交友関係には発展しないと思っていた、月村嬢と、バニングス嬢。
その二人が、どういう訳かなのはとともにお茶会にご招待してくれるらしい。

「……と、これだけ聞かされて素直に行っていいものか悩むよなぁ」

特にバニングス嬢が絶対来るようにとなのはに何回も念を押していたらしい。
らしいというのは、なのはとユーノからそう念話で聞いたからなのだが……















二次創作 魔法少女リリカルなのは
『みんな仲良くがいいの!』






















【結局の所、俺は行かない方が楽しめると思うんだがどうかな?】
【だめなの!ラルさんが来てくれないとアリサちゃんが引きずってでもって言い出しちゃうよ?】

とりあえず、無駄な抵抗になりそうな予感はしつつも、なのは達に念話を送ってみた。
まぁ、予想通りの結果というか……さらに最悪の事態まで想定されたわけだ。

【そうはいってもなぁ……】
【まぁ……諦めてきた方が身のためだと思うよ、ラル。君も公衆の面前で引きずられたくないでしょ?】

ユーノとは、なんというか、波長が合ったというか。
そもそも、平均年代からすると精神年齢が見合っていない俺たちが仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
今ではお互い敬語とかを抜きにして話せるようになっている。

【……黙れイタチ】
【僕はフェレットだ!】

世の中、諦めは肝心だと誰かが言っていた。
そう自分に言い聞かせ、諦めて出掛けようとした時に、来客を知らせるインターホンが鳴った。

「……尋ねてくるような知り合いは、いないはず……だよな」

とは思いつつも、出ないのは失礼だろうと思い玄関を開ける。
そこには、オレンジ色の髪をした15-6歳の女の人と、俺と同じくらいであろう金髪の女の子がいた。

「……えっと、どちら様?」

なんというか、姉妹というには似ていないんだが。
それと、金髪の子の方からは、僅かだが魔力が漏れているのがわかる。
と、なると……こっちのオレンジ色の髪をした人も魔導士か、または使い魔か……

「あぁ、あたしたちは隣に引っ越して来たんだけど、こういう時は近所に挨拶するもんなんだろ?」
「そう言うことでしたか、それはわざわざすいません。俺も最近引っ越して来たばかりなんです」

表面上は平静を装っておいて、無難ともいえる対応をしておく。
恐らく、相手は一般人だと思って挨拶に来ている。
もし、こちらも魔導士だと解れば、どういう対応になるかはわからないからな。

「そうなのかい? まぁ、隣同士よろしく頼むよ」
「えぇ、コチラこそよろしく……えーっと」

とりあえず、なんて呼べばいいのかわからずに言い淀んでいると、その様子が面白かったのか軽く笑いながらオレンジ色の髪をした女の人が笑いながら自己紹介をしてくれた。

「あたしはアルフ、それでこっちがあたしの義理の妹のフェイト」
「……フェイト・テスタロッサです」

アルフと名乗った女性に軽く背中を押されるように、前に出て頭を下げたフェイトさん。
その様子を微笑ましく感じながら、俺は自分の名前を名乗った。

「ラインハルト・ヒューゲルです、よろしく。アルフさんにフェイトさん」
「アルフでいいよ、さんなんてつけられるガラじゃないんでね」
「私も、さんはつけなくていいです」
「あぁ、わかった。アルフにフェイトだな。俺の事はラルと呼んでくれればいい」

――――ラインハルトなんて、長いだろ?
そう笑いながら言ってやると、二人とも頷いて答えてくれた。
それからは特に話すことも無かったので、すぐに二人は自分の部屋へと戻っていった。

「……やれやれ、お隣が魔導士ってのは……これまた奇妙な巡り合わせだな」

と、いうよりも……この時期に魔導士がこっちへ来るって事は、何かあるって事だろう。
そして、いま一番その『何か』に該当する物と言えば、ロストロギア『ジュエルシード』……

「ピアス・レクオス、ファミリーネーム・テスタロッサで情報引っ張り出しておいてくれ」
『All right』

やれやれ……先日ようやく一騒動終わったってのに、また新しい騒動でも始まるのかね……
そう考えながら、俺はなのは達との待ち合わせ場所であるバス停へと向けて歩き出した。

「テスタロッサで魔導士か……」

なんかこのファミリーネーム聞いた事あるような気がするんだよなぁ……?
どこだっけ……物忘れするような年でもないはずなんだが……























「うっわ、でっか……」
「にゃははは、やっぱりそう思うよね」

バス停で合流した高町兄妹、兄の方は恭也というらしい。
俺と合流した途端、士郎さんと同じような悪寒を感じたのはなんだったんだろうか。
バスに揺られながら暫く話をしていると、徐々にその悪寒も薄れていったんだが。

「っていうか、これでそう思わないなら感覚が狂ってる事間違いない」

そう言いつつも、すでに慣れている俺がいる訳だが。
そんな俺の言動に苦笑しながらも、なのはがインターホンを押した。

「いらっしゃいませ、恭也様、なのはお嬢様、それと……」

紫色の髪を持つメイドさんが、俺の方を見て困ったような表情をした。
……っていうか月村嬢よ、誘った以上俺の名前くらいは教えといてもいいんでないかい?

