俺が管理局、アースラのクルーに雇われてから数日。
なのはたちを俺の協力者というポジションにつけ、ジュエルシードの回収を行ってきた訳だが。

「あれから回収が終わったのが[、\、]の3つ、フェイトたちはUとXの2つ……」

残っているジュエルシードも気付けばあと6つという所にまで来る事が出来た。
はてさて、俺の方の準備は大体整って来ている訳だが……















二次創作 魔法少女リリカルなのは
『準備は万端、なの?』






















「おーい、いるんだろ? 開けてくれないか」

管理局での話し合いが終わった後、俺は管理局の目に入らないように気を使いながらフェイトたちの家を訪ねた。
相変わらずインターホンを押しても、すぐには反応が返ってこない。

「……ラルかい」

声をかけて少し待つと、人間形態になったアルフが扉を開けて俺を入れてくれた。
入る俺も俺だか、そう簡単に知らない人を家にあげるのはお兄さんはどうかと思うぞ?

「さて、あの後のフェイトの状態も気になると言えば気になるんだが……」

勝手知ったるなんとやらと言わんばかりにフェイト家のソファーに座る俺。
その様子を呆れながらも、アルフは対面の位置に座った。
フェイトが出てこない所を見ると、休んでいるのかもしれない。

「フェイトなら、あの管理局の坊やに喰らった魔法で疲弊してるから、今は休んでるよ」
「そうか……非殺傷設定だったようだから、少し休めば回復するだろう」

フェイトを捕縛するために非殺傷設定の魔法を使っていたんだろう。
魔法が直撃したにしては、外傷を負ったようには見えなかったからな。

「本当ならフェイトから聞きたいんだが……無理に起こすわけにもいかないか」

ひとまず俺は、アルフに俺の立ち位置が若干変わった事。
なのはやユーノたちに加え、時空管理局までもがジュエルシードの回収に加わる事。
そして、このままフェイトたちが行動を起こせば、最終的には武力介入してくるだろうという予想を伝える。

「少しだけしかフェイトの様子は見れなかったが……妙に動きが悪く感じた」

ジュエルシードへと向かったフェイトの動作が、前と違うように見えた。
なんて言えばいいんだろうか……そう、例えるなら強いダメージを受けた後のようだった。
俺の一言を聞いて、アルフが目に見えて分かるくらいの動揺を見せる。

「なのはたち相手にそこまでダメージを貰うとは思えない」

いくら才能があろうとも、なのははまだ魔法のイロハも理解しきれていない新人魔導士だ。
実戦経験の差までは分からないが、魔導士としての地力はフェイトと比べるまでもないだろう。

「そうなると、お前の反応から察するとすれば……件のプレシアか」

何か思い出したくないモノを必死に抑えるかのように、アルフは耳を垂らし、頭を抱えた。
アルフの行動が、全て答えを物語っているな……

「フェイトの様子、見させてもらってもいいか?」
「こっちだよ……」

話を変えるかのように、俺は意識して優しい声を出してアルフへと問いかける。
俯きながらも、アルフは小さく呟いてフェイトが休んでいるであろう部屋の方へと歩き出した。

「……これはまた、手ひどくやられてるな」

ベットへと横たえられたフェイトの身体は痛々しく感じるほど包帯だらけだった。
クロノ執務官の攻撃だけなら、ここまで包帯を巻く必要はないだろう。
よほど深い眠りについているのか、俺たちが近くに来ても起きる様子はない。

「アルフ、前に渡した薬はまだ残ってるか?」

しかし、寝ていても傷が痛むのだろう。
その寝顔は決して安らかなものではなく、苦痛の色を濃く滲ませていた。

「あぁ、うん……まだあるよ」
「よし、それ持ってきてくれ」

眠っているというのに、バリアジャケットを纏ったままのフェイトを見て、俺はため息を抑え切れなかった。
まったく、休む時くらいは本当に身体を休めてやらないと、いつか限界が来るだろうに。

