していた。 「……さぁ、始めよう」 「いくぜっ……」 俺と北川の間の空気が徐々に凍っていくような錯覚。 そして、その空気がひび割れたような音を皮切りに、俺と北川は同時に動き出した。 「ああああぁぁぁぁぁ!!!」 「いくぜ、しっかり耐えきろよ、北川あぁぁぁ!!!」 後書き またあとがきはおやすみですよ! 多分、サボりじゃないですよ!? |