「相沢君?」

……ん?誰か呼んでる?

「相沢君ってば」

へーぃ、起きてますよーっと。











── 出掛けましょう ──











机に突っ伏していた状態を起こす。
ふむ、なかなかに身体が固まっているようだ。
と、言うわけで、揉んでくれ、香里。

「なんで私が?」

いや、そこにいるし?

「疑問系にしてもダメよ、私がマッサージしてあげる理由になってないもの。」

ちぇー、けちぃ。

「ケチで結構」

ふむ、これ以上食いついても無駄か。

「そ、珍しく理解が早いじゃない」

珍しくは余計だ。
俺は常々理解の早い男と呼ばれているんだぞ?

「嘘ばっかり、初耳だわ」

そりゃそうだ、俺も今初めて言ったしな。







んで、何のようだったんだ、香里。

「あぁ、そうそう」

さぁ、遠慮はいらん、言うてみるがよぃぞ。

「なによ、その口調は」

まぁ、気にするな、ちょっとした演出というものだ。

「ふーん、ま、いいけど。とりあえず、次、移動教室よ」

ほぉ…次の授業ってなんだっけか?
っていうか今何限だ?

「呆れた…来てからずっと寝てたの?」

とは言ってもなぁ…今日も名雪の朝のバトルしてたわけで…
今日は一段と手強かったんだよ、苦労を察してくれ。

「あぁ…だから今日は名雪の覚醒率が低いのね…」

いや、それは間違いだ。
名雪は寝ている方が性能がいいと思うぞ?

「そんなことないお〜」

………な?

「……それもそうね。」

で、とりあえず今何限だっけか?

「今は3限、次は4限で科目は…科学ね。」

あーそうか…大して面白くもない実験でもするのかね?
それならふけてやろうかと思うんだが。

「そう言われて、はいそうですかって私が逃がすと思う?」

いや、思わないな。
だからこうして誘ってるワケなんだが?

「へ?」

いや、だから、一緒にサボらないかと言っている。
どうせ1度くらい休んだとしてもお前は問題あるまい?

「それは勿論そうだけど…」

よいでわなぃか、よいでわなぃか。
ってなわけでけってーい。

「あ、ちょっと!相沢君!」






「………」

なー、いい加減機嫌直せよー?

「………………」

むー、祐ちゃん拗ねちゃうぞー?

「はぁ…1限くらいならいいかなーって思ったけど、まさか全部だなんてね…」

はっはっは、甘いな。
俺は1度とは言ったが、1限だけとは言ってないぞ。

「はいはい、偉そうに言わない」

まぁいいじゃねーか、こうして出てきちまったわけだし。

エスコート致しますよ、香里お嬢様。

「ま、こうなったら仕方ないか。しっかりエスコートしてちょうだいね、相沢君?」

ウィ、マダム。
でわでわ、まずは恒例の百花屋にでも行きましょうかね。

「勿論、相沢君の奢りでしょ?」

……今月も厳しいんだけどなー…?

「あら、私を学校から連れだした損害はどうしてくれるのかしら?」

ニヤニヤ笑いながら言いますかね、このお嬢さんは。
仕方ない…そんなに高いのは頼むなよ?

「大丈夫よ、名雪じゃあるまいし」

はぁ、余計な出費だなぁ…







「いらっしゃいませー…って、ゆーちゃんと香里ちゃん?」
「あら、こんにちわ」

どうもー、あれ、マスターいないのか?

「あぁ、マスターならいつも通り奥で黙々とグラス磨いてますよー?」
「そ、ならそこの席にしてもらおうかしら」

あー、マスターとは久々だから俺もそれでいいや。

「はーぃ、でわ、お二人様ごあんなーい」

うぃ、よろしくたのんまー
さてさて、どういう反応することやら?








「サボりか、感心しないぞ。坊主」

開口一番それかぃ、マスターよ。
いやぁまあ、天気もいいしねぇ、ちょっと移り気になるってもんだよ。

「巻き込まれた私は良い迷惑よ」
「ふ、そうは言いながらも顔が笑ってるぞ、嬢ちゃん」

そうそう、人間思ったことには忠実にいかないとな。
じゃないと目の前にいるような自称渋いおじさんのようになってしまうぞ。

「ほぉ…言うようになったじゃねぇか、坊主」

そらまぁ、いっつもここ来てはからかわれてるんだから慣れるって
ただでさえ俺の回りが回り、だしなぁ…?

「まぁな、だが幸福ではあるだろう。全員美人だしな」

あーそれはねぇ…金がかからなければもっといいんだが。
その点、香里や天野、佐祐理さんは俺の懐にも比較的優しいんだよな。

「そりゃあね…栞達があんなにたかってる様なの見せられて私もたかるなんてできないわよ」

その意識が少しでもあいつらにあればなぁ?
無理だろうけど。

「そう悲観するな、仕方ない…今日は多少サービスしてやるよ。どうせ今日もお前の支払いだろう?」

お、マジで?
そりゃあ助かるんだが、店はいいのか?

「おかげさんで、客足は悪くはないんでな」
「じゃぁ、私はティラミスケーキのセットお願いします」

じゃー、とりあえず俺はブラックコーヒー、あとは甘くないケーキでもおくれ。

「はぃよ、少し待ってな」

……ふむ、自分で言っておいてなんだが、甘くないケーキなんてあったか?
俺の知識の中じゃそんなのは無かったような?

「そうねぇ…この店のメニューで言うならシフォンケーキじゃないかしら?」

シフォンケーキ?
あぁ、あのスポンジみたいなやつか?

「あれって生クリームとか付けなかったら結構あっさりしてるわよ?」

ほぉ、それなら期待できるなぁ。
この店クオリティーは高いし。








「………ふふ」

ん、どしたよ?
急に笑い出して、怪しいぞ?

「なによ、失礼ね。ただちょっと…」

ちょっと?

「こんな日もいいかなぁって思っただけよ」

………まぁ、そうかもなぁ。
たまには…な。

「えぇ…たまには…ね」










────後日、今日のことが名雪達にばれて、百花屋に拉致られたのはお約束。




















      〜あとがきですよ〜





現在何かが覚醒した模様な時雨です。
なんとなく、思い立ったが吉日で、とりあえず会話形式なんて物を作ってみました。
いやはや、案外難しいってのがわかりました。
普段は地の文を利用してたんですが、それを無くすというのは面白いかもしれない。
でもまぁ…やりすぎは注意って感じですかねw
理解できる範疇で文章を作るってのを当面の目標でっ!!
んでわでわ、次の作品にてお会いしましょう。

         では!


                 From 時雨  2006/03/31