「……なんのこっちゃ」 「無駄よ、美汐〜。だって祐一だもん」 「……ふふ、それもそうですね」 ……なんだろう、よくわからないんだが。 これは間違いなく、バカにされてると考えていいんだろうか? そんな釈然としない感情を抱きつつも、俺たちは合流の為に足を進めた。 「……とりあえず、後で隆や北川に聞いてみるか」 あいつらが答えられるのかは、知らないけどな。 ![]() 「……さすがに、ここまでくれば俺にもわかるな」 崖下にいた俺たちの方がどうやら進軍速度は速かったらしい。 俺たちより少し遅れた方向に、覚えのある気配が複数まとまって行動していた。 「……本当に、真琴が言ったとおりに気配が多いな」 確かに、みんながいる方向には気配が1つ多く感じられた。 ……なんか、この感覚には覚えがあるような気がするんだけどなぁ? 「このままなら、あいつらの方がこっちに来るだろうし、少し休むか」 恐らく舞や久瀬、北川といった気配察知が鋭そうな連中が俺たちのことに気づくだろう。 そう考えた俺は木の枝を拾うと、適当な広さを決めて、その四方に陣を描いた。 「真琴、天野。中に入っててくれ」 陣を書き終わった後、俺はその陣同士を線で結んだ。 そして、その中に入るように2人に言う。 「あぅ?」 「相沢さん、何をなさるつもりですか?」 俺が何をするつもりかわからないといった表情だが、しっかりと陣の中に入ってくれる2人。 2人が入っている間に、俺は崖の方に戻り、岩が露出している部分を空絶で切る。 そして、それを陣に運び込んだ。 「ん、結界魔法」 2人がしっかりと陣に入ったのを確認した後、俺は両手を合わせて、魔力を溜める。 俺が1人旅をしていた時に、よく使った魔法なんだけどなっ! 「……『 その溜めた魔力を、陣の1つに押し付けるようにしてやると、魔力が線の上を走った。 そして、そこからまるで壁が競りあがるかのように、闇色が浮き上がった。 「……よし、コレで完成っと」 しっかりと魔法が完成したのを確認した後、何事もなかったかのように陣の中に入る。 そして俺は武器をいったん全部地面に下ろすと、運び込んだ岩に座った。 「あ、相沢さん。このような場所での武器を手放すのは危険ですよ!」 すかさず天野が声をかけてきたが、俺はにやりと笑って天野の後ろを指差した。 「そんなに気張ってると、長期戦ってのはもたねーぞ?」 俺の指差した先、そこには俺に習うかのように岩の上に座っている真琴がいた。 それを見て、天野も諦めたかのようにため息をついて、用意した岩に腰を下ろした。 「……とりあえず、この魔法の説明はしていただけるんですね?」 しっかりと武器を持ったままの所を見ると、説明されるまで信用してもらえないらしい。 天野らしいその反応に苦笑しながらも、俺は今使った魔法について説明する事にした。 「これは『絶界』って言ってな。敵対してない奴しか入って来れない結界魔法さ」 これの便利なところは、地面に直接陣を書きそこに魔力を流すことで持続性が高いと言う事だ。 一人旅の時には寝る前にこれにちょっと多めに魔力を流しておけば安眠も出来るって優れものだ。 . 「……なるほど、それならば武器を放したとしても問題はなさそうですね」 「あぁ、今は普段より少し強めに張ったから、よっぽどじゃないと突破できねーだろうさ」 敷物でも持ってりゃ良かったんだが、さすがにそんなものは持ってきていない。 まぁ、変わりに岩を用意したんだ。 服が汚れるのくらいは多めに見てもらおう。 「一応『闇』属性魔法だから、あいつらでも気がつくだろ」 「そうですか……では」 そう笑いながら言ってやると、天野はようやく自分の武器を外した。 そこまで信用ないんかなぁ、俺。 「ところで相沢さん、もし異形が襲ってきたらこの結界は防戦のみですか?」 「まだ心配してんのかぁ?」 とりあえず武器はハズしてくれたものの、この結果について興味があるのか天野が聞いてきた。 まぁ、防戦のみなら囲まれるっていう不安もあるんだろうなぁ。 「そんな生温いもんを俺が好んで使うと思うか?」 不適な笑みを浮かべて天野に言ってやると、なぜか引かれた。 ……そんなに目に見えるほど引かなくてもいいじゃないか。 「敵意ある奴がこの壁に触れようとした所で、焼け焦げて終わりだ。言ったろ、『闇』魔法だって」 『闇』属性はその性質上、どうしても攻撃魔法の分類の方が多い。 ルシファーみたいなのは防御というか、身を守るような魔法を持ってるけどな。 「……そのような効果があるのですね」 「あぁ、だからこの中にいる間はゆっくり体力回復できるって訳だ……開け、『ゲート』」 天野に説明しつつ、俺は簡単な詠唱をした。 すると、俺の手が入るくらいの暗闇が生まれた。 「祐一、それなに?食べ物の匂いがする」 暗闇が生まれた瞬間、真琴がいち早く反応した。 ……匂いとか、漏れるような緩い魔法じゃないはずなんだけどなぁ……? 「……鼻が利くのを褒めるべきか、食い意地が張ってると怒るべきか」 そんな事を考えながらも、俺はその暗闇に手を突っ込んで中を漁って目的の物を取り出した。 ここに入ってすぐに仕込んでおいたんだが……他のみんなは合流した後でいいだろう。 「ほら、真琴に天野。