唐突ながら俺は今、未開無人惑星にてクロノとデバイスを構えて向き合っている。
なんかしらんがあっちはあっちでもの凄いやる気を出しているように見えるし……

【これより、クロノ対ラインハルト君の模擬戦を行います】
「行くぞ、ラル!」

止めたいといってももう止まらないんだろうなぁ……
はぁ、いったいなんでこんな事に……?















二次創作 魔法少女リリカルなのは
『なんでこんな事に?』






















事の始まりはなんだったか……あぁ、そうだ。
アースラがミッド本局へ戻ってからそんなに経ってない時だ。
俺が特にやる事もなく家でゆったりとしたコーヒータイムを楽しんでいる時だ。

『Master. Magic reaction』
「……は?」

俺の家の居間に魔法陣が展開されたかと思うと、そこにはクロノが立っていた。
っていうか、わざわざ人の家の中に飛んでくるなよな。

「久しぶりだな、ラル」
「そうは言っても、数日くらいしか経ってないんだが、こっちでは」
「さて、さっそくだが始めさせてもらおう」

俺の台詞を聞いているんだか聞いていないんだか。
クロノはデバイスを俺が弄っていたPCへと接続すると、いろいろなデータを表示してきた。
あー……なんかどっかで見たことある名称があったような。

「前に言っただろう、君に答えを叩きつけて見せるとね」
「なんだ……本気で持ってきたのか、お前」

不敵な笑みを見せるクロノに向けて、俺は呆れたような顔を隠さずに出した。
いやぁ、恐らく大半が抹消されているであろうデータを、良くぞまぁ引っ張ってきたもんだ。

「さすがに、これを見たときは僕も目を疑ったが……君に助けられたという武装局員の話も聞けたのでね」

表示されているデータを1つだけ選択し、それを拡大表示にしてディスプレイ全体に映す。
管理局管轄ロストロギア、通称『コフィン』。
クラスAAのロストロギアにして、広範囲に影響を及ぼす程の巨大な魔力を放つ代物。
暴走した場合、キャパシティ以上の過剰魔力によって周囲へと致命的な悪影響を及ぼす。

「懐かしいねぇ……これを見たの、いつだっけか?」
『At Seven Years Old』
「あー、4年くらい前か」

その時は、確か俺は医療系魔導士の依頼として『コフィン』が暴走した近くの集落にいた。
そこで治療を行っている時に、妙に馬鹿でかくて禍々しい魔力反応を相棒が拾ったんだよな。

「AAクラスのロストロギアの暴走で、この時送られた武装局員の数は3桁」
「そんなにいたか……もっと少なく感じたんだけどな」
「君が来た時、大半の管理局員が負傷して艦へと戻っていたらしいからね」

なるほど、通りであの魔力量を抑えに走る割には人数が少なかった訳だ。
元からそんくらいの人数で制圧しに行ってたのかと思ってたぞ。

「壊滅は必至、君が救ったのは殿を抑えるための部隊だったんだ」

確かに、結界魔法の威力が随分と高いように見えたが、ロストロギアから溢れて来る魔力を抑える為に残った連中って事か。
何人か磨けば光りそうな人材がいたような……

「そこに現れたのがラル、君だな」
「あぁ、丁度依頼が終わった途端に、そんな悪影響及ぼすのが近くにあるって分かったからな」

治療術式を受けた後で多少体力の落ちている人にとって、あのまま放置しておくのは最悪の事態にまで陥る可能性があった。
だからこそ、原因となっているド阿呆な魔力の発生源を叩こうとしたんだったな。

「そのロストロギアを鎮圧する時に観測されていた君の魔力量、その総量は2000万オーバー、計測器が振り切れてこれ以上は測れなかったらしいが……」

一体あの状況でいつ計測してたんだ、こいつら?
そう疑問に思いつつも、俺は当時の事が少しずつ記憶から浮かび上がってくるのを感じた。
あぁ、そうだな、確か……

「あの時は……確か3500万くらいで放ってたかな?」
「……なのはもそうだが、君も大概だな。オーバーSSSクラスじゃないのか?」

管理局の魔力判断なんて興味がないんだが、どうやらSSSクラスというのはほとんどいない人材らしい。
らしいと言われても、ここに現にいるんだからどうしようもないんだけどな。

「まぁそれはいい、そこで前に君が言った事に対する答えだが……」

クロノは、まだ言いたい事はありそうな顔をしていたが、一旦纏めると一息入れた。
そして、いつの間にか座っていた俺の対面のソファーで腕を組むと、はっきりと言って来た。

