さて、アルフから聞いた事の顛末。
次元振を起こす力を秘めたロストロギア、ジュエルシード。
それを求めているプレシア・テスタロッサ。

「いくつか分かった事もあるが、プレシアがそれを求める理由がわからんな……」

フェイトの目的は、母親がそれを欲したからというある意味純粋な理由だった。
なら、母親であるプレシアはそれを何に使うのか。
それを、ある程度予測を立てて行動した方がいいだろう。















二次創作 魔法少女リリカルなのは
『気持ちはすれ違う、なの?』






















「こっちでは、ミッドの情報を拾うのにも結構時間がかかるか……」

ミッド用の回線に切り替えれば、情報は引き出す事ができる。
だけど、それで引き出した情報は、ミッドで調べたときに比べると足りない。

「ピアス・レクオス、一度ミッドに戻るぞ」
『All right』

そうなると、ミッドの無限書庫へ行った方が、調べやすくて早いだろう。
あの膨大な量を調べるのは、ある意味メンドクサイが……

【ユーノ、聞こえるか?】
【あれ、どうしたのラル】

とりあえず、少なくとも2〜3日は時間が掛かると考えた方がいいだろう。
その間、なのは達には2人でジュエルシード集めを頑張ってもらわにゃならん訳だ。
それについて、意気消沈して聞いているかわからないなのはじゃなく、ユーノに念話を送る。

【所用で2〜3日この97管理外世界を留守にするんだが、その間大丈夫か?】
【あぁ、うん。なのはの調子も良くないみたいだし、たぶん大丈夫だと思う】

……よほど、アリサに言われた事がこたえたようだな。
俺が戻ってきた時に、まだ状態が変わっていなければ、少しだけ手を出すか。

【そうか……まぁ、無茶しない程度にな。俺も出来るだけ早く戻るようにする】
【わかったよ】

さて、あまり長い時間をこの97管理外世界から留守にするわけにもいかんな。
面倒見なきゃならんような少年少女もいることだし……

「ピアス・レクオス。長距離トランスポーター起動」
『All right. Long Range Transporter』

ついでに、無限書庫で観測者についての情報も探ってみようかね……
白銀の魔法陣が部屋に満ちていく中、俺はそんな事を考えつつも、ミッドへ向けて転移した。







闇の帳が降りた街中、その一角にあるビルの屋上に2つの影が降り立った。

「大体このあたりだと思うけど、大まかな位置しかわからないんだ」

2つの影のうちの片割れ、フェイトが眼下に広がる風景を見ながら言う。
それを、もう1つの影の正体であったアルフが、ため息を尽きながら自分の意見を述べた。

「さすがにこれだけゴミゴミしてると探すのも一苦労だぁね」
「ちょっと乱暴だけど、周辺に魔力流を撃ち込んで強制発動させるよ」

フェイトがバルディッシュを構え、それを実行しようとすると、それを見たアルフが止めた。

「あ〜、まった。それ、あたしがやる」
「大丈夫? 結構疲れるよ?」

それを聞いたフェイトは、アルフに対して心配そうな表情を見せ、言った。
だが、それに対してアルフは自信を十二分に含んだ声で、フェイトへと言葉を返す。

「ふ……このあたしを誰の使い魔だと? それに、ラルが治してくれたって言っても、病み上がりなんだから無茶しちゃダメだよ」

最初に出てきたのは、アルフが自信を持っている主人の使い魔としての台詞。
次に出てきたのは、フェイトの傷を治してくれたラルが帰る前に言った一言。


『俺の治療はそんじょそこらの治癒とは違うが、無茶な高機動戦は控えるように。 蓄積された怪我の影響は、そう簡単にはぬけねーんだからな』


フェイトはそれを聞くと、安堵と苦笑の2つの表情を見せながら、アルフの言うとおりに任せることにした。

「じゃあ、お願い」
「そんじゃあ!!」

アルフが四肢に力を込めると同時に、オレンジ色の魔法陣が展開され、周辺へと魔力流が流れた。
街を夜とは違う闇が包み、空からは魔力そのものである雷を降らせる。

「こんな街中で強制発動!? 広域結界……間に合え!!」

その魔力にすぐに気付いたなのはとユーノの2人。
ユーノはすぐに道のへと躍り出て、エメラルドの結界魔法を発動させる。

「レイジングハート、お願い!」

なのはもまた、魔力が発生している地点へと向けて走っていた。
その途中、レイジングハートをセットアップし、その服装をバリアジャケットへと変化させる。
それが完了すると同時に、ある1箇所から魔力光の柱があがった。