「あとは、温めのお湯と清潔なタオル、それと着替えだな」
「お湯とタオル……と、これでいいかい?」
「あぁ、十分だ。薬以外のそれを使う時は、お前に頼むよ」

さすがに、男の俺が着替えやらをする訳にもいかんでしょ。
そう冗談めかして言ってやると、アルフからも少しばかり苦笑いではあるが笑みが出てきた。

「さて……Get Set Ready」
『All right. Healing Mode Set up』

待機状態にあった相棒を、ヒーリングモードで起動する。
起動が完了すると同時に、俺の服もバリアジャケットへと変換された。
バリアジャケットの袖を捲くりながら、俺はフェイトを中心として魔法陣を展開させる。

「治療術式・開始」
『Yes, Sir』

大体の治療を終え、先程より静かな寝息をたてるフェイトを確認しながらも、俺は居間のソファーへと戻る。
その後に、フェイトの頭を優しく撫でてからアルフも付いてきた。

「ありがとね……ラル」
「そこに患者がいて、治す術を持つ俺がここにいる。やれる事をやっただけだから礼を言われる程じゃない」

よほどフェイトが落ち着いたのが嬉しいのか、アルフが尻尾を揺らしながらそう言って来た。
それに片手をひらひらとさせて答えながら、俺は冷たいお茶でもくれないかという。

「そういや俺が今日、ここに来た目的を話していなかったな」

氷とお茶の入った冷たいグラスを傾けながら、俺はアルフへとそう告げる。
俺が来た目的は大きく言ってしまえば3つ。
1つは、俺やなのは、フェイトたちの立ち位置がどうなっているかを予め教えておく事。
もう1つは、違和感の感じたフェイトの様子を見に来る事。
そして、最後の1つが俺の本題と言ってもいいだろう。

「プレシア・テスタロッサの居場所を、俺に教えてくれないか」
「……それは―――――――」
























結局、アルフの口からプレシアの居場所は聞きだせなかった。
頑なに口を閉じ、首を横に振るだけだった。
そこまでされて強引に聞きだす気にはなれない。

「難しい顔をしているね」
「……クロノ執務官か」

プレシアの居場所は依然不明のまま、俺は手を出しあぐねていた。
それが顔に出ていたんだろう、いつの間にか来ていたクロノ執務官に見られたらしい。
考え事ついでに、アースラに寄り道していたのは失敗だったかもしれないな。

「ジュエルシードも残り6つだ、そこまで難しい顔をする必要もないと思うが?」
「俺が考えてたのはそっちじゃない。個人的な用事みたいなもんだ」

どうやら、クロノ執務官は俺の表情を見てジュエルシードの事だと思ったらしい。
別に考えている事を教えてやるつもりはないが、間違いは訂正しておかないとな。

「それにしても……君がそんな実力を持っているには見えないな」
「リンディ艦長から聞いたのか?」
「艦長から聞いたのは、ある程度の概要くらいだ。あとは自分で調べろと言われたよ」

肩を竦めながらも、クロノ執務官はそう言って来た。
まぁ、管理局からすればあんな出来事をそうそう人に言って回るわけにもいかないだろう。
俺にはあまり関係のない事だけどな。

「俺に聞いても、恐らくリンディ艦長と対して変わらない話しか出てこないぞ?」
「……だろうね」

多少なりとも期待はしていたのだろうか、クロノ執務官は俺の台詞を聞くと残念そうな雰囲気を見せた。
だがそれも一瞬の事で、雰囲気を変えたクロノ執務官。

「じゃあ、別の事を聞かせてもらおう」
「……なんだ?」
「先の戦闘の映像から、君たちの魔力の平均値を測定させてもらった」

いつの間にそんな事をしていたのだろうか?
クロノ執務官は思い出すように指を額に当てながら続ける。

「高町なのはで127万、黒い魔導士が143万……最大出力時はその3倍はいっているだろう」

なのはもフェイトも、あの年齢でAAAクラスの魔導士なのか。
そんな違った所で感心している俺とは違い、クロノ執務官は訝しげな表情を見せる。

「……だが、君から測定された数値は21万」
「まぁ、そんなモンだろうな」
「僕がかけられたバインド、21万程度の魔力のハズなら、僕のブレイクが効かないはずがない」
「随分とまぁ……自信たっぷりに言うな」

