アースラから飛び出したなのはとユーノ。
2人は、フェイトたちがいる遥か上空から落ちるように向かっていた。

「いくよ、レイジングハート」

その落下の浮遊感に身を任せたまま、なのはは自身の相棒へと声をかける。
ユーノもまた、バリアジャケットでもあるスクライアの民族衣装を展開させていた。















二次創作 魔法少女リリカルなのは
『目標、補足、なの?』






















「風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に、不屈の心はこの胸に!レイジングハート、セットアップ!!」
『Stand by Ready』

セットアップの光に包まれながら、なのはは結界の中へとゆっくりと降り立つ。
そして、その存在に気付いたフェイトたちもまたそれぞれの行動に出た。

「フェイトの……邪魔をするなぁぁ!!」

なのはの出方を窺うフェイト。
邪魔をしに来たと考え、フェイトのために乱入者を排除しようと動くアルフ。
だが、突撃してきたアルフはユーノが展開した魔法陣に阻まれ動きを止めた。

「違う! 僕達は君たちと戦いに来たんじゃない!!」

その間にも、アースラにいるクロノからの念話は止まる事無く続いていた。
だが、なのはは謝罪はしたが行動を止めるつもりは無さそうだった。

「まずはジュエルシードを停止させないと、まずい事になる」

目前にまで迫っていたアルフに構う事なく、ユーノはチェーンバインドで竜巻を拘束していく。

「だから今は封印のサポートを!!」

バインドで拘束された竜巻は、少しばかりその威力を落とした。
言葉どおり、なのはたちが邪魔しに来たわけではないのかと、アルフは真意を探るような視線を目の前でバインドを展開しているユーノへと向ける。

「フェイトちゃん! 手伝って、ジュエルシードを止めよう!?」

なのはは、フェイトへと近づくとレイジングハートを構えなおす。
レイジングハートのコアの部分から出てきた桜色の力が、フェイトの持つバルディッシュのコアへと流れ込んでいく。
少しの間をおいて、かすれ気味だったバルディッシュの刃が再び力を取り戻した。

『Power Charge』
『Supplying Complete』

なのはの行動の真意がつかめないフェイトが、なのはの方へと顔を向ける。

「2人できっちり半分個」

それを他意のない真剣な顔をしたなのはが頷いて答えた。
そして2人が視線をずらした先……
そこには、バインドで竜巻を止めるために苦戦しているユーノの姿があった。

「くっ!」

エメラルドの鎖が千切られる寸前、新たにオレンジ色の鎖が竜巻を強く拘束した。
信じてくれたのかは定かではないが、アルフもまたユーノに対して協力する姿勢を見せてくれた。

「ユーノ君とアルフさんが止めてくれてる。だから、今のうち!」

ユーノとアルフによって動きを小さくした竜巻。
それをしっかりと確認したなのはが、フェイトに向かって声をかけた。

「2人でせーので一気に封印!!」
『Shooting Mode』

竜巻が放つ雷撃を回避しつつ、なのはは今までよりも大きな魔法陣を展開する。

「ディバインバスター、フルパワー……いけるね、レイジングハート」
『All Right. My Master』

その行動をどうしていいのか判断がつかず見守っているフェイト。
だがその時、今までその場にいなかったハズの存在の声が、全員の耳に届いた。

「何ボケッとしてやがる。こんな物騒なもん、さっさと静めちまえ!」

声が聞こえると同時に白銀の鎖が、ユーノとアルフが抑えていた竜巻を強引に1つへと纏め上げる。
2人がかりで抑えていた竜巻を、1人が放ったとは思えない量のバインドで締め上げるその存在……

「ラル?」
「ラルさん!」

4人の遥か高い位置に、バリアジャケットを纏ったラインハルトがそこにはいた。



























アースラに喧嘩を売るような事を言った後、俺もすぐに結界の中へと転移してきたんだが……
俺の理想としては、到着時にはすでに解決してて欲しいもんだと思ってたんだけどな。

「なんでフェイトはボーっとして動かねぇんだ?」

ユーノとアルフは竜巻を抑えるのに手一杯みたいだし、なのはは魔法陣を展開して魔力を高めている最中。
その中で何もアクションを起こしていないフェイトだけが、不思議に見えた。

「とりあえず……あの2匹の手伝いはしてやらないとそろそろまずいか」
『Bind?』
「そうだな。頼む、ピアス・レクオス」
『All Right. Chain Bind Multiple Start』

目の前に展開した魔法陣から、太さこそユーノたちと変わらないが数を何倍にも増やして放つ。
わざわざ標的を複数にするより、1個にまとめてしまった方が撃ち抜きやすいだろうさ。
未だ行動に移ろうとしないフェイトを見た俺は、ため息を尽きながら普段出さないような大声をあげた。