「見つけた」
「でも、あっちも近くにいるみたいだね」

フェイト達がジュエルシードを確認すると同時に、ユーノが展開していた広域結界が作動する。
周囲から再び色が抜け落ちて行き、街と言う空間の1部が隔離された。

「早く片付けよう……バルディッシュ!」
『Seeling Form Set up』

フェイトが命じると、それをすぐにバルディッシュが再現してみせる。
封印するための形態、シーリングフォームを展開すると、その先端に魔力を貯めた。

【なのは、発動したジュエルシードが見える?】
【うん、すぐ近くだよ】

一方のなのは達も、発動したジュエルシードの姿を確認していた。
それを改めて確認するかのようなユーノの問いに、なのはは肯定の意思を伝える。

【あの子達も近くにいるんだ……あの子達よりも先に封印して!】
【わかった】

ユーノが行った事を、なのはとレイジングハートはすぐに実行し始める。
レイジングハートがすぐさまシューティングモードへと移行し、こちらも魔力を貯めていく。
放たれた2人の魔力は、ジュエルシードへと同時に着弾した。
2つの魔力を受け、空中へと浮かび上がっていくジュエルシード。
その表面には【]T]】というナンバーが現れていた。

「リリカルマジカル!」
「ジュエルシード、シリアル19!」
『封印!』

桜色と金色の魔力が、またも同時にジュエルシードを貫く。
拮抗していたお互いの魔力は、やがて飽和を迎えたのか光と共に拡散した。
中空へと停滞したままのジュエルシード。
それを求める2つの存在は、それを手に入れるために争う。

「なのは、早くジュエルシードの確保を!」

ユーノの催促とともに、アルフが屋上から飛び降り、なのは達へと強襲する。

「そうはさせるかい!!」

それを見たユーノが瞬時に展開した防御魔法でアルフの攻撃を防いだ。
だが、その1撃が強力だった為か、防御魔法はガラスのように崩れ落ちていく。
なのはは、崩れ行く防御魔法の外にフェイトの姿を見つけた。
なのはは、フェイトへと歩み寄ると、しっかりとした意識を持って声をかけた。

「この間は自己紹介できなかったけど。私、なのは。高町なのは。私立聖洋大付属小学校3年生」
『Scythe Form』

なのはの自己紹介。
だが、フェイトはそれに反応する事無く、バルディッシュを構えた。
それに応じて、なのはもレイジングハートを構える。

――――どうして、そんなに寂しい目をしているの?

お互いの武器を構えた状態のまま、なのはは心の中でそれを問いかける。
2人の間に会話が成立しないまま、魔導士達が織り成す激戦が始まった。
お互いの砲撃が、空中で激しく交差する。
フェイトがなのはの後ろを取ったかと思えば。

『Flash Move』

攻撃される前に、なのはがフェイトの後ろへと回りこむ。

『Divine Shooter』
『Defencer』

有利なポジションを勝ち取ったなのはが、魔法を撃つと、フェイトはそれを食い止める。
距離を置いた2人が、デバイスをお互いに向けて構えあった時、なのははフェイトへと語りかける。

「フェイトちゃん!」

名前を呼ばれた事で、驚いたような表情を見せ、動きを一瞬止めるフェイト。

「話しあうだけじゃ、言葉だけじゃ何も伝わらないって言ってたけど、だけど……だけど、言葉にしないと伝わらないことだっていっぱいあるよ!」

なのはは、心の叫びをフェイトへとぶつけていく。
それを聞いたフェイトは、顔を俯かせると何かを口にしようとした。

「……私は」
「フェイト! 答えなくていい!!」

だが、アルフの声がフェイトの言葉を止めた。
空中にいるなのはへと向けて、少しばかりの怒りを込めた声でアルフは続ける。

「優しくしてくれてる人たちのとこで、ぬくぬく、甘ったれて暮らしてるガキンチョになんか……何も教えなくていい!!

それを聞いたなのはが、ショックを受けたかのような表情をみせる。

「あたし達の最優先事項は、ジュエルシードの確保だよ!!」

アルフの声を聞き終えたフェイトは、なのはと向き合う事を止め、ジュエルシードへ向かって急降下して行く。
なのはもフェイトに続くかのように動き出した。

――――ガチンッ!!