「始めまして、ラインハルト・ヒューゲルです。今日はお誘いいただきありがとうございます」

出迎えてくれたメイドさんは、ノエルさんと言って月村家のメイド長をやっているらしい。
ノエルさんの誘導に従って、案内された部屋は、すごかった。

「これはご丁寧に、お話は伺っております。どうぞ、こちらです」

豪華な仕立て上げなのは、家の外装から想像がついた。だから問題ない。
中にいたのは月村嬢とバニングス嬢、そして月村嬢を大人にした感じの女性とメイドが一人。
優雅にお茶をしているのも絵画のようで、あっているから良いとしよう。
だが、それより何より俺が気になったのは……

「ここは、猫屋敷か何かか?」

そう、圧倒的に猫が多い。
足元や、空いている椅子に乗っている数えるのもめんどくさい猫の量。
恭也さんと月村 忍さん――念話でなのはに教えてもらった――は、俺らをそっちのけで見詰め合っているし。

「正直、俺が来る必要性を感じなくなっているんだがどうだろう、バニングス嬢」
「もう来ちゃってるんだから、ごちゃごちゃ言うんじゃないわよ」
「やれやれ……」

ちょっとした冗談で言ったつもりが、バニングス嬢から厳しいお言葉を頂いてしまった。
確かに、来てしまった以上このまま唐突に帰る方が失礼になるか……

「お茶をご用意いたしましょう。何がよろしいですか?」

ある程度、雰囲気が落ち着きを見せた絶妙なタイミングで声がかけられた。
その声の主は、当然というか周りを見ていたノエルさんからだった。

「任せるよ」
「なのはお嬢様は?」
「私も、お任せします」

高町兄妹は何が出ても普通に飲めるというか……
恐らく、ノエルさんが味の趣向を把握しているからこその返答なんだろう。
だが、その場合……

「ラインハルト様はいかがなさいますか?」
「申し訳ないが、あまり甘くない物をお願いしてもいいですか?」

俺の好みと、他の人の好みが合うかどうかという問題が発生する。
この身もそうだが、まだ俺らは平均して幼い。
当然、味覚と言う物も甘い物を好んで、というのは想像に難くない。

「かしこまりました。ファリン」
「はい、了解です。お姉さま」

俺の言いたい事を把握してくれたのか、ノエルさんはファリンさんに名前を呼ぶだけで指示を出す。
それに答えるファリンさんも、少し崩れた感じの敬礼をした。

「じゃあ、私と恭也は部屋にいるから」
「はい、そちらにお持ちします」

テクテクと、ファリンさんがノエルさんに並ぶ前に忍さんが恭也さんの手を取ってそう告げた。
それに優しい笑顔で答えたノエルさんは、隣にファリンさんが来たと同時、二人でお辞儀をして部屋を出て行った。
それに続くように、恭也さんたちも部屋を出て行く。

「おはよう」
「うん、おはよう〜」

とりあえず、当たり障りのない挨拶をしているなのはや月村嬢、バニングス嬢の姿を一歩離れた位置から眺めていると。

「ラルさん、どうして離れた位置にいるの?」
「ほら、早く座んなさいよ」
「お姉ちゃんは戻ってこないから大丈夫ですよ」

などなど、要約すると早く席に着きなさいという指令が飛んできましたとさ。
特に反論することでもないので、軽くため息を抑えながら空いた席に向かおうとした。

「はい、お待たせしました。いちごミルクティーとクリームチーズクッキー、それにアールグレイでーす」

その時、丁度良く飲み物を淹れに行っていたメイドのファリンさんが帰ってきた。
さらに、なのは達のテーブルの下で、何か素早いものが2つ、動くのも見えた。

「キューーーー!」
「にゃー」

何かと思えば、ユーノが子猫に追われていた。
好奇心旺盛な子猫からしたら、ユーノは程よい遊び相手って感じなんだろうなぁ……
そんな2匹を、ファリンさんが避けようとしてくるくる回ることになって。