「君は、自分の中の魔力量をコントロール出来ているんだな……」

そして、クロノのデバイスコアが明滅したかと思えば、ディスプレイ上に新しい画面が表示された。
さすがに、それを出された時は俺は少しだけ目を見開いてしまった。

「ラインハルト・ヒューゲル、ミッドチルダクラナガン出身のフリー魔導士……」

そこには、どっから引っ張り出してきたのか、俺のプロフィールとアノ事について記載されていた。

「医療系魔導士の誰もが憧れる存在、医療系魔法を極めた一族と呼ばれるヒューゲル家の現党首……その技術の高さから医神と呼ばれる存在、それが君だったんだな」

まさか、ここまでとことん調べてくるとは思わなかった。
少しばかりニヤけそうになる顔を精神力で抑えながら、俺は表面上は冷静を取り繕った。

「……ご名答、だ。その通り、俺は医神と呼ばれたヒューゲル家を継いだ人間だ」

よく出来ましたと、教師が生徒に向かって言うように俺は不遜な笑顔を向けてやった。
プレシアと対面した時に漏らした『今の医神』という言葉。
恐らくだが、俺の先代あたりで、プレシアはヒューゲル家にコンタクトを取ろうとしたんだろう。

「プレシア・テスタロッサが言った台詞のお陰で、調べる手間が少し減ったからな」

時期的にもヒュードラ事件と符号が合う。
娘を失った人間が、医神と呼ばれる人間に頼もうとするのは想像に難くない。

「なるほど、医神なんてキーワードで出るようなのは、ミッドじゃ他にはいねぇわな」

だが、俺がこう言うのもなんだが、先代はもの凄く寡黙で、ついでに言うと偏屈だった。
言葉少なく否定の返事で、さらにドギツイのしか返ってこなかったんじゃないかと思う。
それで、壊れかけた精神に拍車が掛かったって感じだろう。
先代の仕出かした不始末を処理するのは、後継である俺の仕事。
だからこそ、俺はプレシアを始末せず、生かして管理局へと引き渡した訳なんだが。

「これが、僕が持ってきた答えだ」
「十二分だよ、まさかヒューゲル家の方まで調べてくるとは思わなかった」

魔力量がコントロールできるかどうかと、『コフィン』についてはあたりをつけてたからなんとも思わなかった。
だからこそ、ヒューゲル家のデータが出てきたのには驚いた。

「それで……済まないがラル、頼みがあるんだ」
「ん……?」

一拍の間をおいて、クロノは何か言いずらそうにしながらも提案を出してきた。
そして、話は冒頭に戻る。






















「模擬戦をしてみて欲しい……ね」

最初は、クロノ単体だけだと思っていたからこそ了承の返事を返したんだが……
俺の返事を聞いた瞬間に現れたモニターに、俺は呆れた視線を投げるしかなかった。

【医神と手合わせしてもらえるなんて、クロノは幸運よねぇ……】

モニターの中にいたのは、ご存知超甘党リンディ艦長だった。
いつから聞いていたのかはしらないが、あれよあれよという間に無人惑星への手配を終えていた。
……つーか、こいつら最初から模擬戦やらせる気だったんか?

【ラルさん、頑張って!】
【まぁ、ラルならないだろうけど……怪我しないようにね】

そして何故か、アースラのブリッジではなのはとユーノがリンディ艦長と共にモニターを見ていた。
なのは、お前は学校はいいのか。

【今日は日曜なの。ラルさん家にばっかり篭ってるから曜日感覚がなくなってるの】

……さよで。
ユーノ、お前はまだスクライア部族の所に戻ってなかったのか。

【なのはに頼まれて、結界とか補助魔法を教えてるんだよ】

いつの間にやら、この2人。
すっかり教師と生徒というか、そんな感じで魔法の特訓をするような仲になっているらしい。
まぁ……砲撃一辺倒だといろいろと面倒な事とか起こるからなぁ。
近づかれると弱いとか、結界がないと周囲に影響が出るとか……