「何ボケッとしてやがる。こんな物騒なもん、さっさと静めちまえ!」

俺の声を聞いた全員が、驚いたような表情を俺へと向ける。

『Sealing Form Set up』
「バルディッシュ……?」

俺の声を聞いたからかは分からないが、フェイトのデバイスが形態をシーリングモードへと変化させた。
バルディッシュの唐突な行動に、数瞬驚きの表情を見せたが何かを決意したかのように金色の魔法陣を展開させた。
それを見たなのはの表情に、笑顔がこぼれる。

「ディバイン……!!」
「サンダー……!!」
「遠慮無しにぶちかませ!!」

2人の魔力が最大に高まったのを感じた俺は、暴れようともがく竜巻をさらにきつく締め上げて言い放った。

「バスター!!!」
「レイジ!!」

そして、2人の遠慮無し全力全開の砲撃は荒れ狂うジュエルシードを竜巻もろとも吹き飛ばした。
……これ、封時結界の中じゃなかったらある意味爆撃とかより性質が悪いよなぁ?
純粋にそう思ってしまうくらい、2人の砲撃は凶悪だった。
なのはが新人魔導士だなんて、マジで嘘だよな……これ。





























アースラのブリッジでは、なのはたちの所にあったジュエルシードが全て封印されたのを観測していた。
だが、それよりもなのはとフェイトが放った魔法。
その普通ならありえない威力に、アースラクルーは呆然としていた。

「な……なんてでたらめな」
「でも、すごいわ……」

呆然としていたのがいけなかったのだろうか。
突如、アースラ艦内に危険を知らせる警告音が鳴り響いた。

「別次元から本艦および戦闘区域に魔力攻撃来ます! あと6秒!!」

エイミィがレーダーの示す結果を読み上げた瞬間、アースラを紫色の雷撃が襲った。
時を同じくして、なのはたちがいる海鳴の海上。

「……友達に、なりたいんだ」

自分の気持ちがやっとわかった、そう感じたなのはは胸に手をあてフェイトを見ながら言った。
思いがけない台詞に、フェイトは目を見開く。
だがその瞬間、なのはたちにアースラを襲ったものと同じ雷撃が襲い掛かる。

「か……母さん?」

その雷撃の正体を知っているからか、フェイトは空を見上げながら呟いた。
しかし、無情にも雷撃は無差別にその場にいるもの全てに降りかかり、フェイトはそれの直撃を受けた。

「フェイトちゃん!?」

フェイトの悲鳴、それを聞いたなのはは助け出そうとしたが雷撃に弾かれてしまう。
力なく海へと落ちていくフェイト。
狼形態から人間へと姿を変えたアルフが、海面に叩きつけられる直前にフェイトを受け止める。
そして、そのまま宙に浮かぶ6つのジュエルシードへ向かって突き進み、手を伸ばした。

「邪魔……するなぁっ!!」

だが、その手は黒い杖のデバイス『S2U』を持つクロノによって阻まれてしまう。
邪魔をして来たクロノを敵とみなしたアルフが、牙をむきながらデバイスごとクロノを魔力で吹き飛ばす。
邪魔者を排除したアルフはジュエルシードを回収しようとしたが……

「み、3つしかない!?」

6個あるはずのジュエルシードは、その場には3つしか浮いていなかった。
消えた3つのジュエルシードはクロノの手の中にあり、すぐさまデバイスの中へと収納されてしまう。

「うぅっ……ああああ!!!」

回収できない事への悔しさか、邪魔をしたクロノへと対する怒りか。
アルフは右手に魔力を溜めると、海へと向かって叩きつける。
大きな水柱が上がり、それが治まった時、フェイトたちの姿はどこにも見えなくなっていた。

「機能回復まであと25秒! 追いきれません!!」

魔力攻撃を受けたアースラでは、小さくない被害が発生していた。
攻撃を行った相手、それをすぐさま追跡できるほど生きている機能が多くなかったのである。

「機能回復まで対魔力防御。次弾に備えて」
「はい!」

オペレーターの報告を聞き、完全な追跡が不可能だと悟ったリンディはそう命令を下した。

「それから、なのはさんとユーノ君、ラインハルト君とクロノを回収します」

未だ雨が降り注ぐ海鳴の海上。
なのはやユーノ、クロノたちはその場で目を見張っていた。
しかしただ1人、ラルだけが虚空を見上げ、その先へいるであろう人物へと厳しい視線を向けていた。

「……ピアス・レクオス。さっきの攻撃で掴んだな?」
『Of Course』
「……見つけたぞ、プレシア・テスタロッサ」

空を見上げるラルの表情。
そこには、寒気を覚えるような冷笑が浮かんでいた。




















      〜 あとがき 〜


普通になのはが新人魔導士だなんて……嘘だ!
そう思っても仕方が無いくらい魔法使ってるような気がします。
新人があんな砲撃使えるかぃ!

まぁまぁ、ついにラルがプレシアを補足しました。
っていうかアースラが出来ないのに個人でそれをやっちゃうラルが化け物。
いや、むしろラルよりピアス・レクオスの方が……?
未だプレシアをどう扱おうか悩みつつ。



          それでは、このへんで。


                          From 時雨


初書き 2009/01/20
公 開 2009/03/20





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