これ食っとけ」 そう言って俺はくるみのような木の実を複数個渡した。 その時に自分用にも何個か取り出して置くのを忘れない。 「……あぅ?」 「くるみ、ですか?」 「似てるけど違うな。……まぁ、ついでだしみんなが来るまでに教えとくか」 見た目はほとんどくるみだが、コレの違いは外側もそのまま食べれるって事だな。 これの実の正式名称は「オレンの実」って言って、消費した魔力を少しだが回復する効果がある。 まさかこんな山になってるとは思ってなかったが、見つけた時に採取しておいた。 「と、言うわけで、食っとけ。まだ先は長いみたいだしな」 説明が終わると同時に、俺も口の中に1つ放り込む。 コレの柔らかさを例えるなら……そうだな、干し柿あたりって所かな。 「――――っ!すっぱいわよぅ、コレ!」 「……本当に、少しすっぱいですね」 俺にならって同じように口に頬張った2人から、苦情が飛んできた。 そうだよな、知らなかったくらいだから食ったことないのか。 このすっぱさ、俺は慣れちまったから忘れてた。 「わりぃわりぃ、その事伝えんの忘れてた」 「……そんな酷な事ないでしょう」 顔をしかめながらも、しっかりと俺に対する突込みを忘れない天野。 真琴は思いっきり目を瞑りながら、なんとか飲み干す事にしたらしい。 「仕方がねぇなぁ……えーっと、この辺だったかな」 そんな2人を見て、さすがに悪かったと思い、もう一度暗闇の中に手を伸ばす。 対して時間を必要とせずに、目的の物が見つかった。 「ほら、それ全部食べ終わったらその後すぐコレを食え」 そう言ってさっきよりふた周りほど小さい木の実を2人に渡す。 これは結構前に違うところで採取しておいた実だ。 「……これはすっぱくありませんか?」 「あぁ、だからさっさとオレンの実を食っちゃえ」 まさに疑ってますといった視線を俺に向けてくる真琴と天野。 さっさと食べてしまおうという結論に至ったんだろう、一気に食べきると、俺が渡した木の実を口に入れた。 「……甘いですね」 「これ、おいしい!」 「だから言ったろ?」 意を決した風に食べた2人の顔が、笑顔になった。 今度オレンの実を誰かに食わすときは、同時に渡しておいてやるか…… 「それはクコの実ってな、目立つような効果とかはねぇけど、すごい甘いんだ」 簡単に言えば自然が生み出したデザートって所だろうな。 この実は動物にも人気があるから、ここまで成熟したのが生っているのは珍しい。 「さて……後はあいつらが合流すんのを待つだけだな」 とりあえずの腹ごしらえも終わり、みんなの到着を待つだけになったわけだが…… さすがに、余分なものは何も持ってきてないから暇だな。 「ふぁ……」 暇をどうやって潰そうかと考えている時に、真琴があくびを漏らした。 それに釣られるように、天野も小さくあくびをしていた。 「一応俺が見張りやってるから、みんなが追いつくまで寝てていいぞ?」 確かにいろいろあったからな、精神的な疲れも結構溜まってるんだろう。 慣れてる俺と、慣れてない2人だ。 さすがに一度完全休息を取った方がいいかもしれない。 「あぅ……ゆーいちー……」 わざわざ座っていた岩から、俺の横に移動してきて膝の上に寄りかかってくる真琴。 動物みたいなその動作に苦笑しつつも、無理に避けることはせず、頭を撫でてやる。 「あぅー」 気持ちいいのか、一声鳴いた後、真琴はあっさりと眠りについた。 一番体力が消耗してるのは、下手したらこいつだもんなぁ。 なんせ1度死にかけてるくらいだし。 「ですが……相沢さんには頼りっきりになってしまうのも……」 天野も、眠気がだいぶ来ているんだろう。 完全に俺の意見を拒否する事はしなかったが、動けそうな気配はなかった。 「大丈夫だって、俺は慣れてるしな」 「…………」 「あ、お前らに手を出す心配してるんならそれも心配いらないぞ!」 ――――なんせ真琴が膝の上にいるんだから! そう冗談めかして胸を張って言ってやると、天野は少しだけ笑って「お言葉に甘えます」と一言だけ零して、眠りについた。 「……この調子なら、みんなも合流した後すこし休憩させた方がよさそうだな」 人数が多いとは言え、慣れないことの連続だったんだ。 恐らく精神的な疲れってのは相当溜まっているだろう。 現状までの報告ついでに休憩にすれば、恐らくみんなも休めるかな。 「とりあえず、寝ているお姫様方の安眠を妨害しようとする奴は、消すとしますか」 絶界の陣を書いた時に使った木の枝を、5センチくらいの大きさに折る。 そして、手軽な『炎』の魔力を纏わせると、背後に向かって投擲した。 「これで、よしっと」 俺より気配察知が高い真琴が、少しずつ近寄っていた異形に気づかなかったくらいだ。 よっぽど疲れていたんだろう。 草むらからは絶命した猟犬型の異形が数体倒れてきた。 投擲した木の枝は全て、異形の脳天に突き刺さっている。 「今くらいは、ゆっくり休んでくれ」 異形を排除した俺は、真琴の頭を撫でてやりながら、みんなが合流するまでのんびり待つ事にした。 ま、普段見れなさそうな2人の寝顔を見たってのは役得としておくさ。 あとがきっぽぃもの 真琴が祐一の所に来たのは、俺の趣味だ!
初書き 2008/02/18
公 開 2008/02/25 |