なのはとフェイト、2人の魔導士の戦いはいつの間にか空中へと移動していた。
2人の放つ魔法が、朝焼けの空に異彩を放つ。

『Photon Lancer』
『Divine Shooter』

フェイトが生み出した金色の誘導弾。
そして、なのはが生み出した桜色の誘導弾。
2人の視線が重なった時、それが発射の合図となった。















二次創作 魔法少女リリカルなのは
『激闘の果てに』






















「ファイア!」
「シュート!」

放たれた誘導弾は相殺することはなく、お互いを避けて標的へと迫る。
襲い来る金色の誘導弾を、なのはは回避しながらフェイトへと近づいていく。
一方のフェイトは、迫り来る桜色の誘導弾に追尾されながらも、着弾の瞬間にシールドで防ぐ。

「っ!」

シールドを解除したフェイトは、その先にいたなのはに目を見開いた。
すでになのはは次弾を用意していたのだ。

「シュート!!」

次の魔法が発動するまでのタイミングが早い。
そうフェイトは考えながらも、再び襲いかかる魔力弾へと対峙した。

『Scythe Form』

鎌状へと変化させたバルディッシュで、なのはの誘導弾を叩き切って行く。
進路上の邪魔な誘導弾を排除したフェイトは、バルディッシュを構えなのはへと振りかぶる。

『Round Shield』

その攻撃も、繰り出した防御魔法が防いだ。
2人の魔法が拮抗し、激しい光が生まれる。
先に動いたのは、なのはの方だった。

「!?」

意識を防御から少しだけ放し、生きていた誘導弾を操作し背後からフェイトへと向かわせる。
そして、それに気付いたフェイトがシールドを使い誘導弾を受けきった時、その視線を外した僅か一瞬でなのはの姿を見失った。

「な……どこに?」
『Flash Move』

慌てて周囲を見回していたフェイトの耳に、上空からそんな音が聞こえた。
上を向いたフェイトが見たものは、上空から高速機動で突撃してくるなのはだった。

「てえぇぇぇ!!!」

ぶつかり合う2つのデバイス。
その衝突は、激しい閃光と爆音を響かせた。

「はぁ……はぁ」

フェイトは、なのはの成長に焦りを見せていた。
最初は魔力がでかいだけの素人。
だが、今では自分と拮抗できるほど強く、速い。
だからこそ、彼女は迷いを捨てた。

『Phalanx Shift』

フェイトは、祈るようにデバイスを構えた。
それと同時に現れる、雷撃を纏った魔力球。

「あっ!」

それを見たなのはは身構えようとしたが、唐突に身体を金色のバインドで固定されてしまった。
十字架に貼り付けにされた聖人の如く、無防備な身体をフェイトへと晒す。

【まずい! フェイトは本気だ!】

フェイトが放とうとしている魔法、その威力を知るアルフが危機を告げる。

【なのは、すぐにサポートを!!】

アルフの念話を聞いたユーノが、なのはの元へと行こうとした。
だが、それを止める存在が、彼らの傍にはいた。

「ダメだ、お前らは動くな」

動き出そうとしたユーノを手で制し、ラルはなのはたちから目を離さずに言った。
てっきり、ラルは同じ考えだと思っていたユーノは驚いた表情をラルへと向ける。

「ユーノ、アルフ……なのはに任せると言ったんだ。最後までなのはを信じてやれ」
【ありがとう、ラルさん……これは、全力全開の一騎打ちだから、私とフェイトちゃんの勝負だから!】

フェイトの呪文と共に、込められた魔力もその力を強く表し始める。
だが、なのははその光景から目を逸らす事なく力強い意思を伝えた。

「フォトンランサー・ファランクスシフト」

呪文が完成したのか、フェイトが手を高く上げるとその暴風が完全に姿を成した。

「打ち砕け、ファイア!!」

高く上げた腕を勢いよく振り下げ、金色の魔力弾が連続で発射された。
迫り来る魔力弾を睨みながらも、なのははそれを真っ向からぶつかり合った。
直撃するその瞬間、自分の身体が白銀の光に包まれるのを感じながら。

「なのはー!」

余剰魔力が放つ爆煙が、なのはの姿を隠していく。

「フェイト!?」

維持するのに相当な魔力を消費するのだろう。
放ち終わったフェイトは、かなり消耗が激しそうに見える。

「いったー……撃ち終わると、バインドってのも解けちゃうんだね」

爆煙が風で流された時、そこには直撃を受けたにも関わらず平気そうななのはがいた。
僅かに周囲が帯電しているように見えるのは、それだけフェイトの魔力弾が強力であった証拠だろ。

「今度はこっちの番だよ!」
『Divine……』

構えたレイジング・ハートに、桜色の魔力が収束していく。

『Buster』

収束した魔力は1つの砲撃となって、フェイトへ向かって放たれた。

「くっ!」

桜色の砲撃を、フェイトは僅かの力で溜めておいた魔力弾で相殺しようとした。
だが、その砲撃は魔力弾を障害ともせず迫った。

(直撃……でも、耐え切る。あの子だって耐えたんだから!)