「あらぁ〜?」

結果としては、ファリンさんが目を回して倒れそうになった。
それを見たなのはと月村嬢がなかなかの反射神経で駆け出そうとしたが。

「よっと」

それより早く、実は俺は行動に移していた。
と、いうか、なんとなく予想できたからすぐに動けるようにしてただけなんだけどな。

「出来れば、すぐに回復していただけるとありがたいんですが?」
「はぅあ〜!! す、すみません!」
「いえいえ、ユーノ、おいで」

ファリンさんが自分の足でしっかり立ったのを確認した後、ユーノに向かって手を差し出す。
すると、ユーノは必死な様子で俺の肩まで駆け上がった。

【あ、ありがとうラル……助かったよ】
【お前も不注意だなぁ……猫屋敷なんだから狙われそうな予測ぐらいは立てられるだろう?】

子猫の視線は、未だユーノに注がれているが、俺が頭を数回撫でてやると興味を失ったかのように他の猫の所へ走っていった。
興味多感なお年頃ってか?

「それで、いつまで君たちはその体制でいるつもりかな?」

なのはと月村嬢は、椅子から若干腰を上げた所謂空気椅子状態のまま固まっていた。
あれって、結構辛かったりするんだよなぁ、主に足の筋肉が。

「しっかし、相変わらずすずかん家は猫天国よね」

あの後、正気を取り戻したなのは達は、場所をテラスから庭へと移した。
そこにもまぁ、いるわいるわの猫軍団。
バニングス嬢の台詞にも、納得がいくというものだ。

「でも、子猫たち可愛いよね」
「うん。 里親が決まっている子もいるから、お別れもしなきゃならないけど……」

お別れと言う言葉に反応して、なのはも寂しそうな表情を見せた。

「そっか、ちょっと寂しいね……」
「でも、子猫たちが大きくなっていってくれるのは嬉しいよ」

だが、すぐに月村嬢が笑顔で続けた言葉になのはも再び笑顔を見せた。
子猫がじゃれ付いてくるのを、手であやしながら俺はその様子を眺めていた。
最初は1匹だけだったと思うんだが、気付けば俺の周りには猫だかりが出来ている。

「うわ、すごい状態ね……」
「そう思うのなら、いくらか引き受けてくれないかね、バニングス嬢」

さすがにこのまま行くと、間違いなく俺は猫に占拠される。
そうなる前にとなのは達に助けを求めたが、微笑ましく見られるだけで、どうやら救援は望めないらしい。

「いいじゃない、そのくらい。っていうかなのはは名前で呼んで、どうして私たちはその呼び方なの?」
「君達から正式に呼び捨てで構わないと聞いた記憶がないからな」
「そういえばそうだね? 私は最初の方になのはで良いって言ったんだっけ」

俺の流儀として、呼び捨てで良いと言われない限りは大体こんな調子だ。
まぁ、明らかな年上や、恭也さんたちみたいに苗字が同じ人がいたら多少変わるが。

「なのはが名前で呼ばせてるんだし、私もアリサでいいわ」
「お姉ちゃんと被っちゃうので、私もすずかでいいですよ」
「……了解した、アリサに、すずかだな」

別段会うことも無いような気がするが、呼んで良いといわれたのだからいいとしよう。
そう結論付けて、確認のために名前を呼んで見たら、何故かなのはが嬉しそうにしていた。

「お友達が増えるってのは、いい事だと思うのです」

……だ、そうだ。
いつの間にやら、俺もなのは達のお友達にカテゴライズされたみたいだ。
まぁ……それも悪くは無いか。

――――ドクンッ

「……っ!」
「…………」

今までの空気が一変して、俺たちのすぐ近くから魔力反応が発生した。

【なのは! ラル!】
【うん、すぐ近くだ!】

なのは達も感じ取ったのだろう、念話がこっちにまで伝わってきた。
この子達、念話のチャンネルをオープンにしたままなのだろうか?
もしくは、チャンネル設定が可能ってのを知らない可能性もあるか。

【とりあえず、どう動く?】

今、この場には無関係なアリサとすずか、そして多数の猫がいる。
猫は自由意志の元で歩き回るからまだ問題ないが、アリサ達がいる以上どうやって動き出すのか?
それ以前に、なんともまぁ間の悪いロストロギアなこって……




















      〜 あとがき 〜


いやまぁ書くことねーよ、この回、ってか前編。



          それでは、このへんで。


                          From 時雨


初書き 2008/11/30
公 開 2009/01/16





[ B A C K ]