お互いのデバイスが、ジュエルシードを挟んで重なり合う。
驚いた表情を見せる4者の時間が止まり、2人のデバイスにはヒビが入っていく。
ジュエルシードはその衝撃に激しい光と衝撃を放ち、2人を吹き飛ばした。

「大丈夫? 戻って、バルディッシュ」
『Yes, Sir』

傷ついた自分のデバイスを見たフェイトは、心配した表情を見せながらも待機状態へと戻す。
返って来たデバイスの声は、損傷が酷いのだろう、ひび割れて聞こえた。

「っ……」

待機状態へと戻ったデバイスを収納すると、フェイトは今だそこにあるジュエルシードを見つめる。
そして、ジュエルシードへと飛び、その手に握り込んだ。

「フェイト、ダメだ! 危ないよ!!」

握られたジュエルシードは、光を放ちフェイトの手の中で暴れる。
アルフの叫びが響いたが、今のフェイトにそれを構う余裕はなかった。

「止まれ、とまれ。止まれ止まれとまれ!!」

魔法陣が展開されたが、拮抗する魔力はバリアジャケットを貫いてフェイトに疲労と手のひらに傷を負わせる。
時間にして幾ばくも無いウチにフェイトの競り勝ったのか、ジュエルシードの光は消え鼓動も止まって行った。

「フェイトぉ!」

フラフラと立ち上がり、今にも意識を失いそうなフェイトに向かってアルフが駆け寄る。
倒れ込むフェイトを支えると、アルフは鋭い目で2人を見つめた。
なのははそれに驚き、ユーノは厳しい目でそれを見つめ返す。
アルフはそれだけで何も行動を移さず、飛び上がりビル伝いに去って行った。







戦闘を終えたなのは達は高町家へと戻り、レイジングハートの損傷状態を調べていた。
お菓子と飲み物を持って現れたなのはが、自分のデバイスの状態を聞くと、ユーノは自信が無さそうに答える。

「明日には、なんとか……なのはは大丈夫?」
「うん……レイジングハートが守ってくれたから」

傷つき、今は傷を癒す事に専念しているデバイスを見てなのはは静かに呟いた。

「ごめんね。レイジングハート……」

なのはの心には、レイジングハートともう1つ、別の心配事があった。
それは、気を失ったであろうフェイト達の事。
浮かない表情が晴れる事は無く、なのはは外へと視線を彷徨わせた。
まるで、誰ともなく答えを求めるかのように……
だが、それに答えてくれる存在は、今のなのはの傍にはいなかった。

「……ラル、怒るかな?」

同日、同時刻。
なのは達がレイジングハートの損傷を調べている時、フェイトとアルフは傷の治療を行っていた。

「ちょっと痛むかもしれないけど、我慢してね、フェイト」

たどたどしい手つきで消毒液をかけ、ガーゼと包帯で治療施すアルフ。
時折起こる痛みに耐えながら、フェイトは静かに呟いた。

「ラルのあの性格を考えると、怒りながらも治療してくれそうだねぇ……」

普段のラルを思い出し、苦笑しながらフェイトに答えるアルフ。
確かに彼ならば、怪我した理由を聞いたら怒るだろうが、怪我をそのまま放っておくとは思えない。

「……明日は母さんの所に報告に戻らなきゃいけないから、早く治さないと。心配かけちゃう」
「心配……するかねぇ、あの人が……」

フェイトの言葉に、眉をしかめながら答える。
アルフの考えているプレシアは、フェイトが怪我をしても心配などしないように思えていたのだ。

「母さんは少し不器用なだけだよ」

だが、フェイトは母親の事を信じているのか、アルフの台詞にも少し困ったような表情を見せて否定した。
不満そうな表情を見せるアルフを手当てされた手で優しく撫でながら、フェイトは笑いかける。
そんな主人を心配させないためか、アルフは明るい表情を作ると言った。

「こんな短期間にロストロギア、ジュエルシードを4つも集めたんだし、褒められる事はあれ、叱られる事なんてまずないよね!」
「……うん、そうだね」

ゆっくりとフェイトが見上げた先……そこには、仲睦まじい2人が写った小さな写真立てがあった。




















      〜 あとがき 〜


フェイトよりの視点が多い時雨です、どうも。
いやまぁ、なのはの面は多くあれど、フェイトの面ってのが少ない気がしただけです。
決して俺のフェイトスキーがそうさせたなんて事はたぶんあります。

さて、俺としては前代未聞、主人公が話の途中でメインから外れました。
いやまぁ、やりたい事の布石みたいなもんなんですが。
次は、黒いくてちっちゃくてショタっぽぃのが初登場するシーンですね。
うーん、どんな配役にしてやろうかしら。



          それでは、このへんで。


                          From 時雨


初書き 2008/12/18
公 開 2009/02/01





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