魔力弾が障害にもならなかった事を悟ったフェイトは、シールドを生み出して砲撃を受ける。
ぶつかり合う衝撃に負けじと魔力を注ぎ込むが、余波からか手袋やバリアジャケットが千切れていく。
限界に近かったとは言え、フェイトはそれを耐え切って見せた。

「!?」

肩で息をしながらも、フェイトがなのはへと視線を向けたが、その光景には息を飲まざるを得なかった。

「受けてみて、ディバインバスターのバリエーション!!」
『Starlight Breaker』

レイジング・ハートを高々と掲げ、先程よりも巨大な魔法陣を展開しているなのは。
さらに周囲へと散ったはずの魔力が、その魔法陣へと吸い込まれていく。
その直撃は耐え切れない。
そう悟ったフェイトが行動を開始しようとしたが……

「っ! バインド!?」

いつの間に放ったのか、バインドがフェイトの四肢を拘束していた。
驚きの声を上げるフェイトを見据えながら、なのははその嵐を解き放つ。

「これが私の全力全開! スターライト……ブレイカー!!」

まさに、嵐と呼ぶのが相応しいだろう。
恐るべき魔力の奔流が、小さなフェイトの身体を飲み込んだ。
フェイトは、その魔力に飲み込まれる寸前、白銀の魔力が身体を包むのを見た気がした。

「な……なんつーバカ魔力だ」
「うわー……フェイトちゃん、生きてるかな……」

中継を見ていたアースラでは、クロノとエイミィがそう零したのも仕方が無いだろう。
それだけ、なのはが放った砲撃はその威力が凄まじいのだ。

「はぁ……はぁ……」

さすがにそれだけの魔力を放出すると、なのはに襲い掛かる疲労感も比ではなかった。
だがそれも、気を失って海へと落下するフェイトを目にしてすぐさまそれを追い飛び込んだ。
沈んでいくフェイトとバルディッシュを抱き上げると、そのまま空中へと飛び出した。

「っ……」
「気付いた、フェイトちゃん?」

身体を襲う痛みによって目を覚ましたフェイト。
かけられた優しい声へと視線を向けると、心配そうな顔をしたなのはがいた。

「ごめんね……大丈夫?」

頷く事でなのはに大丈夫だと伝えると、フェイトは自分で空を飛ぶ。

「私の勝ち……だよね?」
「そう……みたいだね」
『Put Out』

フェイトの答えを聞いたバルディッシュが、己に内包していたジュエルシードを排出する。

「よし、なのは。ジュエルシードを確保して、それから彼女を……」
「いや、来た!!」

アースラのいるクロノの指示がなのはに伝えられた時、絶えず状況を観測していたエイミィから厳しい声が出た。
なのはたちのいる場所からさらに高い所……
そこには、先ほどまでの天気は欠片も残っておらず、紫色の雷が黒き雲と共に出現していた。
そして、その雷がフェイトへ向かって無情にも降り注いできた。

「フェイトちゃん!」

だが、その雷がフェイトの身体を焼く事は無かった。
いつの間にここまで飛んで来ていたのだろうか。
ラルが、上空へと魔法陣を展開して雷撃を防いでいた。
























「やれやれ……こうも予想通りに動きを見せるとはな……」

ファランクスシフトにスターライト・ブレイカーって言ったか。
2人の攻撃は非殺傷設定であったとしても、喰らえばただじゃすまないだろう。
全力全開の勝負に手を出すのは気が引けたが、後々の事を考えると傷は少ない方がいい。
そう考えて、気付かれないように危機が迫った時に発動するシールドを2人にはかけておいた。

「ジュエルシードまで防ぐには、ちと間に入るのが遅れたか……」

紫色の雷に引かれていくように、ジュエルシードは空へと姿を消した。
まぁ、魔力が底を尽きかけている2人が攻撃を喰らうよりマシだとしておこう。
それに、あの程度のロストロギアは放置しておいてもたいした問題じゃない。

「2人とも、無事か?」

2人は、何故か呆然としながらも、俺の問いかけに頷いて答えてくれた。
……しかし、なんで2人とも呆けてるんだ?

【クロノ執務官?】
【あぁ、もちろん場所は掴んだ。艦長の指示の元武装局員もすでに送り込んである】
【それは良かった。行動を起こしていなければまた罵倒の1つでもプレゼントしようかと思ったんだが】

すでに行動を起こしたという報告を聞いて、俺も行こうかと考えた。

【一度、全員を連れてアースラへと戻る】
【そうしてくれ】

だが、目の前を力なくフラフラと飛んでいる2人を見て、まず優先すべきはこっちだと思考を切り替える。

「なのは、フェイト。大丈夫か?」
「私は大丈夫。でも……フェイトちゃんが」
「私も、大丈夫……」

なのはは、ただ純粋に魔力を使った疲労感。
フェイトは、俺のシールドがあったとは言え、あれだけの魔力の直撃は堪えたんだろう。
大丈夫と言っている割には、なのはより飛行が安定していない。

【ユーノ、アルフ、こっちまで来てくれ。転移魔法で一度アースラに戻る】
【わかった】
【フェイト、大丈夫かい?】

フェイトの両脇を、俺となのはで支えてやりながらユーノたちにこっちへ来るように呼びかける。
そして、全員が揃ったのを確認した俺は、転移魔法を展開してアースラへと飛んだ。




















      〜 あとがき 〜


手を出すなとか言いながら、ちゃっかり前もって小細工を仕掛けてる男、それがラル!
なんていうか、ラルの魔法のレパートリーは俺の妄想と直結しているような気がします。
要するに、ラルの魔法は無限にあるぞよ、みたいな?

と、まぁ未だマトモに攻撃魔法使ってないんですけどネー
まぁ、のらりくらりで進んで攻撃するタイプにはしてませんけど。
きっといつか使う時が来るさ!



          それでは、このへんで。


                          From 時雨


初書き 2009/01/20
公 開 2009/09/11





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