さて、落ち着いて考えてみよう。 一体全体何がどうなって今のこの現状が導き出されたというのか…? 今日は特にこれと言った行動を起こしたわけでもないし… 朝。 いつも通り、名雪を起こすのに苦戦して、走って登校するハメになった。 昼。 いつも通り、北川と馬鹿やりながら授業を寝たりして過ごしていた。 昼飯時にはみんなの作った弁当でいい感じに腹も満たされて至福の時を味わった。 うん、ここまでは何も問題ないよな? じゃぁ、なんで俺は放課後になってから、今になってから… 職員室に呼び出されてるんだ? それも、何故か名雪と一緒に。 あの寒かった冬の日。 まぁ…なんだ、こう言うのもなんだが、俺と名雪は本当の意味でも結ばれた。 秋子さんの様態も充分回復して、日常生活にはなんも支障がないと言われた。 これは喜ばしいことだし、問題ない。 それにあの事故以来、名雪は秋子さんに頼る…いや、依存する事を止めた。 自分でできることは自分でする、当たり前にも思えるんだが、朝、自分で起きてくるようになった。 最初は秋子さんと一緒に唖然としてしまったもんだけどな。 ……ん、話がずれたな。 とりあえず、俺達は今、担任である石橋の前にいる。 名雪は相変わらずぼーっとしているというかなんというか、この事態の異常さに気づいてない。 「さて…と、相沢、水瀬。」 「はぁ…」 「お前等を呼び出した理由なんだが…学校に面白い物が届いてなぁ…」 「面白い物…ですか?」 「なんだろうねぇ?」 はて…? 学校に届くような面白い物? そんなものあったかなぁ? 「ちなみに、送り主は相沢、水瀬両家の保護者からだ。」 「母さんと…秋子さん?」 「お母さんと夏美おばさん?」 はて…秋子さんはともかく、母さんからっていうと不吉な予感しかしないんだが… うーん…あんまり聞きたくない。 「それなんだが、まずは手紙。いや、これは報告書の類と言った方がいいか。」 ほ…報告書…? 「まぁ、簡単に言ってしまうか。まぁ、お前等の婚約の報告だな。」 「はぁ!?」 「えぇ!?」 か…母さんと秋子さんは何考えてるんだよ!! 普通学校に送るなんてことはしないだろう!? 「その驚きようだと、何も聞かされてなかったみたいだなぁ。」 「そ、そりゃぁ知ってたら、そんな事になる前に防ごうとしますけど…」 「まぁ、そうしてくれた方が俺的にも助かったんだがなぁ…」 そらそうだ… 石橋も苦労しそうな状況だろうしなぁ… 「で、俺等が呼ばれた理由ってのは…」 「ま、察するとおりだろうなぁ…」 「そうですか…なら、学校側の処断は?」 「え…どういうこと、祐一…?」 あー…まだ理解してなかったか… いや、それより婚約っていう方で意識がぶっ飛んでたのか…? まぁ、普通ならそうなんだろうけどなぁ… 「落ち着け名雪、学校の謳っている校則の類だかに、不純異性交遊がどうたらってのがあるだろう?」 「うん」 「俺等は今それに引っかかったってことだよ…簡単に言えばな。」 そういうと、やっと大まかに把握したのか、名雪がハッとした顔をした。 いやぁ、こんな時に思うのもなんだが、名雪はやっぱ可愛いなぁ… …いかん、惚れた弱みか。 「つくづく思うが、相沢…お前学力誤魔化してないか?」 「石橋センセ…今は関係ないでしょう?」 「気にするな、俺の好奇心を刺激したお前が悪い。」 「はぁ…」 この教師も大概好感が持てるというか…一本ネジが外れてるというか… 「ふむ、話を戻すか。とりあえず学校側の処断だが…」 「……」 唐突に話を戻されたが、一応意識を引き締める。 場合によっては最悪の結果が導き出されるかもしれない。 「ま、先に言っておくか、お前等、みんなに感謝しろよ?」 「は?」 「お前等の処断は特になし…と、いうか学生共の連携ってすごいなぁ…」 「えぇっと…どういう事かな?石橋先生。」 さすがに俺もわからんぞ。 処断なし…? 普通の学校ならばあり得ないんじゃないか? 「まず、署名が学校全体の生徒の7割分、そしてその他、商店街等からの直談判。」 「はぁ…」 「そんで、一番頭の固いウチの教頭も何故かPTAが一丸となってここに来てなぁ…押し切られた状態だな。」 