「っていうか、人の考えを読むんじゃない」
「それだけ顔に出していれば、誰だってわかるだろう?」
「そんなに顔に出てたか?」
「あぁ、しっかりとな」

もういいや、これ以上考えててもしょうがないし……
この鬱憤は後でクロノやユーノをからかって遊んで解消しよう。
うん、それが素晴しくいい考えだ。

【さて、準備が出来たら始めさせてもらうんだけど……2人とも、準備はいい?】
「僕はいつでも」

意気揚々と、始まるのを待っているクロノ。
それにため息をつきながら、俺はリンディ艦長の確認の言葉へと返事を返す。

「まぁ、俺もなんとでもなるでしょ。 ピアス・レクオス、セットアップ」
『All Right. Stand By Ready Set up』

海鳴というか、管理外世界で一般的な服装……ジーパンとワイシャツという格好がバリアジャケットへと換装される。
外套を風にはためかせながら、俺は相棒を構える。

【それでは……始め!!】
「スティンガー・スナイプ!」

まずは牽制のつもりなのか、クロノが先手を取ってきた。
時の庭園で見せた誘導弾か。
放たれた数発の誘導弾を、俺は弾道を見切りまずは体移動だけでかわす。

「スナイプ・ショット!!」

だが、それを予想していたのか、誘導弾が左右、背後、上空から分かれて襲い掛かってくる。
……微妙に着弾時間もズラしてあるな。
魔法で防ぐでも良かったが、ここまであからさまに前が空いているんだ。
クロノがどういう手段で来るのか、その手に乗ってやろうじゃないか。

「く……解っていて乗ってくるか……S2U!!」
『Blaze Canon』

俺が前に飛び出したと同時に、今まで立っていた場所に殺到する誘導弾。
そして、前方からは青い魔力砲が迫ってきていた。

「定石としてはまぁまぁ、だけど放つタイミングがまだまだ甘い」

背後から来る爆風を外套で抑えつつ、俺は前方へ向かってシールドを張る。
こういうのは、こない可能性があるとしても着弾とほぼ同時に到着するように放つもんだ。
ズラすのは、フェイトみたいな高速機動がメインの魔導士や、俺みたいなのには効果がない。

『Round Shield』

白銀の魔法陣と、青い魔力砲が凄まじい音と光をたてて相殺した。
さて、クロノの魔力反応は……上か。

「はああ!!」
『Break Impales』

爆風の防御と、前方のシールドを制御していた為に、今の俺の手に余裕はない。
そこを狙って、クロノから2回目の追撃が来た。
姿をくらましたと同時に上空へ移動、落下速度と魔力砲撃の速度を合わせたか。

「さすがに、それを抑えるのはめんどくさそうだ」
『Sonic Action』

砲撃が届く前に、俺は高速機動でその場から離れる。
そして、十分な距離を離した後、ソニック・アクションを解除した。

「武装局員の大半は、これで行動不能になるんだがな……」
「ぬかせ、俺がその程度の実力な訳ねーだろうが」

飛んでくる自慢とも取れる軽口に乗って、俺も軽口を返す。
でもなぁ、その場で気を抜くと、俺の場合は面倒な事になるぞ?

「あぁ、忠告しよう。足元はしっかり見てから軽口は叩きな」
『Arrest Type Contact』
「なっ!」

クロノの足元に唐突に魔法陣が発生すると、白銀の鎖が伸びてクロノを捕獲しようとする。
だが、さすがは執務官と言ったところか。
驚くと同時に、魔法陣を確認した瞬間高速機動で射程外に逃げられた。
あー、こんな事なら教えないで速攻で終了させりゃ良かった。

「君も、大概口が軽いようだな」
「あぁ、今のはちょっと後悔した。折角終わらせるチャンスだったのになぁ」

終わらせるという言葉を聞いたクロノが、苦笑していた。
しかし、さっきまでとは違い、今度は完全に周囲にも気を配っている。
同じ手は通用しないか。

「そう言うな、僕としてもここまで楽しめる模擬戦はそうはないんだ。十分楽しませてもらう!」
「それ、聞き様によってはバトルジャンキーに聞こえるから注意しとけよ?」

っていうか、普通にバトルジャンキーに聞こえる。
そう頭の中で考えながら、俺はどうやってこの模擬戦を終わらそうか考えていた。
……やっぱり、ギッチギチにバインドで固めてやろうか。

「さて、それじゃあ続きを始めさせてもらう!」
「ふん、バインドで簀巻きにしてアースラのブリッジに吊るしてやる」

……結論としては、俺の言ったとおり。
クロノはアースラブリッジで蓑虫状態を晒したとだけ言っておこう。
俺に勝とうなんて、まだまだ早すぎるんだよ。




















      〜 あとがき 〜


戦い? そんなもん大半省略ですだ。
それより問題は次の話をどうしたもんかなぁと……
A'sに入る前にやっておきたいことがあるっちゃあるんだが……

さて、その方面の知識はそこまでいえるほど持ってないんだよなぁ……
はて……どーしたもんか。
まぁ俺のやりたいようにやればいいかー



          それでは、このへんで。


                          From 時雨


初書き 2009/01/29
公 開 2009/09/11





[ B A C K ]