そこまで言ってくれるとは、さすがの俺も考えてなかったぞ。
まぁ、それだけ自分の力に自信を持っているって所か。

「これでも執務官という職についているんだ、実戦経験も少なくないつもりだ。そんな僕を拘束できる君の魔力がそんな低い数値なのか?」
「それで? 回りくどい事はいらないから、本題で来いよ」

頭の中では、探偵に追い詰められる犯人ってのはこんな感じなのかと思いつつ。
そんな事は毛ほども見せずに、クロノ執務官の言葉を待つ。

「そうか……なら聞こう。君は、意図的に魔力を少なく見せる事ができるのか?」

……着眼点と、それから先の推理力もなかなかのようだ。
リンディ艦長から聞いたという可能性もあり得るが、そこまで言えるだけ大したもんだろう。

「……さて、どうかな?」

しかし、俺が選んだのは肯定でも否定でもなく、曖昧な返答を返すだけだった。

「ただ、たまたま俺のバインドが上手く解けなかった可能性もあるし、クロノ執務官の言うとおりに俺は魔力を意図的に少なくできるかもしれない」

クロノ執務官の話を聞いたところでは、いまだリンディ艦長から聞いただけの情報しか持っていない。
それなのに、俺が答えを教えてしまうのはつまらないだろう。

「っ! 答える気は、なさそうだな」

呻くように言うクロノ執務官に、俺は意地の悪い笑みを浮かべて見せた。
まだこの事件を解決するには少しばかり時間がかかるんだ。
俺が協力しているその間に、自分で調べ、答えを紡いでもらおうじゃないか。

「クロノ執務官、あんたが自分で見つけた答えを持ってきた時、俺もそれに答えてやるよ」

俺はそう締めくくると、クロノ執務官に背を向け地球へ戻るためにトランスポーターへと向かった。
これだけ挑発的な事を言われて動かないような人間なら、俺が答えを教えてやる必要もないだろう。

「くっ……なら、君が唖然とするような答えを見つけて、改めて問い返してやるさ」
「ははは、それを期待して待たせてもらうとするよ」

だが、俺が地球へと戻るより先に、艦内に鳴り響く警報音とレッドアラート。
今、この時空航行艦アースラがアラートを響かせるような事態。
それは、ジュエルシードに関してのアクションか、アースラに対しての攻撃を意味する。

「……! まさかもう1組の探求者が動いたのか!?」

音を聞いた瞬間にブリッジへと向けて駆け出したクロノ執務官。
それを目で追いながら、俺もゆっくりとブリッジへと移動を開始した。

「状況は!」

俺がブリッジに入ると丁度よく、リンディ艦長が集まったクルーに対して状況を聞くところだった。
艦橋のディスプレイには、魔力を感知した現場が映し出された。

「探査区域海上にて、探求者による大型魔力行使反応を探知しました」

映し出されている映像には、海上で魔法を使おうとしているフェイトたちの姿が映し出されている。
街には広域結界が張られ、前に俺が言った事はどうやら守ってくれているらしい。

「頼むから、病み上がりで無茶はしてくれるなよ……?」

俺の願いは小さな言葉となって、自然と口から零れ落ちていた。




















      〜 あとがき 〜


あははは、なのは出てねー!!
……まぁ、今回は閑話みたいな感じなんで仕方が無い。
どうせ次の話では特大の砲撃ぶっ放すんだからオッケーオッケー。

とりあえず、主人公がなんか裏がありまくるような存在になってる?
おかしぃなぁ、もっとお馬鹿キャラで原作かき回すようにしてやろうかと思ったはずなのに。
キャラが勝手に動き出すのは、俺の仕様だからいいとしますかー
はてさて、プレシアをどうやって扱ったものか、それが問題だ。



          それでは、このへんで。


                          From 時雨


初書き 2009/01/07
公 開 2009/02/07





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