はぁ…とりあえずなんで商店街やPTAまで? しかも何故か学生からも署名…? 「署名の内容はなんだが…相沢、水瀬両名に対して、なんらかの処断を行った場合学生…この場合は署名した連中だが、学校をボイコット…ようするに学校を成立させなくするという遠回しの脅迫だな。」 「……」 「ちなみに、代表者は北川、美坂、倉田の連名だった。」 あ…あの3人が動いたのか… 倉田は言わずもながな地元超有力代議士。 美坂は2年の学年主席にして、実質的支配者級… 北川は暗部にネットワークを持っているンじゃないかという人脈の広さ… あの3人が同じ目的に向かって動いた場合…学校が揺れ動くだろう… 「……それで…なんで商店街やPTAまで?」 「まぁ、これは俺の予測だが、水瀬、お前の母親が影響してるんじゃないか?」 「私のお母さんが…?」 「お前の母親、商店街のアイドルらしいしなぁ…?」 あぁ…納得。 あの人望、実年齢の伴わない若さ、そして人当たりの柔らかさ。 秋子さんを嫌う人がいるならある意味見てみたいが… 「ま、そういうこって諸々の事情が重なってお前等は処分無しと。でも、一応人前というか学校ではそういうのは控えろよ?」 「うぃ…」 「はーぃ」 とりあえずは…良かったんだろうか…? うーん…よくわからん… 「あー…なんだかなぁ…」 「でもよかったねー、祐一。」 「良かった…でいいのかなぁ?」 あの後、俺達は北川、香里、佐祐理さんにお礼を言って帰宅した。 その際、北川に学食1週間と言われたが…まぁ、今回の事が事だから了承した。 他の2人は名雪がお礼するらしい。 秋子さんにもお礼を言い、母さんにもしぶしぶながら電話して礼を言った。 その際、早く孫を見せてねと言われたのは記憶の彼方に吹き飛ばそう。 そして、俺達は今、俺の部屋でのんびり座っている。 「良かったんだよ、おかげで祐一と一緒にいられるんだもん♪」 「あー…それは確かに…良かったなぁ。」 ベットの上で、壁を背にして座ってる俺に、背をもたれかけさせて名雪が座っている。 簡単に言えば後ろから抱きしめてるんだが… やっぱ柔らかくていい匂いするんだよなぁ… って、待て俺、落ち着け、びーくーるびーくーる。 「うん…でもまぁ、お前とこうしてられるんならそれも悪くない…か」 「うん!」 とりあえず、今度商店街の人たちにもお礼を言いに行くかな… 名雪と一緒に。 「スゥ…スゥ…」 「ん…?あぁ…寝たのか…」 ちょっと物を考えてる間に名雪は夢の中の住人になっていた。 ……あ、いかん…俺も眠く…なって…きた… さて…とりあえずこれで祐一さんと名雪に学校側がどうのこうのと言うことはなくなるハズですね。 ちょっと強引でしたでしょうか… でも、学校側のせいで祐一さんが停学…または退学となってしまうと、名雪が悲しみますし… 姉さんや、商店街の皆さんには感謝してもしきれませんね。 「あらあら」 こっそりと、部屋を覗いてみると、2人が一緒に寝ていました。 この光景を見れただけでも、行動を起こした甲斐があるという物ですね。 風邪を引かないように毛布を掛けてっと… ついでにカメラで撮影しておきましょうか。 ふふ、これは永久保存版ですね。あとで、姉さんにも送っておかないと。 さて、夕飯の支度でもしてきましょうか… 「2人とも、ゆっくり休んでくださいね…」 後日、その写真が食卓に張り出されて、凄い恥ずかしい思いをしたというのは…まぁ、余談だ。 畜生…油断した。 〜あとがきですよ〜 久々に短編を書いてみました、時雨です。 いや、実際日常を考えてみると俺の日常だと当てにならないので、いろいろ想像せねばならんという苦行が… とりあえず、名雪って案外難しい…訂正、全員ムズぃわ…w 基本的にまったり思考な時雨ですので、そんなに激しいギャグとかは書けないです。 でも…うーん、なんかいまいち消化不良…また名雪で短編書くこともあるかなぁ… ゆっくりでも自分の納得できる物を作っていきたいと思います。 んでわ、次は舞の短編でも書こうかな… では! From 時雨 2006/03/29 |